Cheese107〜昼下がりのかくれんぼ〜
おだやかな午後、昼下がり。
突如、事件は起こった。
華(いい天気だなぁ。こんな日は屋上にでも行って…)
………ガラガラッッ
(教室の扉が突然開く)
野高「立川さん!!」
華「の、野高先輩!?」
クラス女子「キャーーーー!!!」
野高「薄井、ここに来てない!?」
華「いえ、来てません!」
野高「あのバカ……」
華「どうかしたんですか?先輩」
野高「この昼休みを使って、薄井がかくれんぼしようとか何とか言い出して、今探してるんだ。しかも隠れてるのは薄井だけ」
華「無茶苦茶ですね…」
坪井「おーーい!野高〜!昇降口付近で薄井が踊ってたらしいぞー!」
野高「いらないよ!そんな情報!?…あ、ごめん、立川さん。それじゃ!」
(全速力で去っていく野高)
華(大変そうだなぁ…)
坪井「……ぷっ」
華(えぇ!?ななな何?今この人、わたしの顔を見て笑った!?)
坪井「あ、ごめんごめん!君、いつかのドッチボールで薄井にボール直撃させた人だよね?」
華「あ、その説はどうも」
坪井「やっべぇ〜!思いだし笑いしちゃった。あ、そーだ!薄井探さねーと…」
華「あ、あの!なぜそんなに薄井先輩を必死に探してるんですか?」
坪井「だってアイツ、おもしれ〜から!」
華「面白い…?」
坪井「一緒にいて飽きないし、よくパシリに使われるけど、お礼にでっけ〜アメ玉くれたりするし。まぁ、そんなことはどーでもいっか!」
華(薄井先輩って、周りの人達に好かれてるんだなー…)
樽本「…あ、坪井くん!薄井くんが職員室で高橋先生のお弁当を食べてるっていう情報が入ったよ」
坪井「えぇ?昇降口で踊ってるんじゃ??」
野高「坪井!!たった今、視聴覚室で薄井がテレビ見てるって本当か!?」
坪井「それ、誰から聞いた情報!?」
華(薄井先輩がいろんなところに出没している…)
―――その後、なぜかわたしも先輩達と一緒に、薄井先輩を探すはめになってしまった…。
華(うぅ〜〜!!先輩達と一緒にいると、なんだか緊張する…)
野高「とりあえず弁当の件が1番有力な情報そうだから、高橋先生に聞いてみよう」
坪井「お!それ賛成〜!」
樽本「……」
(華の顔を覗き込む樽本)
華(わわっ!?キレイな先輩だなぁ〜!!)
樽本「せっかくの昼休みなのに、付き合わせてごめんね。私、樽本っていいます」
華「あっ!えっと…!わたしは、立川華どすっ(?)」
坪井「緊張しすぎ〜!俺、薄井と同じクラスの坪井ね」
野高「略してツボーキサイトだろ?」
坪井「うわ〜…それ、あんまり気に入ってないんだよね」
樽本「坪井くんはまだいい方だと思うよ?私なんて、タルタルソースだし…」
野高「俺なんかメダカだよ…」
華「わたしなんて花子ですよっ!?」
全員「………」
坪井「薄井って、あだ名つけるセンスねぇ〜!」
樽本「…だね」
高橋先生「何処だぁぁーーー!?薄井ーー!!!」
(空の弁当箱を持って、突如廊下に出てくる高橋)
華「高橋先生…?弁当箱なんか持って、どうしたんですか?」
高橋先生「立川!!あの金髪が、僕の愛妻弁当を全部胃袋に収めたんだ!?今回だけは絶対許さんッッ!」
樽本「薄井くん、本当に先生のお弁当食べちゃったんだね…」
野高「先生、その憎しみを俺に預けて下さい」
高橋先生「野高!!」
野高「必ず倍にして返しますから。鉄拳制裁で」にっこり
(無気味に笑う野高)
華(今日の野高先輩、怖い……!!)
坪井「じゃあ、視聴覚室が怪しいんじゃないか!?俺、行ってくる!!」
樽本「私も行く!」
野高「じゃあ、俺は…」
坪井&樽本「昇降口よろしく!!」
野高「はい…」
華「……」
野高「立川さんも一緒に…」
華「私も先輩が行きそうな場所、探してみますね」
………タタタッ
(走り去る華)
高橋先生「野高!健闘を祈る!」
野高「鉄拳……制裁ッッ!!」
(全速力で昇降口に向かう野高)
高橋先生「廊下は走るなよ〜〜!」
―――視聴覚室にて。
坪井「薄井ッッ!!」
………ガラッ
(扉を開ける坪井)
樽本「いないね…あ!」
坪井「どうした!?」
樽本「劇団ひとりが出てる〜〜!かっこいい〜!」
坪井(テレビがつけっぱなしってことは、ここにいたってことか!?いや、今はそうゆう問題じゃない…)
坪井「……樽本、劇団ひとりはブサイクだぞ?」
樽本「そうかなぁ?なんとなく、坪井くんに似てない?」
坪井「それ、すげーーショーーーック!!!」
―――昇降口にて。
野高(やっぱりいない…か…。あの馬鹿、本当に何処行ったんだよ…)
―――その頃、華は…
華(もしわたしが薄井先輩だったら…)
………ガチャ
(屋上の扉を開ける華)
華(やっぱりいないよね…。でもいい風だなぁ。暑くもないし、ちょうどいいかも)
………ひゅるるるる〜
(上から紙ヒコーキが落ちる)
華(え…!?何処から飛んできたんだろう??)
(屋上のさらに上にあるはしごを見上げる華)
華(まさか…あの上…?)
………カツンッカツンッ
(はしごを登る華)
華(ひぃぃ〜〜!?怖いよーーー!?うぅ、でもあと少し…)
(登りきる華)
するとそこには…
華「………」
薄井先輩が、寝息を起てながら眠っていた。
華(髪が太陽に当たってキラキラ光ってる…。天使みたい…)
薄井「花子もひなたぼっこしに来たのかい?」
華「起きてたんですか!?先輩!!」
薄井「はしごを登る時は静かに登りたまえ!」
華「ハイッッ!すみません!」
薄井「ほら、花子」
(華に向かって何かを投げる薄井)
華「わっ!?」
(キャッチする華)
薄井「僕を見つけたご褒美だよ」
華「あはは、先輩、ありがとう」
わたしの手の中にある大きなアメ玉が、太陽の光を浴びて輝いた。
〜昼下がりのかくれんぼ〜 完。