Cheese111〜優の秘められた過去〜
興味本意で野高家に訪れたCheese同好会ご一同は、薄井の部屋荒らしから始まり、野高と乱闘騒ぎにまで発展していた。
そんな中、唯一のほほんとしている空間があった。
野高母「マドレーヌもあるから、遠慮しないで食べてね」
華「うわぁ〜!おいしいです〜♪」←もう食べてる
野高母「じゃあ、食べながら聞いて?優ってね……」
――――12年前……
優「ていやーー!!」
………バキッ
(パンチで板を割る優)
野高父「おぉ!すごいぞ〜!優!!」
優「次は板じゃないもの割りたい。僕、お父さんみたいに強くなりたいんだ!」
野高父「そうか…。お前ももう5歳だしな。じゃあ、父さんからのプレゼントだ」
優「ほわぁ!?それ、ボクシンググローブ!?」
野高父「そうだ。これで次から父さんと打ち合いできるぞ〜」
優「やったー!ありがとう!お父さん!!」
………数週間後、優少年は父からもらったグローブを使い熟し、練習用に使っていた枕を粉砕した。
野高母「ちょっと、お父さん!優が枕を破いて部屋中羽だらけ!もうあんな乱暴なことやめさせて!」
野高父「そうか…。もうそんなことが……!よし。合格だ」
野高母「ちょっと!何が合格なの?まだ子供なんだから、危ないことさせないでよ!?」
…………その頃、自室に篭っていた優は……
優「僕の枕……羽根が全部出てきちゃった……。ごめんね…。痛かったでしょう…?」
(ボロボロになった枕をさする優)
………コンコンッ
野高父「入るぞ?優」
優「なぁに?お父さん」
野高父「今から公園に行こう。父さんと打ち合いだ」
優「本当?…うん、行く!」
―――公園にて。
野高父「さぁ、優!グローブはめてパンチしてみろ!」
優「わかった」
………………ドガッ
(父の腹にパンチをくらわす優)
野高父「なに遠慮してんだよ?本気でやれ」
優「本気で……?」
野高父「ほら、構えろ。そして打て!」
優「ていやあぁぁッッ!!!」
…………ドガッッッ
野高父(う゛!?コイツ、マジでやりやがる…!?なら俺も本気で撃ち込む!!)
野高父「それで本気かぁぁ!?あの枕みてぇに殴ってみろよ!!」
優「!!」
優(本気で打ったら、父さんもあの枕みたいにボロボロになっちゃうんだ………!?)
(構えを止める優)
野高父「馬鹿野郎!!急にやめんなっ……!」
…………ドゴッッッ
(父の本気パンチが、優の顔面直撃)
優「〇‡♯◆§☆▽※」
(宙を舞い、転倒)
野高父「優ーーーー!!??」
――――――――
野高母「…それ以来、優はボクシングの練習をしなくなったわ。お父さんのパンチがトラウマになっちゃったのね」
華「そんなことがあったんですか…。」
野高母「フフッ…。思い出したら笑っちゃうわ。あの子の顔にまぁるくできた青アザ…。殴られた衝撃で鼻がへこんだのかしらね?家族の中で1番、鼻が低いから…」
華(それは違うような……?)
野高「さっきから二人で何話してるの?」
野高母「男の子には内緒で〜す」
華「絶対秘密です!!」
野高「……ふーん。あ、マドレーヌも〜らい!」
野高母「コラ!行儀悪いわよ?立ち食いなんかして!」
野高「はいはい。そこで倒れてる薄井にもあげてくるよ」
野高母「あら!倒したの?友達は大切にしなさいよ?」
薄井「……まったくその通りですよ。僕には本気で殴れるくせに、そこにいる花子にはデコピン一つ出来ないんですから」
野高「へっ…変なこというなよ!?」
薄井「本当のことじゃないか!そのマドレーヌ、僕のだろう!?よこしたまえ!!」
野高「やなこった!」
………パク
(薄井の分のマドレーヌを食べる野高)
薄井「メダカーー!?食べ物の恨みはおそろしいのだぁぁぁ(?)」
野高母「仲いいわねぇ…。いつもこんな感じなの?」
華「はい!いつもこんな感じです!」
野高母「………」
(華の顔をみつめる)
華「……なにか?」
野高母「ううん、何でもないの。あなたが優の好きな人なんだなぁって思って」
華「えぇ!?チガイマスヨッ!?」
野高母「だって、優がさっきからあなたのこと、優しい目で見てるから…。気がつかない?」
華「い、いえ…。全く…」
野高母「なら試しに名前を呼んであげてみて?きっと、りんごみたいになるから。あ、もちろん下の名前ね」
華「下の名前でですか!?よよよ呼んだことないですよ!?」
野高母「なんであなたが赤くなるの?可愛い子ね♪」
華(うぅ……、からかわれてる気が……)
野高母「呼んであげて?ね?」
華(さ、逆らえない…。う〜!こうなったら、勢いで……!)
華「ゆっ……う…せんぱ……い!?」
優「………へ?今、なんて……?」
華「……優先輩」
優「!?」かぁぁぁ
野高母「あはは!真っ赤になったなった!」
優「母さん!?立川さんに変なこと吹き込まないでよ!?」
薄井「おーーい、花子〜〜!僕のこともかけるんるんと呼んでくれ〜☆」
華「嫌です」
薄井「…………」
――こうして野高家での楽しい一日は終わった。
………その夜、野高家の食卓では……
野高母「ねぇ、聞いてよ。お父さん!優ったら、今日、家に好きな女の子連れて来たのよ〜?」
優「なっ…何言ってんだよ!?母さん!」
野高父「好きなおんなぁ!?馬鹿野郎!なんで彼女にしねぇんだよ!」
優「!!!」
…………グサッ
(優の心に何かが刺さる)
野高母「お父さん!!また、トラウマになっちゃうでしょ!?」
野高父「……え゛?」
優「……ごちそうさまでした……」
もうすでに手遅れだった……。
〜優の秘められた過去〜
完。