Cheese112〜抑えられない衝動〜
野高先輩の意外な過去を知ってから数日が経過した。いつもと変わりない、おだやかな日常が戻った。
華「ふんふ〜ん…♪」
龍「ご機嫌じゃねーか、立川。鼻歌なんか歌って」
華「今の聞こえてた!?すごく小さな声で歌ったつもりだったのに…」
龍「そうかぁ?モロ聞こえだったぞ?」
華「えぇ!?恥ずかしい…」
雅「コラ!鈴木!!かわいい華ちゃんをいじめないでちょうだいよ!教育委員会に訴えるわよ!?」
(華に飛びつく雅)
華「ぎゃあっ!?」
龍「何が教育委員会だ?俺はお前を訴えてぇよ」
雅「ふーんっだ!安心して?華ちゃんは私が守るから♪」
華「ぐ…ぐるじぃ……」
圭「こらぁーーー!!!たっちゃんから離れろーーー!!」
華「づっ、づづみのはらぐん!?」
雅「やぁよ。乙女のじゃれ合いを邪魔しないでちょうだい!」
圭「なぁにが乙女だよ!いいから離れろ〜!?」
(雅の腕を引っ張る圭)
華(さらに苦しいっ!?)
淳「何ムキになってんだよ?圭」
圭「何のんびりしてんだよ?淳ちゃん!!たっちゃんが佐藤さんに捕られてもいいワケ!?」
淳「いいもなにも…佐藤さんは華ちゃんの友達だろ?」
圭「友達以上恋人にしたい!…とかだったらどうすんだよ!?」
淳「……は?」
龍「堤之原、お前…知ってんのか?コイツがお…」
華「ダメーーッッ!!」
龍「!」
淳「華ちゃん…?」
華「え、えと……わたし、水やり当番に行ってきます!」
(教室を飛び出す華)
龍「なんでこんな奴かばうんだ?立川は」
雅(今のって…俺を守ってくれた…?そうだとしたら……)
龍「おい、何ぼけぇ〜っと突っ立ってんだよ?佐藤」
雅「優しすぎでしょ…」
龍「……」
淳(今日も華ちゃんとあんまり話せなかったな…)
圭「……佐藤さん、人を騙してることに罪悪感ないの?そんなことしてまで嘘つくワケって何?」
淳「さっきから何言ってんだよ?お前…」
圭「鈍すぎなんだよ!!淳ちゃんは!!そんな余裕かましてる間に、誰かにたっちゃん捕られるよ!?俺とかに――…!」
淳「――お前…」
圭「いや、嘘だけどね?本当です!そんな恐い顔すんなって!!」
龍「……意外とそうかもな」
(教室の窓から花壇を見下ろす龍)
淳「え!?あ゛?!あ゛ーーーーー!!!」
(花壇を見下ろした後、教室を飛び出す淳)
圭「え?なになに?ま、まさか、たっちゃんが絶賛浮気中現場!?」
(花壇を見る圭)
圭「うわっ!誰あの茶髪!?たっちゃんの愛人!?」
龍「俺の獲物…」
圭(――え゛?鈴木くんの愛人…?)
――その頃、花壇では…
優「ずいぶん花が大きくなったね。植えた時はまだ小さかったのに…」
華「はい!綺麗に咲きましたねぇ…」
優「…うん」
華「………」
優(立川さんの方が……綺麗だな…)
淳「華ちゃんッッ!!!」
華「うわわっ!?淳くん!?どうしたの?」
優「やぁ、池本く…」
淳「もう少し離れて下さい!」
優「……へ?」
淳「華ちゃんも無防備すぎるよ!水やり当番なら当番だって俺に言ってくれれば手伝ったのに…」
華「ご、ごめんね…。淳くんのギターの練習の邪魔しちゃいけないと思って…」
淳「ギターも大事だけど、俺は――…」
優「俺一人で水やりするから、立川さんは池本くんと帰ってもいいよ」
華「でも…」
淳「じゃあ、お言葉に甘えて。華ちゃん、行こう」
(華の手を引く淳)
華「待って…!淳く――…」
―――グイッ
(華の手首を握る優)
淳「先輩…?」
優「……ごめん。さっきの言葉、君に言ったわけじゃないから」
淳「――!」
―――ザッザッザッ
(柔道着を着た集団が前方から走ってくる)
優「――…」
(華の手を離す優)
玲「あれー?華じゃない!やっほ〜☆」
華「玲…?あ、そっか…部活中なんだよね」
玲「そう!道場が剣道部に占領されてるから、今日はランニング。もうバッテバテ」
淳「……」
玲「あら、池本くん?華の手をガッチリ掴んじゃってラブラブ強調ってわけ?顔に似合わずやるわねぇ〜」
淳「そんなつもりないから…」
(華の手を離す淳)
華「………」
玲「バカタレッッ!!華を哀しませんな!!今ここで背負い投げかますわよ!?」
淳「ひっ!?すいませんすいません!!」←玲が苦手な人
―――カコーーン
(玲の頭に空き缶が落下)
玲「あたっ!?」
龍「はははは!伊藤、お前、サイコー!」
(教室の窓から顔を覗かせる龍)
玲「龍!?あんたねぇ!あたしが石頭だったからよかったものの、華に当たったらどう責任取るつもりよ!?」
龍「俺が外すわけねーだろ?ばーか」
玲「……駆除ッッ!!」
(龍のいる教室にダッシュで向かう玲)
華「あ…」
淳「華ちゃん、俺も教室戻るよ。それから、明日は一緒に帰ろう」
華「うん」
優「………」
華「さぁ、先輩!水やり当番の任務を続行しましょう?わたし、ホース繋いできますから、ホース持って下さい!」
優「は、はい…」
―――タッタッタ
(蛇口まで走る華)
華「水出しますよーー!」
優「うん、いいよ」
―――ゴポゴポゴポッ
(奇怪な音を出す蛇口)
華「あれ…?先輩ーー!ちゃんと水流れてますかー?」
優(なんか嫌な予感…)
(華のもとに駆け寄る優)
華「おかしいな?詰まってるのかな…?」
(蛇口を覗き込む華)
優「あぶないッッ!!」
華「ふぇ?」
ブシューーーッッ
(ホースがすっぽ抜け、水しぶきが華と優にかかる)
華「ゲホッ…あはははは!」
優「笑ってる場合じゃ…」
華「前にもこんなことありませんでしたっけ?確かあの時は綺麗な虹が見えて…」
優「うん。そういえばそうだったね…」
華「うわぁ〜、ビショビショになっちゃいましたね…。どうしよう…」
優「―――…」
(突然、華を抱きしめる優)
華「先輩!?」
―――その時、初めて
―――人の彼女を奪いたいと思った。
〜抑えられない衝動〜
完。