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三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow


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【第05話-07】四人の少女-寄り添うという選択

ひと区切りついたはずの旅は、

気づけば次の扉を開いている。


温泉も、夜景も、

笑い声も、からかいも。


けれどその裏で、

静かに進む計画がある。


これは、ただの慰安旅行ではない。


再始動の物語が始まった

【Scene13:再始動の約束】


── 高橋 千晴 ──


東京に戻ると、氷室設計事務所にアポイントを取った。

「すぐに時間を取りますよ」と言われたので、急ぎ庄蔵さんに連絡し、旧別館の図面資料を用意してもらった。


応接室に通されると、久々の再会に氷室氏は懐かしげな笑みを浮かべた。


「ご無沙汰しております、林さん」

「新別館の建築ではお世話になります」

庄蔵さんが手土産を差し出しながら頭を下げる。


「高橋さんもさらにお美しくなられて……恋でもなさってるのかな?」

「いえ、そんな……」


思わず視線が泳ぐ。図星すぎる。


「うちの娘も高校一年生になりましてね、だいぶ綺麗になったと思うんですが、まだまだ高橋さんには及ばない」

──それ、親バカ? それとも私を持ち上げてるの? コメントに困るんですけど。


「そうですか。宿にいらしたときは中学二年生でしたね。今度はぜひ、ゆっくりお話してみたいです」

当たり障りなくかわしておく。


そこへ庄蔵さんが本題を切り出した。


「さっそくですが、今回も霞の宿に関する件です。前回お話ししていた仲居寮の件ではありません」


「ほう、では?」

「来月、霞の宿にて『新別館建設発表記者会見』を実施します。ぜひ氷室様にもご出席いただきたいのです」


「なるほど、いま話題の“霞の里”での公式発表会……弊社にとっても大きなPRになります。ざっと250万相当の広告効果になりますね。喜んで出席させていただきますよ」


「ありがとうございます。詳細は追ってお送りします」


私も切り出す。


「実はもう一件、お話があります」

私は旧別館の“木造風意匠”への変更案を伝えた。技術的な話は省き、あくまでアイデアの意図と狙いだけ。


「……それは面白い発想ですね。新別館には私から提案しましたが、旧別館にまで意匠を拡張するとは。これはどなたのアイデアで?」


「私の大学の経済学部の准教授です。私の指導教員でもあります」

──あえて名前までは伏せておく。


氷室氏の目が一瞬鋭くなる。どうやら何かを察した様子だった。


「わかりました。ぜひ弊社にお任せください。旧別館の図面は?」

「はい、なにせ築50年以上の建屋ですので、紙の図面しか残っておりませんが」

庄蔵さんが分厚い図面束を手渡す。


「……ふむ。古いが精緻な設計ですね。当時としては高度な耐震基準を満たしていると見ていい。基礎もほとんど手を加える必要はありません。これなら意匠に注力できます。期間と予算は?」


「改装期間は一年を予定しています。ただし延長も視野に。予算も、銀行へ多めに提出しています」


「なるほど、では早急に詳細設計に入りましょう」


「お待ちください。新別館の着工はまもなくですが、旧別館の改装はそれが軌道に乗った後。着手は3年後の春以降になります」


「構いませんよ。設計だけでも早めに着手すれば、工期短縮にもつながりますからね。正式契約はあとで大丈夫です」


そして、彼は一つだけ条件を提示した。


「ただし、ひとつお願いがあります。来月の記者会見、司会進行を高橋さんが務めていただけませんか?」


「……え?」


「あなたのようにお美しい方が司会をすれば、それだけで映像映えします。世界中で注目されるでしょう。

そんな中で弊社の名前が出れば、広告効果は800万相当には行くでしょう。さらにSNSでも話題になれば、1500万相当にも跳ね上がりますよ」


──だから、なんなの、この私への過剰な期待感は……。



大学に戻ると、達也に記者会見の件を相談した。

本来この時期、4年生は卒論で忙しいはずだった。でも私は達也の指導のもと、霞の宿での活動をまとめて十分仕上げていたし、教授への提出は新別館の記者会見後に提出することにしていた。だから今は、少しだけ余裕がある。


「それは……俺には専門外だな。去年のプレゼン指導担当に頼むって手もあるが、やや畑違いだ」


彼は少し考え込み、ぽつりと言った。


「准教授連中に声をかけて、適任を探してみるよ」


しかし、私は自分の美少女ぶりを甘く見ていたらしい。

達也がうっかり私の名前を出してしまったことで、

“大学随一の美少女”の指導権を巡る、准教授間の争奪戦が始まってしまった。


──もともと達也が私を占有していると嫉妬の目で見られていたなかで、この件。

各学部の准教授たちによる、壮絶な「千晴指導権」争いが勃発したという。


……学食ランチチケットの山が達也のもとに届いたらしい。完全に賄賂である。


それでも達也は冷静に選んだ。

選ばれたのは、社会学部メディア情報学科の准教授。冷静沈着で教育熱心な人物だ。


……練習開始。


と思ったら──その矢先に、花音たちから連絡が入った。


『4泊5日の慰安旅行、行くよ! 千晴も当然、参加でしょ!』


──出鼻、くじかれた。


でも、ちょっとだけ安心してる私もいる。

この数日で、また自分の軸が少しだけ強くなった気がしたから。



【Scene14:黒湯と展望台、慰安旅行1日目】


── 中田 美由 ──


ついに来た!

四泊五日の慰安旅行、私たちの東京大冒険!


でも私たち、東京のこと全然知らないから、旅行プランは千晴任せ。

それで、事前に3人で「行ってみたい場所」だけピックアップして伝えたの。


「まず黒湯ね、絶対入ってみたい!」


「それと、前回は都内じゃないって理由で除外された“横浜ランドマークタワーの展望台”行きたい!」

由美が言い出して、私はうなずく。

煙と何とかは高いところが好きって言うけど、いいじゃない、見たいものは見たい!


「せっかく横浜行くなら、中華街で食べ歩きも!」って私が提案して、

花音はちょっと照れながら「……ディズニーランドとディズニーシーにも行ってみたい」って。


良いね! まさに王道コース!


千晴に伝えたら――


「あなたたち、慰安旅行の意味わかってる? 全力で疲れに行ってない?」

呆れられたけど……それでいいんだよ



── 田中 由美 ──


ディズニーシー、初めてなんだ! 楽しみ!


ランドマークタワーも夜景が綺麗らしいし。

中華街も調べておかないと、食べるもの決めきれない!



── 一ノ瀬 花音 ──


まさか自分がディズニーに行く日が来るなんて。

でも……美由と由美が一緒なら、なんでも楽しめそう。


母は「自由に生きてほしい」って言うけれど、私はもう十分自由にさせてもらってます。

……この2人がいれば、それでいい。


── 高橋 千晴 ──


はいはい、厄介な要望をありがとう……。

今回も私が全日程を組んで、ホテルもすべて予約済み。


ディズニーのチケットも平日だったから、なんとか日付指定券を確保できた。


今回も予算は宿持ち。



旅行当日、3人は朝10時に東京駅に着いた。

郡山までは車で送ってもらったって?それでも 寮を出たの朝7時じゃない? パワフルすぎる……。


このひと月は本当に怒涛だった。

月初:大学+視察旅行の調整+アポ取り

第二週:北海道視察→そのまま達也と里へ→会議参加

第三週:大学+氷室設計事務所訪問+メディア情報学科准教授との面談

第四週:卒論仕上げ+ 花音たちの慰安旅行調整

今週:花音たちの慰安旅行(今日から五日間)


……本当、私が慰安旅行に行きたい。


でもまあ、この2週間は達也にいっぱい可愛がってもらったし、いいかな。


── 中田 美由 ──


「千晴、おひさ〜!」


「全然“おひさ”じゃないわよ、先週会ったじゃない」


「だからお土産はないよ〜!」


「いらないわよっ」


「ねぇねぇ、“達也”とはちゃんとお別れの挨拶した?」


「うるさいわね、1週間位会わない事くらい有るわよ」


”くらい有るわよ”って事は、逆に言うと普段は1週間会わない事は無いって事よね〜


「でも北海道旅行の最終日、私たち追い払って待ち合わせしてたよね〜?」


あ、赤くなってる。かわいい~!



在来線を乗り継いで下町の駅に到着。

駅名は……“雑色”? なんて読むの?


「“ぞうしき”よ。難読駅の一つね」

さすが千晴、チョー有能!


商店街を抜けて住宅街の中に佇む温泉施設――それが今日の目的地「ヌーランド」。


「街の銭湯って感じだね」


「でも結構広いね。2階もあるみたいだよ」


「1階は銭湯で、2階は休憩所って構造ね。ネットで調べたの。黒湯温泉でのんびりするなら、ここが評判よ」


「チョー有能〜!」


「ところで、“ヌーランド”って、何で“ヌー”なの?」


「私も気になって調べてみたけど

銭湯再生プロジェクトの一環で、昔“ニュー銭湯”と呼ばれてたものを“ヌー”にした説と

ヌードランドの省略系って説が有るみたい」


「普通考えたら、前者だけれども、事実は以外と後者って事が・・・」



スーツケースはホテルへ先に送ってあるので、手荷物だけで「手ぶらセット」購入。

タオルと館内着つき。替えの下着がないのが残念だけど、1回くらい我慢するか。


脱衣所で服を脱ぎ、浴場に入ると――


「わ、マジ真っ黒!」


「これが黒湯……思ったよりすごいね……」


湯船に足を入れた瞬間、自分の脚が視界から消えた。

透明度は……3センチもないんじゃない?

肩までしっかり浸かると、自分のバストトップすら見えない。


……浮かんで沈まない花音を除いて、ね!


「外湯もあるみたい、行ってみようよ!」


白い肌の美女4人が全裸で並んで歩く図……そりゃ注目の的になるよね。

花音のおっぱい、すごすぎ。

目が離せないおばさま・おばあさま、敵意むき出しの若い女性たち……その気持ち、わかる。


── 高橋 千晴 ──


そうそう、外湯といえば──。

この施設、ひとつだけ“罠”があると、事前に読んだブログに書いてあった。


湯の透明度が低すぎて、湯船の中の段差がまったく見えないという。

確かに、そういった注意書きも見当たらない。

「これは不親切ね……」と内心思っていたら、3人に声をかけるのが遅れてしまった。


「きゃっ!」


花音が体勢を崩す。──危ない、転んだら怪我する……!


そう思った瞬間、彼女は信じられない動きで体勢を立て直した。

まるで、水中でバランスを失ったことすらなかったかのように。

私たちは心配よりも、先に“あり得ないものを見た”衝撃で言葉を失った。


我に返った私は、慌てて声をかけた。


「だっ、大丈夫?」


「どんな体勢からも反撃できるように訓練されてるから、問題ない」


さらりとした口調、まるで感情が抜け落ちたような言い回し。

初対面の日の、あの異様な空気を思い出す。

──よっぽど怖かったのだろう。


次の瞬間、花音は湯の中で顔を伏せるようにして、ぽつりと泣いた。


「怖かったよぉ……」


けれど、それはいかにも“泣いてみせた”とわかる演技だった。

私たちに通じないとわかると、すぐに泣き止んだ。


……相変わらず、ドジなのに器用な子だ。



温泉とサウナを満喫した私たちは、2階のお食事処へ。


「今日はここで昼食にしましょう」


料理は意外に本格的で、味も良かった。


ふと、背後のテーブルから聞こえた言葉に耳が止まる。


「『Genealogical Variants in Literary Manuscripts: A Bioinformatic Approach to Scribal Lineage Reconstruction』……覚えなよ、いい加減」


「無理無理、そんな長い英語……」


……今の、花音の論文タイトルだったわね?


ちらりと見やると、高校生くらいのカップル。

男の子がスマホと紙を照らし合わせながら、一生懸命英文を読んでいる。


「あれ、原文で読んでるのかしら?」


「話しかけてみたら?」


「……やめておくわ。目立ちたくないもの」


「じゃあ、休憩室で一休みしましょ」

今の花音は高校生男子には目の毒だから、早めに退散しましょう。


── 中田 美由 ──


休憩所へ移動する途中、ふと気になって振り返ると――

その高校生カップルがこちらを見ていた。


イケメンと美少女。こっちもこっちで、すごいカップル!


「千紗、何見てるの?」


「晴道は気にしなくていいの」


あ〜なるほど。警戒モード発動中ってわけね。

あの2人(千晴&花音)を見たら、そりゃそうなるよね。圧、あるもん。


── 如月 千紗 ──


甘えん坊、ぶりっ子、ロリ巨乳(予定)、絶世美少女・千紗ちゃんは晴道を連れて温泉に来ているよ

せっかく晴道の疲れを癒すために黒湯温泉に連れてきたのに……

なぜかこの人、論文持参で来てる。ぷんすか。


しかもお食事処で、見たことない超美女たちと遭遇。

あの、巨乳の……やばすぎない?


私の晴道が持ってかれたら大変!


「千紗、何見てるの?」


「晴道は気にしなくていいの」



── 高橋 千晴 ──


休憩室にはリクライニングチェアがずらり。

静かな空間で、花音と美由はすぐに寝てしまった。


由美は本棚の漫画に夢中。


──こんなゆっくりした時間、久しぶりかも。


ひと休みしてからもう一度湯に入り、施設をあとにした。


次は、横浜ランドマークタワーの展望台。


── 中田 美由 ──


来た〜〜〜っ!

ランドマークタワー展望台!


夜景、すごっっ……!

前回都内じゃないって諦めてたけど、やっぱり来てよかった!


レストランで夕食を済ませて、夜は近くのラグジュアリーホテルへ。

荷物も届いてた。完璧!


「今日はもう寝るよ〜」って千晴が言ったけど……


「ねぇ千晴、達也さんってどんな人〜?」


そう簡単に寝かせるわけないでしょ♪


──そして、慰安旅行1日目の夜は、ゆっくりと更けていった。


【Scene15:中華街と岩盤浴、慰安旅行2日目】


── 中田 美由 ──


ホテルで朝はゆっくり起きて、体力温存。

朝食も付いていないプランだったから、持ち込みの軽食で簡単に済ませた。


地下鉄に乗って数駅、元町・中華街駅へ。


そう、今日の目的は中華街での食べ歩き。

……とはいえ、まだお店も空いてないから、まずは山下公園でお散歩!


── 田中 由美 ──


海だ〜〜〜!

山奥育ちだから、こういう景色って本当に珍しいの。

海風って気持ちいい〜!


公園を散歩って……なんかおしゃれ〜って思ってたら――


「あの、由美さんじゃないですか! ファンです、こんなところで会えるなんて、感激です!!」


……って、普通こういうのってオタク系男子でしょ?

なのに、可愛らしい女の子だった。


「一緒に写真、いいですか!?」

「うん、いいよ。千晴、撮ってくれない?」


── 中田 美由 ──


そうなのよねぇ。

由美って、意外と女の子ウケがいいのよ。

可愛らしいもんね。


で、私の場合はというと……


「美由さんだ!!」

「美由さんだ!!」

「美由さんだ!!」


……いかにもって感じの男子たちが、遠くからこちらを凝視。

オタク系男子って奥手なのよね。分かってるけど。


── 一ノ瀬 花音 ──


……べ、別に、羨ましくなんてないからね?


「もう良い時間になったし、中華街に行きましょう!」


肉まん食べたいし、小籠包も。北京ダックも。


……そんなに食べて、栄養全部胸に行ってるんでしょって?

そんなことないもんっ!ぷんぷん!


── 中田 美由 ──


いや、誰が見てもそうだって。

ほら、千晴なんてタピオカドリンクしか飲んでないし。


── 高橋 千晴 ──


……花音、今朝の私の説明聞いてた?

この後の昼食は中華食べ放題なのよ? 今からそんなに食べてどうするの?


そういえば、さっきから由美が静かだなと思ったら……

口いっぱいに何か詰めてた。


── 田中 由美 ──


だって、美味しそうなんだもん。

……喋れないから、心の中で弁明するよ。


それにしても、同じ“食いしん坊キャラ”でも――

この格差はなんなんだろう……って、何の話かは聞かないで!


── 高橋 千晴 ──


花音と由美の買い食いをなんとか制止しつつ、中華街をしばらくぶらぶら歩いて――

そろそろ頃合い。


「このお店、北京ダックが食べ放題メニューに含まれてるのが売りなのよ」


「えっ、北京ダックってパリパリの皮しか食べないでしょ? 中の身はどうなるの?」

由美の疑問も当然。


「他の料理に流用するそうよ。さすがに捨てたりはしないわよ」


「じゃあ遠慮なく注文できるね!」


……と、花音と由美の食いしん坊コンビが燃えている。


いや、時間無制限とはいえ、2時間くらい食べ続けてない?


摂取カロリー――

花音は全部おっぱいに行くとして、

由美の場合は……どこに行くのよ。全身スレンダータイプなのに。



そんな感じでお腹いっぱいになったあとは、ゆっくりと都内へ移動。


本日の温泉は、後楽園の「Spa LaQua」へ。

フロントで荷物を預けて、さっそく入館。


「みんな、明日・明後日はハードだから、今日はゆっくり体を休めるんだよ」


── 中田 美由 ──


うわぁ、都会のど真ん中にこんな温泉施設があるなんて!

しかもラグジュアリーでおしゃれ!


昨日の「ヌーランド」とは真逆の世界だね。


「ここの泉質って?」


「塩泉。地下1,700メートルから汲み上げてるらしいわ」

「深っ! うちの銀の湯と同じくらい?」

「もう少し深いかしら。関東平野って、深く掘ると塩泉が出やすいのよ。

 関東ローム層と、その下の地盤の隙間に過去の海水が閉じ込められてるの」


「じゃあ、昨日の黒湯も?」


「原理は似てるけど、成分は場所でかなり違うのよ。

 それが温泉の面白いところね。

 ほら、うちの宿でも敷地内で3種類、全然違う泉質が出てるでしょ」


花音も口を挟んでくる。……確かに、温泉って奥が深い。


「舐めてみたら?」

千晴が、なんか企んでそうな顔で言う。


……乗ってあげようか。


「しょっぱっ!!」


「でしょ?ここの塩分濃度は2.4%あるの。

 海水が約3.5%だから、それには届かないけど、温泉としては全国でもここより塩分濃い湯って10カ所あるかどうかってレベルよ」


「ありがとう千晴! 私が『珍しい温泉に入りたい』って言ったから、ここ選んでくれたんだよね?」


「どういたしまして。

 ここは霞の宿とは真逆の“都市型スパ施設”。

 北海道視察では老舗旅館ばかり回ったから、違う方向性も参考になるかなと思って」


「うん、すごく参考になったわ」

花音も感慨深そうに頷く。


「やっぱ千晴、チョー有能!」


「またそれ……」


── 田中 由美 ──


千晴に誘われて、別料金の岩盤浴コーナーにも行ってみた。


南国風の休憩エリアに、数種類の岩盤浴。

「「私、岩盤浴って初めて!」」

美由と声が揃っちゃった。


狙ってる?ってよく言われるけど、自然とそうなっちゃうんだよね。

なんでだろう。


「私は、以前千晴姉さんに連れられて行ったスーパー銭湯で体験したことがあるわ」

花音も、そんなに経験はないって。


「都内のスーパー銭湯では岩盤浴ってほぼ必須だけど、地方ではそんなに設置されてないのかもね」

と千晴も言う


汗かいて、気持ちいい……。


女性専用コーナーもあるし、花音でも安心して使える。


あれ?ここには浴室ないんだ。

サウナと違って、お風呂と交互に入るわけじゃないんだね。


汗ばんだ体をリクライニングチェアでじんわり冷まして……

この感覚、クセになりそう。


── 一ノ瀬 花音 ──


湯で汗を流して、リラックスルームへ。


見渡す限り……というのは大げさかもしれないけれど、

フロアいっぱいにリクライニングチェアが並んでいて、

みんな思い思いにリラックスしていた。


温泉に、こういう癒しの形もあるのね。


霞の宿にこういうコーナーを作ることはないかもしれないけど、

「こういう方向性もあるんだ」って思えたのは、いい経験。


── 高橋 千晴 ──


夕食も施設内のレストランで済ませて――


「ねぇ千晴、もしかして今日はここに泊まるの?」


美由が聞いてきた。


「そうよ。ベッドは無いけど、リクライニングチェアにブランケットで充分寝られるでしょ?

女性専用のリクライニングエリアもあるし、さっきの岩盤浴エリアも深夜は女性専用の休憩所になるの。

花音がノーブラでも安心よ」


「ははっ、さっき岩盤浴で男性客めっちゃ見てたもんね」


「流石に……汗だくなのに、ブラつけていられないです……」


「明日は朝早いから、今日はしっかり休むのよ。1日ディズニー・シーで遊ぶんだから!」


「「「はーい!」」」


3人揃って元気な返事。


そのおかげか――今夜は、昨晩みたいに色々聞かれずに済んだ。


3人娘は、岩盤浴の疲れと昨日からの移動疲れで早々に寝てしまった。


私も、そろそろ……。

疲れてるし、早く寝よう。


30エピソードまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。


面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


まだまだ物語は続きます。

これからもよろしくお願いいたします。



次回、

動き出した過去。


偶然か、必然か。

再び交差する、かつての名前。


善意と嫉妬。

理性と衝動。

そして――選べない感情。


慰安旅行の裏で、

もう一つの物語が加速する。


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