Cheese109〜協力するから〜
一大スクープを前に、俺の邪魔をする男が一人いる。
圭「何してんの…?お前」
火護「なんだ、堤之原か…。お前も今の話、聞こえただろ?佐藤雅が男…」
圭「だから何?お前が今やってることは、盗聴だろ?犯罪じゃんか!」
火護「犯罪とは侵害だな。新聞記事のネタに使わせてもらうだけだろ?それに、今まで女だと嘘をついて過ごしてきた奴の方が、罪は重いんじゃないか?」
圭「テープ貸して」
火護「お前…今の話、聞いてたのか!?」
圭「聞いたよ!でも明らかにお前も悪いだろ!?録音したテープを回収するのが正義のヒーローじゃん!?」
火護「話にならないな。お前にテープは渡さない。これが証拠になるんだ。邪魔をするな」
圭「いいから渡せ〜〜!!」
華「…二人共、こんなところで何してるの?」
火護「!?」
圭「たっちゃん!コイツからテープ奪うの手伝って!じゃなきゃ、佐藤さんの秘密がバレちゃうんだよ!」
華「え!?」
火護「佐藤雅は女装をした男…なんだろ?このテープが証拠の品だ。記事に書いて公表する。なんなら、放送で流してやってもいいんだぞ?」
雅「!?」
圭「なんか…マジ切れそう……」
……バチンッッ
(火護の頬をひっぱたく華)
圭「たっちゃん…」
華「そんなことしか新聞に書けないの?人の秘密を記事にするなんて、ひどい。それを平気でしようとするあなたは最低だよ…」
火護「……」
雅「火護、このことは誰にも言わないで欲しい。テープも捨ててくれ…。頼む」
火護「嫌だと言ったら?…諦めて俺に記事を書かせてくれるのか?」
雅「!」
華「いい加減にっ…」
圭「ふざけんなッッ!」
………バキッ
(火護を殴り飛ばす圭)
圭「新聞ってそんな記事ばっかじゃないじゃんか!?昇降口にある花壇に花がいっぱい咲いてることとか、部活で頑張ってる人とか、くだらないかもしれないけど、色々落っこちてるじゃん。記事に出来そうなことがいっぱい…」
火護「そんなこと書いても、見る奴なんかいないんだよ…」
華「そんなことない!見る人がいないって勝手に思い込んでるだけだよ。貼る場所を変えれば…」
火護「貼る場所?あそこにしか新聞は貼れない。生徒会から言われてるから…」
圭「生徒会なんて言えばなんとかしてくれるって!」
華「そうだよ!昇降口前とか、皆が必ず通る場所に貼れば、きっとなんとかなるよ!だから…雅ちゃんのことを記事にしないで下さい。お願いします」
(頭を下げる華)
火護「なんで…?なんでそこまでして庇うんだよ?佐藤雅が男だってバレても、あんたは何の被害も受けないじゃないか…」
華「雅ちゃんはわたしの大切な友達だからだよ。友達が傷つくようなことは絶対させない!!」
雅「華ちゃん…」
火護「友達…か…」
………シャッ
(録音したテープを引き伸ばす火護)
火護「これで文句ないだろ?こんなネタより、もっとマシな記事を書いてやる…」
華「ありがとう。笠護くん」
火護「火護ですけど…?」
華「わっ!?ごめんなさい!!」
圭「…そうだ、ネタ!ネタならあるよ!」
火護「え?」
圭「じ・つ・は!最近、バンド組んだんだ!で、それを記事にしてくれたら、もしかして俺、モテモテになっちゃうかもじゃん!?」
雅「何一人で興奮してんだか…」
圭「あ、でも見る人が少ないか」
火護「……」
華「そんなことない!じゅ…池本くんはちゃんと読んでるよ!口では面白くないって言ってたけど、それはちゃんと読んでるからだよね」
圭「なんで『池本くん』なの?他人行儀だな〜。たっちゃんは!付き合ってんだから、恥ずかしがんないで、もっとオープンにさぁ…」
華「ばっ!!」
圭「へ?」
火護「へぇ。池本くんと立川さんって、付き合ってたんだ?それは初耳。早速記事にでも書かせてもらおうかな」
華「堤之原くんのバカーーーッッ!!」
圭「たっちゃんだって馬鹿じゃんか!?俺達、補習した仲だろーー!?」
華(この人から…薄井先輩と同じ匂いを感じるーー!!??)
雅「火護。そんなこと記事に書いたら……コロスぜ?」
火護「……」ぞぞぞっ
(震える火護)
華「とっ、とにかく、生徒会長さんに新聞の貼り出し場所を変えてもらうよう、頼みに行こうよ!」
圭「今から行くべ!」
雅(…はぁ。お人よしな奴ら。ま、そこが好きなんだけどよ…)
火護「……」
――生徒会室前にて
華「わたし、生徒会長さんとは顔見知りだから、まかせといてね!」
圭「おう!まかせた!」
華「いざッッ!!」
………ガラガラ
(生徒会室の扉を開ける華)
浅井「あら?何かご用ですか?」
華「はいっ!単刀直入に言います!新聞部で制作している、新聞の貼り場所をもっと目立つところに変えてもらいたいのです!」
浅井「残念だけど、今の場所しかスペース取れないのよ。あの新聞、大きいでしょ?他の掲示物の邪魔になると困るし、無理ね」
華「はひ…」
圭(さっきまでのまかせとけ〜!な勢いは何処へ…?)
??「掲示物なんて引っぺがせばいいじゃないか。浅井くん?」
華(え…?)
浅井「何であんたまでここに来るのよ?薄井翔。話がややこしくなるから、帰りなさい」
薄井「よし。ジャンケンだ♪僕が勝ったら、新聞でも何でも貼り替えを許可したまえ。これならややこしくないだろう?」
浅井「……わかった。なら私はチョキを出す」
薄井「予告宣言…ね」
浅井「ジャンケン…」
華(!)
浅井「ポン!」
(薄井がグーを出して勝つ)
浅井「なッ!?」
薄井「浅井くんは嘘をつけない人だね。約束は守るんだぞ?」
浅井「わかりましたよ!新聞の貼り替えを許可します…」
―――数日後、薄井先輩の活躍あって、新聞は昇降口に貼られることになった。その内容とは……
『突如として現れた謎の三人組高校生バンド誕生!!』
ババ〜〜ンとした見出しが話題を呼び、たちまち新聞を見る人が増えていった。
華「詳細は次号の学校新聞にて…か!楽しみだね!淳くん♪」
淳「……ない」
華「へ?」
淳「こんなの知らない……。誰が取材OKしたんだ……?」
圭(………(゜.゜;)
淳「お前かぁぁ!?堤之原ぁぁぁーーー!!」
圭「すいましぇーーーんッッ!!!」
華
火護(ありがとう。堤之原…)
〜協力するから〜 完。