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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow


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【第06話-03】運命改竄(デスティニー・リライター)ー千晴・達也

※この回は、登場人物同士の関係性が大きく揺れる重要なエピソードです。

感情の交錯や価値観の衝突が描かれますので、ご了承ください。



年が明けて間もない、ある冬の日。


「決着をつける」という言葉は、いつも正しく聞こえる。

だが本当にそれは、誰かのためなのか。

それとも――自分を安心させるための儀式なのか。


四人が選んだのは、向き合うこと。

曖昧にしてきた過去と、

言葉にしなかった想いと、

そして、互いの存在そのものに。


これは恋の物語であり、

同時に「役割」と「本心」がぶつかり合う物語。


好かれたい。

嫌われたくない。

それでも、自分を保ったままでいられるのか。


静かな一泊二日の中で、

それぞれが抱えていた本音が、否応なく浮かび上がる。


その夜、何が壊れ、

何が残るのか。


【Scene04:2年前1月】



ある冬の日、高橋千晴は心の中で頭を抱えていた。


そこは都内の高級ホテル。

スイートまで行かなくとも、最上位クラス。

クイーンサイズのベッドが二つ、ゆったり並び、6人は余裕で眠れそうな広さがある。


その部屋に今、全裸にタオルを巻いただけの男女4人がいた。


千晴(達也の教え子、達也が逢瀬を重ねる相手、和也の元カノ、南の友人)

達也(千晴の教師、千晴が逢瀬を重ねる相手)

和也(千晴の元カレ、南の今カレ)

南(和也の今カノ、千晴の友人)


……どうしてこうなったのか。



年も明けてしばらく経った頃、千晴は南に呼び出された。

「ダブルデートがしたいんです!」

「へぇ」

思わず変な声が漏れる。

「誰と誰で?」

「私と和也さん、千晴さんと達也さんとです」


南の表情は真摯だった。

そして、その横に立つ和也の顔色も確認した瞬間、千晴は悟る。

これは――和也の心に残っている「千晴という存在」を、過去のものにするための企みだと。


そうなると千晴は弱かった。どうしても叶えてやりたくなる。

誰にも嫌われたくない、誰にも好かれていたい――それが拒めない理由だ。


南は一瞬で、その性質を見抜いていた。

耳元で甘く囁く。

「一泊二日、部屋は一つ」

千晴はさすがにためらうが、追い打ちが来る。

「ディズニーリゾートの宿泊、和也さんは大金を貰ったらしいけど、私、宿代ぴったりしか貰ってないんですよ」


(あの残念美人……後で覚えていなさい)

花音に“色を付けろ”と指示しなかった自分を棚に上げ、千晴は心の中で毒づいた。


そして、覚悟を決めた瞬間――もう一つの厄介な性が目を覚ます。


”求められればどんな立ち位置にもなれる”特殊能力。

好かれたい気持ちが暴走し、瞬時にその場で求められる者へと変わる。

今の南に必要なのは、“自由奔放で周囲を巻き込み突き進む、ある意味迷惑で、しかし頼られる女”。


「良いわ、判った。私に任せなさい。達也は説得しておくわ。再来週の土日、一泊二日で良いわね」


和也はその瞬間、はっきりと感じ取った。

千晴の特殊能力が発動した、と。


和也と千晴の交際期間は八ヶ月にも満たない。

だが和也は、誰よりも深く千晴を理解していた。

誰よりも深く愛していたとも言える。

”それがゆえに、自分だけに愛情を向けてもらえないことが耐えられなかった――だから彼女の元を去った。”

和也は南にそう話していた


だからこそ、南はこの話を持ち出したのだ。


話は戻るが、そんな和也だからこそ、千晴の特殊能力が発動する場面に立ち会い、その特異さを察知していた。

そして密かに名付けた――『無限役割インフィニット・ロール』。

まるで厨二病だが、それは彼の心の中だけの呼び名だ。笑わないでほしい。



ダブルデート当日。

南20歳、千晴22歳、和也24歳、達也37歳。


年齢差だけ見れば、明らかに無理のある組み合わせ。

だが『無限役割』が生み出した千晴の“強引に突き進む”キャラクターが場を支配する。

和也が心の中で名付けたその力は、今まさに牙を剥いていた。

誰一人として、千晴に逆らうことはできなかった。


初めは南が望んだテーマパークに入った。

達也は明らかに場違いだと感じていたが、今の千晴に逆らうことはできず、やがて自らも笑っていた。


その後、4人でディナー。

軽い冗談や他愛ない会話で盛り上がるが、ふと過去の話題が混じる。

千晴と和也が交際していた頃の思い出が顔を出すたび、南と達也の表情にわずかな陰が落ちる。


(……南ちゃんの考えは正しい。ここで、きっちりけりをつけるべき)

自然消滅に近い終わり方をした元の関係。別れ話がないままでは、和也の心に”千晴”という存在が残り続けるのも無理はない。



ディナー後に向かったのは高級ホテル。

スイートではないが、最上位クラスの部屋。クイーンベッドが二つ、ゆったり並んでいる。

チェックインまで男性陣には何も説明していなかったため、ドアを開けた瞬間にふたりは一瞬動きを止めた。だが、その逡巡すら千晴の強引さが押し流す。


そのまま全員を順にシャワーへ。

室内着も下着も禁止――タオル一枚だけを許すルールが、口に出さずとも場を支配する。



それでも、きっかけは生まれなかった。

頭の中で構図を描きながらも、最後の一歩が踏み出せない。


沈黙を破ったのは、一番年少の南だった。

「……始めましょ」

その声とともに、パートナーにむしゃぶりつくようなキス。


そうして、二人の女と二人の男が濃密な時間を過ごした


──


ほぼ同時に目を覚ましたとき、男たちは無言で目を交わし、順にシャワーを浴びていた。

女二人もそれに倣い、全員が浴び終えた後も、誰一人口を開かなかった。


会話を交わすことも、何かを身にまとうことも――

それは現実に戻るきっかけになってしまう。

いまはまだ、現実に戻りたくなかった


四人は無言のままベッドへと身を沈めた。

先ほどまでの熱がまだ部屋にこもっている。

なぜか離れがたい気持ちに包まれ、クイーンサイズ一台に四人がもぐり込む。

男たちはそれぞれの右腕に、それぞれの女性を抱き寄せた。


やがて、浅い眠りが皆を連れ去っていく──。



千晴がふと目を覚ますと、和也がグラスを手にしていた。

上半身は裸、下着だけを纏い、淡く光る水滴が肩を伝う。

千晴も喉の渇きを覚え、タオルを身体に巻いてベッドを抜けた。

布の触れる感覚が、夢のようだった時間を現実へと引き戻す。


「やぁ、起きたかい」

気づいた和也が笑みを向ける。

「……恥ずかしい」

口をついて出たのは、それだけだった。

「激しかったからな」

そう返されると、確かに全身のだるさが現実を証明していた。


「なあ、少し話をしてもいいか?」

和也は昨年のクリスマス旅行の話を始めた。

冬美のミニスカサンタ姿から始まり──。


「何故か里の恩人扱いされていたんだ」

「それは私がそう言ったの。全部、私の成果にされちゃ、困るもの」

「でも俺、何もしてないぞ」

「サイトを提案して、形にしたのは事実でしょ」


またもミニスカサンタの話に戻る。

「冬美さん、47歳で葉月さんが46歳なんだ」

「それであの若さとスタイル……」

和也は首を振る。「あの格好が似合うってすごいよな」


ふと千晴が視線を巡らせると、達也が寝返りを打ち、南に腕を回していた。

「寒いのかしら」そう呟き、そっと布団を掛け直す。

「私たちも戻りましょうか」

二人はもう一つのベッドへ潜り込んだ。


和也は美由・由美をも巻き込んだ、あの夜を語る。


「本来なら冬美さんが外を見張ってるはずなんだけど……そういうの苦手だから離れたのかもね」

そう返したが、千晴は冷静を装うことの無意味さを悟った。


そしていつしか、和也はクリスマスの事を語るのではなく

千晴の体を弄り始めていた。



千晴は最初から和也とも関係を持つつもりだった。

達也と和也、それぞれ同じように交わったとき、どちらでより深く乱れるのか。

それが分かれば、自分が達也を「愛している」のか、和也への「好き」とは違うのか、確かめられると考えた。


しかし千晴も理性の奥底では分かっている。

──達也への「好き」と、和也への「好き」に差はない。愛ではない。

なのに、身体は簡単につながってしまう。


その時、千晴の耳に、隣から寝息とも寝言ともつかぬ音が届く。


(……起きた? 達也や南に見られたら?)


その背徳感が、さらに熱を押し上げた。


──愛しているわけではない。心が繋がっているわけでもない。

それでも、離れがたい衝動が千晴を突き動かしていた。


やがてが和也と千晴は同時に果てた。



時は僅かに遡る、和也が千晴の体を弄り始めた頃


達也もまた南を抱きしめていた。

寝返りをしたのか、気付くと南が腕の中にいた

掛布を掛けられている事から考えると

和也か千晴が気付いて掛けたのだろうか


達也は思った

……千晴よりも豊かだな。


その輪郭を撫でて確かめる

その時、南の体が小さく跳ねる。

……起きているな。


やがて、和也と千晴の気配が変わる

……始まったな。


寝たふりをして直接見えぬ分、余計に嫉妬と同時にどうしようもない熱がこみ上げる。

南の腰が小さく動き、達也を誘う。


やがて達也と南も一つになる


そして四人は同時に果てた



和也と千晴は達也と南の様子に気づかなかったのか

二人して浴室へと入っていった


達也はそこで初めて南に声をかけた

「……本当に、よかったのか?」

ここまでしておいて、自分はなんと狡いのだろう――そう思う。


「大丈夫。女って、男が思っているよりもずっとしたたかなの。ちゃんと計算してるよ。私も、千晴も」


その一言で、達也は腑に落ちた。

”もしもの時”など無かったのだ。

裏切られたような感覚と同時に、自分も千晴を失う前に、最後の夜を刻みたかったのだと気づく。


(俺は、どうせ三月で大学を去る。もう二度と会うこともない。)

そう考えると気が楽になった。

南へとキスをする。

南も応えた。


そこで達也は無言で南の手を取り、浴室へ向かう。


「なに、和也たちをからかいに行くの?」

南が悪戯っぽく笑みを浮かべたまま、二人は浴室へ向かう。


「えっ……」

驚きの声を上げたのは和也だけだった。

千晴は全く動じず、最初からすべてを知っていたかのような表情だ。


「ふふ、二人で何かしていたの?」

南が和也に声をかける


「いや、これは違うんだ」

「何が違うの? それに、別に責めてないよ」


やりとりが妙に可笑しく、達也は南の肩を抱き寄せ、情熱的な口づけをした。

和也が息を呑む。

南は一瞬だけ驚いたが、すぐに瞼を閉じ、深く息を交わす。


それは千晴への決別、達也の自分勝手な別れの意思表示だった。

達也と南の唇が離れても、達也と千晴の間に言葉はなかった。

しかし南は、和也に向かってはっきりと言う。


「四人でするって、こういうことなんでしょ。

 私は、和也さんが私を一番だと思ってくれているなら、あとは何をしていても構わない。

 和也さんはどう?」


――俺は一生、この子には敵わない。

和也はそう悟り、口にした。

「……俺も同じだよ」


南は千晴の存在を消そうとはしなかった。

それでも構わないから、自分を一番に思いなさい――そう表明することで、この関係の中での優位を手に入れたのだ。


新倉南、恐ろしい子だった。


──


翌朝、和也は南と千晴を同時に抱いていた。

それは南が望んだ事。


和也は悟っていた。昨夜から千晴は――“都合の良い女”になっている。

それは彼が「無限役割インフィニット・ロール」と名付けた特性によるものだった。


昨晩、浴室で達也が千晴と和也の前で南に情熱的なキスをした瞬間から、歯車は動き出していた。達也と千晴の間にどんな意思が交わされたのかは分からない。だが、今の千晴の姿は達也の望みを叶えるためのものだと、和也には直感できた。


達也は大学を去るつもりなのだろう。彼がそう語っていたのを和也は知っている。千晴に「ついてきてほしい」という願いがあったとしても――千晴には決してできない。誰かのものになることで、他者から離れることを恐れるからだ。


その性質を、和也は誰よりも理解していた。千晴自身よりも。


和也は南に千晴の元を離れたのは「自分だけに愛情を向けてくれなかったから」と説明したが、真実は違う。

千晴は「和也だけを愛そうとする心」と「誰からも嫌われたくない願い」――その矛盾に引き裂かれていたのだ。

和也はそんな千晴の姿に耐えきれず、愛しながらも千晴のもとを去った。


(俺は達也の何倍も、千晴を愛していた……)


そう思いながら、和也は南と千晴を同時に抱いた。

たがら千晴をより強く抱き、南を嫉妬させてしまう。

「私が一番じゃないの?」と詰め寄られ、

「ああ、南が一番だよ」と軽くかわす。

南は誤魔化しと知りつつ、それを受け入れた。受け入れることで、むしろ関係の中で優位を握ったのだ。


奇妙だが、二人は良い相性を見せていた。


一方、達也は目を覚ましていたが、決して参加しなかった。

(俺はもう若くないからな)

そう心の中で嘯いた。だが本当は、千晴への執着が一気に冷め、南に惹かれそうになっている自分を恐れていただけだった。


――それからホテルを出るまで、達也と千晴の間に言葉は一言もなかった。

そのまま、四人は解散した。


数日後。

大学で顔を合わせた千晴と南は、互いに安堵の笑みを交わす。

「ねえ千晴、私、無事に来たわ」

「私も」

二人は互いに“月のもの”が来たことを確認し合った。


南は悪戯っぽく笑って言う。

「千晴、これで私たち親友よね」

「そうね、これからよろしく」


そのときの千晴の笑みは、誰かに求められて作ったものではなく――自分の本心から漏れた、苦笑だった。


そしてほんの少しだけ、肩の荷が下りたように感じていた。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


正直に言えば、かなり踏み込んだ回でした。

関係性も、感情も、立場も――全部が混ざり合った一夜。


このエピソードで描きたかったのは、

「誰が誰を愛しているか」よりも、

それぞれが何を守ろうとしていたのかです。


千晴は何を確かめたかったのか。

和也は本当に吹っ切れているのか。

達也はどこで気持ちが変わったのか。

そして南は、どこまで計算し、どこまで本気だったのか。


読んでみて、どう感じられましたか?

共感、嫌悪、切なさ、怖さ――何でも構いません。


とくに今回は、

・千晴の選択

・和也の本音

・達也の沈黙

・そして新倉南の立ち回り


どこに一番引っかかったのか、ぜひ聞いてみたいです。


一言リアクションでも大歓迎です。

次へ進む前に、この夜の余韻を一緒に噛みしめられたら嬉しいです。



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