【第06話-02】運命改竄(デスティニー・リライター)ー千晴・達也
記者会見を終え、千晴の選択にも一つの区切りがついた。
だが、彼女の物語は決して一人で進んできたわけではない。
その周囲で揺れ、動き、選び続けた人々がいる。
これは、少し前の冬の出来事。
ひとつのクリスマスが、
いくつもの関係を静かに書き換えていった夜の話。
主役は千晴ではない。
けれど――
彼女の選択と無関係でもない。
欲しいものを掴みにいく少女と、
流れに抗えない青年。
そして、
運命を書き換える力は、
一人だけのものではないと知る。
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【Scene03:3年前12月】
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ある冬の日、上嶋和也は頭を抱えていた。
付き合い始めてまだ二カ月の恋人、新倉南から──
”クリスマスイブは、特別な場所でお泊まりしたいな♡”
……と、笑顔でおねだりされてしまったのである。
「都内の高級ホテル……」
──にっこり。あ、これ“ありきたりでしょ”って顔だ。
「ディズニーホテル……」
──いや、二人とももう当分ディズニーリゾートの予約画面は見たくない。
「じゃあ、俺の実家……」
──いやいや、まだ早すぎるし、求められてる“特別”はそういうのじゃない。
……頭の中で自分にツッコミを入れながら、和也は袋小路に追い込まれていった。
思い余った和也は、よりによって元カノである高橋千晴に相談を持ちかけた。
「はぁ? 今カノとのデートを元カノに相談?」
呆れ顔の千晴がため息をつく。
「花音に相談したら?」
和也は即答した。
「いえ、俺、そこまで友達少なくないから」
「なんか……ひどいこと言ってない?」
千晴は眉をひそめる。
「私が言ってるのは“どこ行けばいい?”じゃなくて、“霞の宿に泊まれないか”って聞けってことよ。
別館の常連枠なら、花音が泊めてくれるかも」
──なるほど。
1泊10万超の宿だ。特別感は十分だし、南が友好を深めたがっている花音にも会わせられる。
「いいじゃないか!」
勢いづいた和也は、さっそく花音に連絡を取った。
ただ、和也は理解していなかった。
自分が宿の“恩人”の一人として認識されていることも──
花音の友人が里を訪れたとき、どれほど大騒ぎになるかも。
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交渉の結果、南は23日から里入りし花音と交流。花音宅か仲居寮に宿泊。
和也は24日に合流し、一泊することに。
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23日──。
花音は急な会議で、会津若松駅まで迎えに行けなくなった。
改札を抜けた南の目に飛び込んできたのは──
”新倉南様 ご歓迎”と書かれたプラカードを掲げた、若い女性二人組。
南は少し臆したが、勇気を出して声をかけた。
「あの……霞の宿の方ですか?」
「あっ、新倉南様ですね」
「初めまして、美由でーす」
「由美でーす」
「「ふたり合わせて美由由美です!」」
……沈黙。
美由と由美は顔を見合わせた。(あれ、滑った?)
そのとき──
「美由由美Webのお二人ですね!? 大ファンです! 私、会員番号7なんです!」
さすがの美由・由美も、会員番号1桁台は初めてだった。
目を見開き、前のめりで迫ってくる南に半歩引く二人。
だが持ち前の社交性で、すぐに打ち解けた。
庄蔵氏本宅の駐車場に止めてある車に南のキャリーバックを入れて、町案内へ。
「夜は花音の奢りでフレンチコースよ」美由が説明する。
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町を散策し、花音と待ち合わせのカフェへ。
南が切り出す。
「私もコスプレやってるんですが、お二人のコスプレ姿が大好きなんです。特典ダウンロード画像はコンプリートしてます!」
由美は一瞬固まった。
(コンプリート……? 最低でも二巡分は買わないと揃わないはず……この眼鏡っ娘の部屋、絶対うちらのグッズだらけだ……)
罪悪感を振り払い、話題を変える。
「どんなコスプレやってるの?」
「あ、小さい頃から南ちゃんのコスプレ専門です」
「南ちゃんの……?」
「あ、ごめんなさい。《タッチ》の南ちゃんです」
サブカルに詳しい由美は納得。
美由も《タッチ》は知っていたようで──「あれ? 南ちゃんの彼氏って……上嶋和也さんだったよね」
千晴の元カレと言いかけ、飲み込む。
代わりに由美が茶化す。
「名前で選んだ?」
「はい、小さい頃から“彼氏は和也さん”って決めてました!」
南の屈託ない笑顔に、美由は(この子、ただの天然じゃないな)とふと思った。
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その後、花音が合流して南のコスプレROM披露会が始まった。
浅倉南のコスプレ姿の南ちゃんは、眼鏡を外すと見違えるように美人だった。
(眼鏡を取ったら美人って……どこのラノベヒロインよ)
美由は心の中でツッコミを飲み込む。
──制服や私服、レオタード……ページをめくるごとに露出度が増していく。
「ぎりぎり見えてませんから!」と胸を張る南。
(((下着は丸見えだけど)))と三人は内心で揃って突っ込む。
そんな売上で美由由美グッズを買っていると聞き、更に複雑な二人。
「R18もありますけど……見ます? 大事なところはちゃんと見せてませんから」
一瞬、空気が止まった。
花音は(何を見せないの……?)と思いつつ、「え、ええ……」と返す。
登場したのはもう一人の浅倉南──年上のようだが、二人で百合百合なきわどすぎる写真が並ぶ。
最後にはもう下着すら着けておらず、手で隠しているだけだった。
そして美由は気づく。(この子、意外と巨乳!)
「眼鏡外したら美人、脱いだらすごい……貴女、どこのエロゲーヒロインよ!」と美由が叫ぶと、南はニヤッとウインク。
「へへ、よく言われます」
美由は確信した。
(……この子、ただの天然じゃなくて、勝ち方を知ってるタイプだ)
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4人の歓談は、ディナーの予約時間まで途切れることなく続いた。
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ディナーはクリスマス特別のフレンチコースだった。
煌びやかな皿の上でソースが艶めき、シャンパンがグラスの中で淡く揺れる。
一人二万円は下らないコースに、南は目を丸くした。
「こ、こんなの奢ってもらっていいんですか……?」
「そのうち慣れるわ」
「一晩五十万に比べたらね」
美由と由美のさらりとした言葉に、南は首をかしげるばかりだった。
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食後、シャンパンを空けたため車は運転代行を呼び、霞の宿へ向かった。
「今日は金の湯に入っていいわ」
花音の計らいで、宿泊客のいない特別室の風呂を使わせてもらえることに。
浴場に足を踏み入れた南は、湯けむりの中で息をのんだ。
「わぁ……すごいお湯ですね……」
「やっぱり大きいよね」
「写真で見たよりもね」
美由と由美は、実物を目にした“それ”に感心していた。
──もちろん花音には遠く及ばないが、千晴は超えているかもしれない。
「ところで南、どうやって和也さんを口説き落としたの?」
由美はいつの間にか呼び捨てだった。
「この残念美人の“当たって砕けなさい”って戯れ言を真に受けたんでしょ?」
「ちょっと酷くない?」
そんなやりとりを微笑んで聞いていた南は、二カ月前のやり取りを思い出す。
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「上嶋和也さん、私と付き合ってください」
「えっと……出会ってまだ間もないし、まずは友達から……」
「私、彼氏になるのは和也さんしか考えられません。もし叶わないなら大学辞めて田舎に帰ります」
「えっ、いや、そういうのは……よく考えて──」
「駄目ですか?」
「いや、駄目ってわけじゃ……」
「じゃあ、よろしくお願いします」
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「こんな感じです。花音さんのアドバイスは的確でした」
((いや、それは違うんじゃね?))
美由と由美は心の中で揃って突っ込みながらも、結果が出ている以上は黙っていた。
「ずいぶん思い切った告白ね。田舎ってどこ?」
「「いや、お前が言うな!」」──今度は声に出てしまった二人。
「え? 私、実家は都内なんで……通学してます」
「って、おい! 大学辞めて田舎に帰るんじゃなかったの!?」
美由の突っ込みはさらに熱を帯びたが、南はケロッとしていた。
「結果オーライじゃないですか」
……返す言葉はなかった。
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風呂から上がり、仲居寮で夜は更けていく。
二人の高校時代の武勇伝に、南は目を輝かせる。
「四人で、ですか!? やってみたいです!」
「貴女、二カ月前まで純潔だったんだよね……?」
自分で話題を振っておきながら、引き気味になる由美だった。
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翌日。
会津若松駅に降り立った和也の前に、初老の男が立っていた。
面識はないが、千晴から聞いた話と照らし合わせれば──間違いない。庄蔵氏だ。
「初めまして、上嶋和也と申します。わざわざお迎えありがとうございます。この度はお世話になります」
「初めまして、林と申します。千晴様からお話は伺っております。宿を救ってくださった、あのWebページを考案し、設計もされたとか──里の恩人ですな」
定番のやりとりを交わし、宿へ。
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「和也さん来た来た!」
「お久しぶりです、和也さん」
南と和服姿の花音が出迎える。美由と由美はこの時間、仕事中だった。
和也と南が花音に連れられて別館に入ったその瞬間──
パーン!!
クラッカーが一斉に鳴り響く。
「メリークリスマス!! いらっしゃいませ、和也様、南様!!」
そこには大勢の従業員がならび
その最前列の左右には──なぜかミニスカサンタ姿の美由、由美、そして真ん中には南にも見覚えの無い30代前半位の女性がこれまたミニスカサンタ姿でクラッカーを手に笑顔で並んでいた。
その真ん中の女性が言う
「里の恩人の和也様が、せっかくクリスマスイブに彼女さんを連れていらっしゃるのに、霞の宿ではクリスマスらしい演出ができませんので……せめてこれくらいはと」
──いえ思いっきり場違い感が半端ないんですが
和也は内心突っ込みつつ、せっかくの厚意なので黙っておいた。
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花音に案内され、廊下を進む……と思いきや、一度外に出て本館へ。
さらに奥へ進み、長い渡り廊下の先──離れの特別室に到着する。
そこには木製の立派な立て看板があった。
”宿の恩人 和也様、その恋人 南様”
「きゃー! 恋人ですって!」
……騒ぐ所、そこ? 和也はこらえて黙る。
花音が恭しく襖を開けると──
三つ指をつき、静かに頭を垂れる和服姿の女性がひとり。
顔を上げたその人は、見覚えのある、凛とした女性だった。
「本日お世話をさせていただきます。仲居頭の高橋冬美と申します」
それは、先ほどミニスカサンタ姿でクラッカーを鳴らしていた真ん中の女性だった。
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南が猫を見つけた。
「あっ、猫」
「あれはみいちゃんと言いまして、この宿の看板猫なんです」
南と花音は中庭に出て行き、和也は取り残される。
残った彼に、仲居頭の冬美が静かにお茶を入れていた。
特別室は、一泊三十万ほどするはずの高級和室だ。
湯呑みや掛け軸も、庶民の感覚では値段の見当すらつかない。
和也は湯呑みを手に取り、何気なく尋ねる。
「この湯呑みなんかは価値が有る物なのですか?」
「はい、そちらは存在が世に知られたら国宝に指定されるかもしれませんね」
平静を装いつつも、心の中では冷や汗が走る。
「どおりで趣があります」
──実際は全く分かっていない。
「あの掛け軸は?」
「せいぜい、重要文化財クラスですね」
数分前まで軽い気持ちで来たはずが、和也はこの場に呼ばれたことを少し後悔し始めていた。
冬美は、そんな彼を見ながら密かに考える。
(3年前に千晴ちゃんと話したときとそっくり……別れた元カレだって聞いているけれど、案外お似合いだったのかも。今の彼女さんより千晴ちゃんのが合ってそう。それに、千晴ちゃんもこの前来ていた達也さんより和也さんの方が合っていそうなんだけど)
しかし表情には一切出さず、淡々と接客を続けていた。
やがて冬美が「若女将が戻りませんね、探して参ります」と告げて退室。
しばらく待っていると、40代半ばほどの女性が現れる。番頭を務めているという。
「食事の準備が整いましたので、こちらへ。お連れの方は既にお越しです」
案内された別室の扉が開くと──
「サプライズ、メリークリスマス!!」
再びクラッカーの音が響く。
室内にはミニスカサンタ姿の女性たちが並んでいる。
美由、由美、そして花音までが同じ衣装に身を包み、華やかに微笑んでいた。
さらに見覚えのない三十代前半ほどの女性もおり、花音の姉だろうかと思わせる。
恋人の南までが、同じミニスカサンタ姿でこちらを見ている。
しかし、和也が最も衝撃を受けたのは──
つい先ほどまで和服姿だった冬美までが、ミニスカサンタ姿その列に混ざっていたことだった。
やがて、花音の姉かと思われる女性が、上品な所作で一歩前へ出て口を開く。
「和也様、ようこそ霞の宿へ。女将の葉月と申します。本来は昼食のおもてなしはしておりませんが──宿を救っていただいたご恩に報いるため、一ノ瀬家からのささやかな感謝の品として、ぜひお受け取りくださいませ」
ということは、この人が花音の母……?
驚きと同時に、和也はいつの間にか“宿を救った恩人”という立場に仕立てられていることに気付くが、その違和感を深く考える前に流されてしまう。
それが千晴の仕掛けだと知るのは、しばらく後のことだった。
テーブルには、クリスマスらしいオードブルが美しく並ぶ。
「ごめんね南、今日は仕事って嘘ついて……実は朝からこれの準備してたんだ」
美由が南に小声で謝っていた。
「皆さん、写真撮りますよ」
いつの間にか年配の男性がプロ仕様のカメラを構えていた。
集合写真から個別写真まで撮影が行われ、場は賑やかさを増す。
葉月が「それではごゆっくりお楽しみください」と告げ、カメラマンと冬美を伴って退室した。
「今のカメラマンさんって、プロの方?」
和也が花音に問うと、意外な答えが返ってくる。
「私のお父さんよ」
「えっ、てことは?」
「この宿の支配人をやってます」
──支配人にカメラマンまでやらせるのか、と和也は理解することを諦め始めていた。
オードブルはタンドリーチキンやローストビーフなど、高級店の品を買い揃えたものなのか、どれも絶品だった。
しかも周囲はミニスカサンタの美少女ばかり。
和也は心の中で「もしかして、俺は明日死ぬのかもしれない」とまで思い始めていた。
後日、千晴から聞いたところによれば──
見た目こそ三十代前半か半ばにしか見えないが、仲居頭の冬美は47歳、女将の葉月は46歳とのこと。
その年齢であの衣装を着こなす勇気に、和也はある意味で深い尊敬を抱くことになった。
もっとも、それはまた別の機会の話である。
⸻
和也と南は程なくして、宿の皆にお礼を述べ、昼食の場から離れの個室に戻った。
南はまだミニスカサンタ姿のまま、楽しげに裾を揺らす。
「この衣装、プレゼントしてくれるんですって」
笑顔の奥に、少しだけ挑発めいた色が混じっていた。
国宝級の品々に囲まれた部屋で、そんな格好の南と二人きり──その背徳感が、和也の理性をじわじわと侵食していく。
「南……」
「何? 南ちゃんの色気にやられちゃった?」
眼鏡を外した瞬間、無防備な少女の顔が、一気に大人の女のそれへと変わる。その落差に、息が詰まる。
和也が南の体を弄る。
次の段階に進もうとした、その瞬間。南はふいに襖を開け放った。
そこには、ミニスカサンタ姿のままの美由と由美が座り込んでいた。頬を紅潮させ、視線を泳がせている。
「言ったでしょ、”四人で、ですか!? やってみたいです!”って」
有無を言わせぬ南の声音に、二人は静かに部屋へ迎え入れられた。
後に千晴はこう分析する。
(普通なら冬美さんが周りを見張ってるはずだけど……冬美さん、そういうの苦手だから逃げちゃったのかも)
しかし、なぜ和也と千晴がそんな話をしていたのかは──また別の話だ。
南は由美の顎にそっと指をかけ、唇を重ねる。由美は一瞬目を見開くが、すぐにまぶたを閉じた。
「やっぱり、そういう気があるんだね」美由が囁く。
「最初は譲ってあげる、最後は私ね」
南のその声が合図だった
和也と美由の距離がなくなり
やがて、格式高い部屋でもっとも似合わぬ行為が繰り広げられた。
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気付けば、部屋付きの露天風呂に四人で浸かっていた。
沈黙の中、南だけが満ち足りた笑みを浮かべている。
和也は全ての記憶を封じる事にした。
その方がいい。
南は欲しいものは、必ず手に入れる。
美由由美Webの特典映像しかり、“和也”しかり。
そして、望んだ状況そのものすら。
──新倉南、恐ろしい子である
⸻
露天風呂から先に上がった美由と由美は、気配を殺すように静かに姿を消していた。
一体どれほどの時間、四人でそこにいたのか。
意図的に記憶を封じ込めた和也には判別できない。
しかし、程なく夕食に呼ばれたことを思えば、決して短くはなかったのだろう。
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板長が直々に腕を振るった夕食は、見た目も味も完璧だった。
舌を楽しませる料理に酒も進み、和也の頬はほのかに赤く染まっていった。
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夜は素直に休むつもりだった。
濃密すぎた一日で、身体も心も疲れ切っていたからだ。
しかし、酒が南の理性を緩めたのか、再び予想外の波が押し寄せる。
寝室の布団で目を閉じかけていた和也の枕元に、影が落ちた。
立っていたのは──レオタード姿の南。
昼間のミニスカサンタ以上に、この部屋に似つかわしくない背徳的な装いだった。
「着衣プレイ専用コスチュームよ。和也さん、今日は寝かせないんだから」
眼鏡を外した南の表情は、もはや少女のそれではない。
艶やかで、獲物を逃さぬ肉食獣のような光。
背筋に冷たい戦慄が走る。
──これが、つい二ヶ月前まで純潔だった少女の顔なのか。
自分は、とんでもない扉を開けてしまったのではないか。
そう思いながらも、和也は悟っていた。
この少女から、一生離れられない、と。
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翌朝、部屋を出ると、三つ指をつき静かに頭を垂れる和服姿の女性がひとり。
冬美だった。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
……それ、某国民的RPGのセリフ!
無表情で言うの、やめてくれ。怖いから!
和也は、数ヶ月前に千晴も抱いたであろう感想を同じくした。
だが、追い打ちはすぐだった。
「ゆうがたもおたのしみでしたね」
──せっかく封じた記憶が蘇る。
「勘弁してください……」思わず声が漏れた。
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その後に案内された朝食も、まさに絶品。
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チェックアウトの時。
(宿泊費も食費も、宿側は結局受け取らなかったが)
玄関前には葉月、冬美、美由、由美が並び、見送くる。
南がふいに笑った。
「美由さん、由美さん、”また”お願いしますね」
美由と由美、そして──なぜか冬美までもが、うつむき顔を赤らめた。
──新倉南、恐ろしい子である。
こうして、和也と南のクリスマス旅行は幕を閉じた。
──
クリスマスの一夜。
主役は千晴ではなく、新倉南でした。
欲しいものは、欲しいと言う。
迷わない。ためらわない。
状況ごと、自分に有利な形へ持っていく。
あの行動力をどう感じたでしょうか。
可愛い?
怖い?
賢い?
それとも――危険?
南は天然に見えて、実は計算高いのか。
それとも、計算すら超えた“本能型”なのか。
感想やリアクションをいただけたら嬉しいです。
新倉南という存在を、どう受け止めたのか。ぜひ聞かせてください。
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あのクリスマスから、わずか数日後。
四人は再び、同じ空間に集う。
場所は都内の高級ホテル。
広すぎる部屋に、近すぎる距離。
――どうして、こうなったのか。
「ダブルデートがしたいんです」
無邪気に聞こえるその提案の裏にあったのは、
過去への決着か、それとも――試し合いか。
元恋人と、今の恋人。
教師と教え子。
愛と執着。
そして、誰にも嫌われたくない少女の“性”。
求められれば、どんな役割にもなれる。
その力は、祝福か、それとも呪いか。
四人の関係が、一線を越える夜。
笑顔の裏で、それぞれが胸に抱えていた本音が静かにあらわになる。
これは、恋の決着の物語か。
それとも――崩壊の始まりか。
次回、
踏み越えた一歩は、もう元には戻らない。




