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3人のヒロインとシェアハウス生活、告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow


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10/13

【第03話-08】何度負けても、あなたを好きでいた ― 千紗が選んだ愛のかたち

※本話には、心理描写を伴う大人向け表現が含まれます。

また本作には

「大人向け要素を加筆した別バージョン」が存在します。


※感情描写重視で読みたい方は本作を、

より踏み込んだ描写を求める方はノクターン版をおすすめします。

【Scene22:奇跡の後、ふたりの家で】


晴道が鍵を開けて、誰もいない部屋に入る。


「ただいま〜」


その声に合わせて、私も一歩踏み込んだ。


「……ただいま帰りました」


いつもなら「お邪魔します」って言ってたけど、今日はあえて、そうじゃない言葉を選んだ。


廊下を抜け、リビングへ。


そこには――質素だけど温かみのある、クリスマスの飾りつけが広がっていた。派手じゃない、でも“誰かが心を込めて飾った”ってすぐわかるような、優しい空間。


テーブルには、完璧に整えられたディナーの準備。


あの夜、沙織お母様と美優お母様にお願いした“計画”の、第一章。


本番は……そこじゃない。


壁一面に貼られた、小さなカードたち。


二人のお母様に抱きしめられた、あの夜の後

私は、3人だけに真実を話した。


「……お願いがあるの。私だけじゃ絶対できないこと」


相手は、莉子・瑛美・菜摘。


3人とも、それぞれ進路もバラバラで、これから忙しくなるはずなのに――


「いいよ、任せて」


「優香も踏み込んだけれども……いや、千紗もなかなかやるじゃん」


「うん。じゃあ、私、クラスの子たちに声かけてみるね」


その言葉が、どれだけ心強かったか――


それから数日間、受験勉強の合間を縫って、3人は動いてくれた。

塾の前、皆が集まりやすい図書館、場合によっては自宅近くまで、メッセージカードを一人ひとりに手渡ししてくれて。


“晴道の為なら”って、皆が応じてくれた。


……晴道、貴方の人徳だよ。



そして――ひときわ目を引く、大きな2枚。


『お前にさ、女子二人も寄り添ってるの見ててちょっとだけ悔しかった。……いや、“ちょっとだけ”な。

でもそれを言ったところで、俺の気持ちなんて何にも変わらないし、

お前が悩んでるって聞いて、そんなのどうでもよくなった。

お前がつらそうなの、見てらんねぇよ。

ムカつくぐらい良い奴だし、俺が断言する。

お前はちゃんと、愛されてる。俺にまでな。

お前の大親友 高村武』

『何よ何よ、千紗にばっかり頼って

私が頼りにならないと思ってるの?

晴道のこと好きだって気持ちは千紗に負けないんだからね

大学受験が終わったら、あんたの悩みなんて

私が一発で解消してあげるんだから

あなたのこと、愛してる 氷室優香より』


その他にも、たくさんの手書きのメッセージが並んでいた。


『今度カラオケオールやろうよ! 岸本瑛美&佐伯菜摘』

『あなたとは直接付き合いはあんまりないけど、優香を見てれば、あんたがいい奴だってわかる 早乙女莉子』

『ずっとずっと好きでした(匿名希望/千紗怖い)』

『あなたと同じ高校に行きたくて、この学校を選んだんだ 里塚由美子』

『……貴方との思い出を胸に卒業します 武内美奈子』

『晴道のモノマネで文化祭乗り切った思い出、今でも感謝してる(笑) — 篠原潤』

『2年の時から、密かに“隣の席になったら告白する”って決めてたけど、2年間一度も隣にならなかった — 運命に負けた女子より』

『図書室で一緒に当番してた時、ほとんど話さなかったけど、お前が書いたPOP紹介文、めっちゃ好きだったよ。地味だけど、俺はああいうとこ尊敬してた。— 宮下達郎』


中にはちょっとした告白だったり、重すぎる恋文だったり、思わず笑ってしまうものもあったけど――


晴道が、それらを一枚ずつ、丁寧に読んでいく。


私は少し離れて見守っていた。笑ったり、目を伏せたり、驚いたりする彼の顔が、少しずつほどけていく。


そして――


「そっか、俺……みんなに、こんなに愛されてたんだな……」


潤んだ目で、静かに言った。


「なんか、“俺なんかが”って思ってたの、すげぇ皆に失礼だったな……」


私は、思わず彼の手を握った。


「……晴道、ちゃんと気づけてよかったね」



その後、ディナータイム。


丸ごと焼かれたチキン。串を抜くと、綺麗に切り分けられて食べやすい。あれ、美優お母様がやったのかな?


ローストビーフは絶品。ソースもきっと手作りだ。パンも焼きたてで香ばしい。


「ねぇ、私ちょっと一度降りて、着替えてくるね。……この格好のままで片付けってわけにもいかないし。ついでにシャワーも浴びてくるから、晴道も」


「うん……俺も、そうするよ」



自宅の扉を開けると、美優お母様が笑って迎えてくれた。


「おかえりなさい。チキン、美味しかったでしょ?」


「うん、最高だった。あれもしかして……」


「ふふ。私が焼いたのよ。ローストビーフもね」


(お母様には敵わないや)


「通い妻してるくらいじゃ、まだまだ私には勝てないわよ?」


「また、思考読んでるし……!」


軽口を交わしながら、シャワーへ。


下着も新しいものに。部屋着は――


(ちょっとした“勝負服”だった。白地に淡いピンクのフリル付きルームワンピ、胸元が少し開いてて、ウエストは細リボン。ふわっと揺れる素材が、気持ちまで柔らかくしてくれる 筈だったのに、緊張に心が重くてなっていくのが判る)


着替え終わった時、お母様がそっと言った。


「お泊まりセットは、晴道くんのお部屋に置いてあるわ。あれも入ってるから」


あれ、って何よ!!

沙織お母様とのあの夜の会話を思い出す

---

「私はね、晴道と千紗ちゃんのこと、信用してるから」

「ちゃんと避妊はしてくれるって!」

---

二人とも、もう少し乙女の決心ってものを・・・


「あと、シーツ汚しちゃったら、こっそり持って帰ってきなさい。洗濯と乾燥、うちでやっちゃうから」


「お母様っ!! 今のはさすがにデリカシーが!」


「うふふ、それでこそ私の可愛い千紗よ」


私は思わず笑ってしまった。


……さっきまでの緊張がすっかりほぐれていた


「ありがとう、美優お母様。行ってきます」


そして、私はドアを開ける。


――これから、私にとって“特別な夜”が始まる。



【Scene23:唯一無二の夜、そしてその先へ】


ルームワンピの上に軽く羽織ったショートコートを整え、私は静かに小泉家への道を歩いていた。頬に触れる風は冷たいけれど、心の奥にはぽっと灯る火がある。


(行ってきます――)


そう心の中で呟いた、その瞬間。


「……っ!」


目の前の家のドアが、不意に開いた。


氷室家。そこから姿を見せたのは、優香だった。


「頑張ってね。でも、私は負けないから」


それだけを言い残し、彼女は踵を返す。けれど、私は咄嗟に声をかけていた。


「優香……メッセージカード、ありがとう。晴道の心に、ちゃんと届いたよ」


彼女は一瞬だけ立ち止まり、そして振り返らずに言った。


「別に、千紗のために書いたわけじゃないわよ」


それでも、ありがとう。


扉が静かに閉まり、私は深く息をついてから、小泉家のチャイムを鳴らずに扉を開けた。


「お帰り」


「うん、ただいま」


優しい声に迎えられて、玄関をくぐる。リビングへ向かう途中、私は羽織っていた上着を脱いだ。


「はっ……うっ」


小さな悲鳴のような声が、晴道の口から漏れた。


(あっれ〜、セクシーすぎたかなぁ……)


今日は、もう“キャラ”なんて作らない。全部、素の私で――そう決めたのに。


緊張のせいでよく見えていなかったけど、晴道のルームウェアも――妙に、色気がある。


淡いグレーのニット地。柔らかそうな素材が体に馴染んでいて、胸元は深めのVネック、袖はロールアップされていて、腕のラインが露わだった。


(なにこれ……見ちゃいけない、でも見ちゃう……)


お互いに気まずくて、視線を合わせられず、ただ向かい合ったまま、同時に床を見つめていた。


……無言。


でも、ちょっとだけ笑えてしまった。


気を取り直してエプロンをつけ、夕食の後片付けを始めた。美優お母様が準備してくれた大量のタッパーにはメモがついていた。


『残ったお料理は、小泉家・如月家に均等に分けてね♡』


(うちは、お兄ちゃんにでも食べさせようかな……)


ふと、今日の朝から兄の姿を見ていないことに気づいた。


(もしかして……彼女とお泊まり? って、えっ、そしたら……えっ……えええっ!?)


そこまで想像が飛躍して、私は洗い物の途中で突然真っ赤になって、黙り込んだ。


「どうしたの?」とでも言いたげに、晴道が不思議そうな顔で私を見る。


……無理。これは口に出せない。死ぬほど恥ずかしい。


やがて片付けが終わり、晴道が丁寧にコーヒーを淹れてくれた。ミルで豆を挽き、布フィルターで一滴ずつ落とす――まるで儀式のような手つき。


「晴道の入れてくれる珈琲、美味しい」


「ありがとう」


そして、スカイツリータウンで買って帰った小さなクリスマスケーキをいただく。


もし私が黙っていたら、ホールケーキとか用意されていそうだった。下手したら、チョコのプレートに「祝・初夜♡」とか書かれていたかも……。


(その想像、やめて……!!)


食べ終わった頃、ピロンと通知音が鳴った。


「理沙ちゃんから、カフェの動画編集終わったから、共有アルバムにアップしたって」


「じゃあ……せっかくだし、一緒に見ようか」


私たちはリビングのソファに並んで座り、iPhoneからテレビに出力。


画面に映し出された動画には、エモーショナルなBGM。動画の隙間を埋めるように、静止画がコラージュのように挿し込まれていて――


(よくこんな近くで撮られてたのに、全然気づかなかった……)


──そして、プレゼント交換の場面へ。


(……プロポーズ、じゃん。完全に)


恥ずかしい。けど、どこか嬉しくて。


「俺は本気だから。この時の気持ちに、偽りも誇張もないよ」


その声に、私は息を呑んだ。


「もう一度言う。ずっと、一緒にいてくれるかい?」


「ばか……分かりきったことを聞かないの」


私は、言葉ではなくキスで応えた。


静かに溶け合う吐息。鼓動が響く。


「千紗……千紗。ごめん、俺……まだ“言葉”にできないみたいなんだ」


「晴道……」


「情けないけど……でも、行動で示すから。それで……いいかな」


「ばかばかばか、もう全部伝わってるんだから。私の全部を……受け取って。ううん、全部……奪って!」


──その夜、私は彼に運ばれた。


お姫様抱っこでベッドに下ろされ、彼の手が私の輪郭を辿っていく。溶けるような時間の中で、私は何度も何度も、彼の名前を呼んだ。


「ねぇ、もう……お願い」


その言葉を最後に、二人は一つになった。


──翌朝。


彼の腕の中で目を覚ました私は、静かな幸福に包まれていた。


(でも……まだ、完全には癒せなかった)


きっと、私だけじゃだめなんだ。彼女もいなきゃ。


それでも、この夜は確かに意味があった。


私は、心の中で小さく誓いを立てた。


──これからは、3人で。


そして、もう一度だけ彼の寝顔を見てから、私はそっと目を閉じた。


(おやすみ、晴道)


この幸せが、ずっと続きますように。


【Scene24:それでも、前を向いて】


私、如月千紗は――

ふと、記憶のまどろみから頭をもたげる。

長い追憶は、まるで夢を見ていたようだった。


6歳で彼と出会い、18歳になるまで――

私はたくさんの間違いをおかしてきた。

それで、彼をたくさん傷つけていた。


だけれども、18歳のクリスマスのあの日。

私は、彼とずっと一緒にいると誓った。

彼を支えていくと、心に決めた。


……だけど。

私は、まだ彼を癒しきれていない。

彼の心の中は、どこかが壊れたまま。


でも――私ひとりじゃなければ。

彼女たちと、力を合わせられれば。

きっと彼の心を、本当の意味で救える。


そう信じて、私は前を向く。

今日、観覧車で何が起こるかなんて、私にもわからない。

でも、きっと“何か”が変われる。そんな予感がしている。


「さぁ、そろそろ行きましょうか」

花音さんが優しく声をかける。


「そうだね、ゆっくり休めたよ」

心に傷を持った彼が、穏やかに応える。


「……」

優香は、何かを決心したような顔で立ち上がった。


私は、キャラを立ち上げる。

あざとく、可愛く、甘えん坊な“私”を。


「はーるーみーちー、観覧車、私と乗るでしょ!」

自慢の胸を、グイッと押しつけてみせる。


――自慢って言っても、花音さんには負けるんだけどさ。

でもでも、その花音さんだって、美優お母様には敵わないわけで。

……つまり、その娘の私には、まだ逆転の可能性アリ! ってことで!


私は晴道の腕にしがみついたまま、

希望を握りしめるようにして、ふたり分の一歩を踏み出した。


明日よりは第4話

花音の過去の話


またメインヒロインが登場します。

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