【第07話-08】恋と欲と日常のあいだ-千晴・和也
距離が近づけば近づくほど、
関係は単純ではいられなくなる。
誰が“彼女”で、誰が“特別”で、
誰が一番そばにいるのか。
答えをはっきりさせないまま、
それでも一緒にいることを選び続ける時間。
甘く、曖昧で、どこか危うい。
この均衡は、いつまで続くのか。
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【Scene08:2年前11月】
──
その日も、千晴と和也のもとに美由が来ていた。
通い始めてすでに二ヶ月。少なくとも隔週では顔を出している。
Webサイトのロイヤリティ収入の大半を、彼女はその交通費と滞在費に注ぎ込んでいた。
「ちょっとは遠慮したらどうなの? 今、私が“彼女”なんだから」
そういう千晴は、怒る様子はない。むしろ、どこか達観していた。
「仕方ないじゃない。私だって、和也さんと遊びたいの」
千晴は思う
(いや、子供じゃないんだから
それに2週に1度、新幹線でやってくるって
遊びに来てるレベルじゃないでしょ)
美由の和也への好意は隠しきれていなかった。
ダダ漏れだった。
「……俺、一応まだ大学では南と付き合ってることになってるんだけどな」
和也のつぶやきは、恋する乙女たちの耳には届かない──いや、意図的にスルーされていた。
もし今の状況を花音が見たら、きっとこう言ったに違いない。
「もうっ! これだから恋する乙女は厄介なのよ!」
──そういう花音も、月に一度のペースで訪れていた。
「俺、今モテ期なのかな?……これ、終わったらどうなるんだろう」
和也はそんなことを呟くが、大丈夫。
彼の未来はすでに決まっている──新倉南の尻に、しっかりと敷かれる運命だ。
それまでは、どうぞご自由に。
美女たちとの妖しくも甘やかな交流を、思う存分楽しむといい。
そして、そんな夜がまたひとつ過ぎていく。
誰もが、心の奥では「この日々が長く続くわけがない」と分かっていながら、せめてあと少しだけ続くようにと祈っていた。
このとき、千晴・美由・花音、23歳。
まだまだ若く、未来は限りなく広がっていた──。
和也という存在が、少しずつ“ハーレム体質”になっていく過程の一幕でした。
本人は戸惑い、時に自嘲しながらも、
結局は誰も突き放せない。
優しさゆえに、線を引ききれない。
千晴も、美由も、花音も。
それぞれが違う想いで彼の隣に立ちながら、
誰も決定的に拒絶されない。
それは和也の魅力でもあり、弱さでもあります。
けれど――
この均衡が永遠に続くはずはありません。
甘やかな時間の裏で、
少しずつ何かは動いています。
さて、彼の“モテ期”は祝福なのか、それとも嵐の前触れなのか。
感じたことがあれば、ぜひ聞かせてください。
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ep47、
クリスマス。
手作りの料理、プレゼント交換、
そして夕焼けよりも少しだけ眩しい、まっすぐな想い。
駆け引きではなく、
計算でもなく、
ただ好きだから動く。
少し不器用で、少し切なくて、
それでもどうしようもなく爽やかな青春の一日。
四人で過ごす、かけがえのない冬の夜が始まります。




