【第05話-09】四人の少女-寄り添うという選択
特別な出来事があったわけではない。
ただ、少しだけ距離が縮まり、
少しだけ立ち位置が変わった。
拒まれることもなく、
押しのけられることもなく。
静かに、自然に。
居場所は、主張するものではなく、
気づけばそこにあるものなのかもしれない。
【Scene19:スィートルームと恋バナ、慰安旅行3日目】
── 中田 美由 ──
スイートルームの衝撃からようやく回復したころ、千晴が声をかけてきた。
「ショーが始まるみたいよ」
えっ!
みんなで窓際に走る。
眼の前に広がるきらびやかな世界。
夢みたい……これ、本当に現実?
ショーが終わると、千晴と花音は一旦、自分たちの部屋
にいった。
すぐ隣のハーバールーム。千晴がうまく手配してくれたらしい。やっぱり、チョー有能!
その間に、私たちも荷物の整理とお風呂を済ませて、寝間着に着替えてしばし待機。
── 田中 由美 ──
やがて千晴と花音が戻ってきた。
今夜こそ“達也”との関係をすべて吐かせる。そう決めていた。
そのために、美由とはこっそり打ち合わせもしてある。
はじめは当たり障りのない話から始めた。
霞の宿の仲間たちの話、意地悪な先輩の愚痴、可愛い後輩の成長ぶり。
「そうそう、板場に入ったかっこいい男の子の話もあるよね」
「うん、あれ! 料理上手で笑顔も爽やかで、ぜったい人気出るって思ったのに……」(美由)
「そうそう、唾付けようと思ったのよ! 私たちが先輩なんだから、選ぶ権利あるでしょ?」
「それなのに、彼女持ちだったのよ!? 修行に入ってきて彼女持ちってどういうことなのよ!?」(美由)
「“板場の恋”ってさ、先輩に憧れるとこから始まるのが定番じゃないの〜!?」プンプン
千晴も乗ってきて、大学の変な教授や向上心だけは強い准教授の話で盛り上がった。
そこから自然に、このスイートルームの予約の話題へ。
いやらしい准教授の事と、千晴の元カレ・和也が実はこの部屋の予約を取ってくれていたと聞かされて——
── 中田 美由 ──
キタキタ……!
これは一気に踏み込むしかない!
由美に目配せして、こちらの手札を切る。
「私たちね、高2の夏に同時に初恋をしたの」
「双子のように育った二人だもの、そういうこともあるわよね」
花音ナイスフォロー。
「お互い詳しい話はしなかったけど、なんか“どっちが先に進展させるか”って競争意識が芽生えてさ」
「私たち、あの頃が一番、というか唯一、あまり話さなかった時期だよね」
由美の一言に、うんうんと頷く。
「それで、私が先に初体験を済ませて」
「私は3日遅れだった」
「そっ、そうなんだ……」
千晴があからさまに動揺してる。お茶に手を伸ばした……ふふ、まだ早い。
「で、初めて彼氏の話をし合ったら——」
「「同一人物だったの!!」」
ブッファー!!
── 高橋 千晴 ──
お茶、吹いた……。
拭きながら続きを聞く。
「二股だったの」
「しかも、初めてを捧げたのに!」
「だから、言いふらしてやったの!」
「「ざまあみろ!!」」
あのテンポとシンクロ率、見事すぎる。
「でも、恋愛はこりごりにはならなかったよ」
「葉月さんに雇ってくださいって話をしに行った時、高校の3年間は精一杯青春するって約束したからね」
……この二人、完全に打ち合わせ済みじゃない?
「「してないよ?」」
……心読まれた。
「でね、高3の春に同時に告白されたの」
「幼なじみの男子二人に!」
「「それぞれが私たちに!」」
「楽しかったな、あの一年」
「海にも行ったし」
「二人とも、私たちが初めての彼女だったんだって」
「筆おろしは別々だったけど」
……え、ちょっと。
「「よく、4人で“シタ”よね」」
ブッファー!!!(二度目)
「……ところで花音、なんでそんなに平然としてるの?」
「えっ?初彼氏の話は初耳だけど……“4人で”の話は、二人が寮で武勇伝みたいに話してるから」
……ああ、そういうこと。
── 一ノ瀬 花音 ──
じゃあ私の番?
うーん、彼氏いたこともないし……でもちょうどいい話があった!
「あのね、もうひと部屋の予約取ってくれたの、文学部の2年生の子なの。
名前は……新倉南ちゃん」
みんながほっこりとした目で見てる。
「彼女、予約取れたことをわざわざ直接連絡してくれてね。
“お友達になってください”って」
「もちろん“ぜひ”って答えたわ。
それから、電話やメールでよくやりとりしてるの」
「でもね、なぜか私に恋愛相談してくるの。
恋愛経験ゼロの私に!」
「だから言ってあげたの。
”女は度胸、当たって砕けなさい!”って」
「それってアドバイスじゃない」(由美)
「それに砕けちゃダメじゃん」(美由)
「この……」(千晴)
「「「残念美人が!」」」(全員)
「でね、その後連絡が来て——
“告白うまくいきました、付き合うことになりました、ありがとうございます!”だって」
「……それで成功すんのかい!」(美由)
「この旅行が終わったら、大学寄って南ちゃんに会いに行くの。
彼氏も紹介してくれるらしいわ。楽しみ〜」
── 高橋 千晴 ──
そう、花音はこの旅行のあとも1週間の休みをもらっている。
葉月さんの“猶予期間”。若女将になる覚悟を、ちゃんと見つめ直すため。
だから、旅行が終わったら美由と由美は帰郷するけれど、
花音は私の家でしばらく過ごす予定だ。
じゃあ……私の番ね。
「私、昔から友達少なかったの」
それはかつて花音にも話したこと。
でも今では、こうして花音だけじゃない。美由も由美もいてくれる。
「その代わり、私のこと嫌ってる人も少なかったと思う。
……私ね、誰かに嫌われるのが怖いの。違う、“誰にでも好かれていたい”の」
みんな、静かに耳を傾けてくれている。
「異性でも同性でも、親しくなると“特別”でいたくなるでしょ?
でも私、それができないの。一人にだけ好かれてるだけじゃダメなの。
だから、和也と付き合ってたときも……他の人からも好かれたくて……」
今ならわかる。あのとき、私は間違いなく和也を好きだった。
でも、どこかで“計算”してしまっていたのだ。
「だから私、誰かを本当に“愛する”って、できないの」
……言葉にすると、少しだけ泣きそうになる。
「こんな私だけど……友達でいてくれる?」
あの北海道の夜。
輪に入れずに遠巻きに見ていた自分が、ふっと蘇る。
「何言ってるの。もちろんでしょ」
「「私たち、親友だよ」」
……えっ? 親友って、私……?
胸の奥に、何かがあふれた。
涙が止まらない。
美由と由美が私を抱きしめてくれた。
そして花音も加わる。
私たちは、4人で抱き合って、笑った。
⸻
「ところで、これで終わったなんて思ってないよね?」(美由)
「ねぇ花音、ルームサービスで夜食頼もうよ。ちょっとくらいアルコールあってもいいよね?」(由美)
「いいわよ、シャンパンとサンドイッチでいい?」(花音)
えっ、今いいシーンだったよね?
このままエンディングに突入でよかったよね?
ね?
⸻
和也との初体験。
達也との関係。
仙台での内緒の逢瀬。
霞の宿での夜。
全部、全部……
吐かされました
どうしてこうなった?
【Scene20:朝の余韻とVIPツアー、慰安旅行4日目】
── 高橋 千晴 ──
ふと気づくと、日付が変わっていた。
美由も由美も、さっきまで元気だったのに、もう瞼が落ちかけている。
まあ、当然だよね。昨日も今日も、ぎっしりスケジュール詰め込んだんだもの。
「さあ、明日も早いから、もう寝るよ」
「美由と由美はベッドに行って。花音は……あっちの部屋に戻るよ」
「やだ〜、みんなと一緒に寝るぅ……」
ああもう、しょうがないな。
3人をベッドに押し込み、私は一人、隣の部屋へ移動する。
贅沢な部屋の広さが、ちょっとだけ寂しく感じる夜だった。
── 田中 由美 ──
気づいたら、花音と美由と一緒に寝てた。
千晴は……隣の部屋かな?
まだ6時過ぎだけど、昨日の説明では7時半には朝食の準備を終えておくって言ってた。
もう起きよう。
シャワーを浴びながら、昨夜の恋バナを思い出す。
私も美由も、高2の“黒歴史”を暴露しちゃったけど……
こんなふうに全部話せたの、きっと“親友”だからだよね。
そして千晴が語ってくれた、仙台での秘密の逢瀬の話。
私たちを見送ったあと、達也と会っていたなんて。
声が漏れるくらい激しかったって、自分から言う?
千晴、見た目によらず大胆なんだから。
あ、美由も起きてきた。
「先、シャワー使ってるね〜」
── 高橋 千晴 ──
6時。アラームで目が覚めた。
昨夜のことを思い出すと、布団に潜り込みたくなる。
……よくあんなことまで話したな。仙台での内緒の逢瀬、達也に襲いかかって、周りに聞こえるほど声上げたとか。
でも、あの3人と一緒だと、どんどん変われる気がする。
「親友」って言ってくれた。あの言葉に、どれだけ救われたか。
私も、誰かを本気で愛せるようになりたい。
シャワーを浴びて、花音を迎えにスイートルームへ。
⸻
スイートルームのドアを開けると、美由と由美はもう起きて、準備を始めていた。
……なのに、花音だけがまだぐっすり寝ている。
「花音も起こしてくれたって、よかったじゃない」
「「むーりー、花音ちょっとやそっとじゃ起きないもの」」
美由と由美、声を揃えて即答。
まったく、こっちが旅の幹事だってこと、分かってるのかしら。
「そうそう、ここのホテル、クリーニングサービスもやってるみたい。
朝フロントに預ければ、夕方には仕上がってるらしいよ。洗濯物たまってるでしょ? 使ってみない?」
「下着も?」
美由がちょっと恥ずかしそうに聞いてくる。
「旅先の恥は吐き捨てって言うじゃない」
ノリで押し切ったけれど、本当の意味は逆なんだよね。
旅先だからこそ、周囲に迷惑をかけないようにっていう戒めの言葉。
でも、今回は勢いで。
「わかった、ちょうどコインランドリー使いたいと思ってたけど、時間ないなって思ってたところだった」
花音を軽く引きずるようにして、支度のためにハーバールームへ移動する。
── 一ノ瀬 花音 ──
……気づいたら、千晴姉さんに引きずられていた。
わたし、全然起きなかったの?
草の時代だったら、絶対あり得ない。
でも今は、こうして安心して眠れる。
ああ、私、本当に“普通の女の子”になれたのかも。
急かされるようにシャワーを浴びて、急いで準備を進める。
化粧もして、洗濯物もまとめて……。
「洗濯物溜まっているでしょ、クリーニングに出すからまとめておいて、下着もね」
「はーい」
千晴姉さんが私の荷物を覗き込んで、ポツリ。
「……パラボラアンテナだ。ツインパラボラ……」
失礼すぎるっ! ぷんぷんっ!
── 中田 美由 ──
7時半を少し過ぎた頃、全員が集合。
花音がフロントでチェックアウトを済ませる。
ついでにクリーニングサービスの受付も。
「パラボラアンテナも洗濯できますか?」
千晴がまた妙なことを言って、フロントの人が微妙な顔してる。
「気にしないでください」って、花音がさらっと流していた。さすが。
⸻
朝食はホテルのビュッフェ。豪華すぎる。
……カロリーの暴力。
どれも美味しくて、止まらない。
これ、胸に行かないかな? ……いや、分かってる。お腹だよね、まず。
⸻
9時、いよいよ今日のメインイベント。
ディズニーシーのVIPツアー、スタート!
── 田中 由美 ──
VIPって名前、伊達じゃなかった。
昨日のランドもすごかったけど、今日はそれ以上。
専属のガイドさんがついて、園内を案内しながら裏話も教えてくれて──
ライドは待ち時間ゼロ。ショーも最前列。
お昼は軽食で済ませて、15時までたっぷり満喫した。
……これ、マジでいくら?
えっ、ホテル2部屋とVIPツアーで約120万円?
うん、聞かなかったことにしよう。
ていうか、昨日千晴が言ってた「予算200万」って、冗談じゃなかったんだ。
花音……何者?
そういえば、前に言ってたっけ。
「東京から郡山の定期券、1年間分買ってた」とか。
ほんと、レベチだよ、この人。
⸻
ツアーが終わった後は、ちょっとお茶して一息。
17時からは、今日のディナー!
── 一ノ瀬 花音 ──
S.S.コロンビア号という、豪華客船を模した建物の中でのフレンチコース。
正直、味そのものは超一流ってわけじゃない。
でも、今までで一番美味しいって感じた。
きっとこの空気、この時間、この仲間が、料理を引き立ててくれてるんだと思う。
宿の体験も、きっとそう。
千晴姉さんが提案してくれた「別館の木造風改装案」。
あれ、大正解だと思う。
「やっぱり千晴姉さんって、すごい……!」
思わず口に出していたら、
「だから、それは達也の案だってば! なんでも私の手柄にしないで〜!」
……なぜか、涙目で訴えられた。
── 高橋 千晴 ──
コースを食べ終え、ゆっくりしていると、そろそろ夜のショーの時間。
「どうする? 昨日見たショー、今日も観る?」
「昨日の体験が最高すぎたから、今日はいいよ」
みんなの答えに、少し安堵した。
ホテルへ戻り、荷物とクリーニングを受け取り、ディズニーシーに別れを告げる。
──夢の世界、ありがとう。
次の目的地は「大江戸温泉物語・浦安万華郷」。
大型タクシーで直行。
「ここはね、温泉施設よ。水着ゾーンもあって、遊べるの」
「その名前で温泉じゃなかったら詐欺だよ〜」と由美。
「別の宿に泊まろうかとも思ったのだけれども、この個室部屋で見せたいものがあるの。だから、今晩はここに泊まることにしたの。」
「へぇ〜楽しみ!」と素直に笑う美由が、今日もかわいい。
タクシーはやがて、目的地へ到着した。
【Scene21:源泉とお勉強、慰安旅行4日目】
── 高橋 千晴 ──
「大江戸温泉物語・浦安万華郷」に到着した。
外観は、木造建築を模した和風の建屋。まさに“和のテーマパーク”という趣。
「これ、本当は木造じゃないんだよね」
花音がぽつりと呟いた。
「そう。これが“木造風の意匠”ってやつ。今回ここに来た理由の一つよ。
ただ、新別館に施すのは、こういうテーマパーク的なものじゃなくて、もっと本格的で洗練されたデザインにする予定だけど」
今回は二部屋の個室を予約してある。
案内された部屋は、二人でぎりぎりの広さ。
「へぇ、渋い和室って感じで私は好きだな」
由美がすかさずフォローしてくれる。
「今日は恋バナ、お休みかな〜?」
美由が笑う。“お休み”ってことは、また続きをやる気ね。
「じゃあ荷物を置いたら、大浴場に行きましょう」
⸻
受付で浴衣とタオルを受け取り、みんなで並んで体を洗ったあと、露天風呂へ。
そこは日本庭園の池を模した、風情ある作りだった。
「こういう演出も面白いわね」
花音が感心している。
「霞の宿みたいな老舗には合わないかもだけど、新館だけこういう演出だったら“アリ”かも」
由美の分析も鋭い。
「舐めてみてくれる?」
「はーい。ちょっとしょっぱいけど、ラクーアほどじゃないね」
美由のノリの良さに、思わず笑ってしまう。ほんと、みんな大好き。
「ここの塩分濃度は0.3%。ラクーアは2.4%だったから、だいたい10分の1くらい」
「黒湯は塩分なかったし、温泉って場所によって全然違うんだね。
……たしか、関東ローム層とその隙間に溜まった海水だっけ?」
「そう。地層の厚さや埋まった年代が違うと、閉じ込められてる水の成分も違ってくる。
南に行くほど塩分濃度が高い傾向があるけど、ラクーアは中央寄りなのに高濃度で、
逆に南にある大田区は黒湯が出る。不思議よね、温泉って」
⸻
薬草風呂やワイン風呂も楽しみ、部屋に戻ったあと。
私はみんなを狭い一室に集めて言った。
「もう一つ、見せたいものがあるの」
部屋の奥にある小さな縁側。その先の窓を開けると、家族風呂があった。
「へぇ、風情あるね。でもお湯が入ってない?」
「ここは、自分で湯を入れるの」
錆びた蛇口をひねると、音を立てて湯が流れ始めた。
「また舐めてみて」
「うん、さっきよりちょっと塩辛い気がする」
「正解。この個室風呂だけ、源泉かけ流し。他の湯は全部加水・加温。
今どき“源泉かけ流し”って、それだけで“売り”になるくらい、珍しいのよ」
「……でも、出てる湯、冷たくない?」
「湧出温度は30.6度。だからそのままだと入れないの」
「でも加温装置は見当たらないけど……」
「はい、こっち」
私はもう一つの蛇口をひねった。
「あっつ! お湯だ!」
「これと源泉を混ぜて、好みの温度にするってわけ」
「へぇ〜。でも、冷たいのに“温泉”って言えるの?」
「日本の温泉法では、成分が一定量含まれていれば、冷たくても“温泉”と呼べるの。
逆に、成分が少なくても高温なら、それも“温泉”。
どっちも足りなければ“ただの地下水”」
「なるほどね……」
「ちなみに、昔は“温泉”と名乗れていたのに、法改正で“天然水風呂”に変えた施設もあるのよ」
「へぇ〜、初耳!」
「じゃあ、せっかくだし──入り比べてみようよ!」
「えっ、30度台って冷たいよ?」
「無理だったら、加温のほうにだけ入ればいいじゃん」
「源泉の勢い弱いから、溜まるまで時間かかるかも」
「私、隣の部屋のもセットしてくる!」
「じゃあその間、夜食タイムにしよっか」
⸻
タクシーに乗る前、駅の売店で買っておいた夜食を広げる。
「アルコール欲しい人いる? 売店もう閉まりそうだけど」
「今日はいいかな〜」
「ねぇ……恋バナの続き、してもいい?」
「もうネタないってば〜!」
「じゃあ、美由と由美の元彼って今どうしてるの?」
「高2の時の彼は、噂が広がって居づらくなって、転校した」
「「ざまあみろ!」」
「高3の彼は、美容師目指して上京して、そのまま修行中。
独立したら迎えに来るって言ってたけど……ないない。仲居始めた時点で自然消滅よ」
「私の彼は仙台の専門学校に進んで、そのまま就職。
何度か会いに行ったけど、やっぱり自然消滅ね」
「「遠距離恋愛って、やっぱ無理よね」」
⸻
「そろそろ溜まったかな?」
何度も確認していた美由が、ようやく呼びに来た。
「半分くらい溜まったよ。誰か試してみる?」
「「「美由、どうぞ」」」
満場一致。
「えぇぇ〜!? 脱ぐところ見られるの恥ずかしい〜!」
今さらだけど、私たちは背を向けてあげる。
「じゃあ、いくね……冷たっっっ!!!」
美由は即座に飛び出してきた。
涙目で熱いシャワーを浴び、
下着もつけずに浴衣を体に巻き、
隣の加温風呂にダイブしていった。
⸻
そのあとは静かに布団を敷いて、おやすみなさい。
「ねえ! 私まだお風呂入ってるんだけど!!」
……美由のことは、放置しておきましょう。
今回のお話はいかがでしたか。
大きな事件はありませんでしたが、
千晴にとっては、とても大きな一歩だったのかもしれません。
奪うでもなく、競うでもなく、
無理に入り込むでもなく。
ただ自然に、そこにいていいと思える場所。
千晴がその感覚に触れられたことを、
どう感じられたでしょうか。
よろしければ、感想やリアクションをいただけると嬉しいです。
次回、
慰安旅行、最終日。
支配人との出会いも、
水着ゾーンの大騒ぎも、
すべては前振りにすぎない。
本番は──恋バナ。
元カレ。
姉の初恋。
現カノ。
そして“純潔宣言”。
交錯する想いは、もう誤魔化せない。
笑っていたはずの女子旅は、
いつの間にか“恋愛戦線”へ突入する。
乙女の行動力は、
時に理屈も順番も踏み越える。
慰安旅行編、ついに決着。




