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3人のヒロインとシェアハウス生活、告白は観覧車のてっぺんで  作者: iron-bow


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1/13

【第01話】終わりの始まり

※本話には、心理描写を伴う大人向け表現が含まれます。



【Scene01:シェアハウス ― 幼なじみと美人非常勤講師が常駐中】


俺、小泉晴道は今、男一人、女二人でルームシェアをしている。

それは、俺たち幼なじみ三人が、同じ大学に合格したことがきっかけだった。


一緒に住んでいるのは、この二人。


如月きさらぎ 千紗ちさ

小柄で童顔、ふわふわの髪と笑顔が似合う、あざと可愛い幼なじみ。

背は低いくせに胸はやたら大きく、それを武器にして平然と誘惑してくる。

ロリ巨乳。

彼女の印象を誰に聞いても、たぶんそう答えるだろう。

自分の可愛さを120%武器にできる、ある意味計算高い女だ。


氷室ひむろ 優香ゆうか

こちらは逆に、クールビューティで通っている幼なじみ。

スタイルも良く長身。

黒髪ロングの似合う美人だが、生まれつきのドジっ子ポンコツで、「残念美人」と言われている。

ただ、そのギャップが魅力になっていて、結局のところ、みんなに愛されている。


二人は生まれたときから高校卒業まで、同じマンションに住んでいた。

幼稚園から今の大学まで、ずっと一緒の間柄だ。

俺はそこに、小学校入学直前で加わった。


そして――

なぜか、そこにいるもう一人。


一ノいちのせ 花音かのん/25歳/大学非常勤講師。

この人だけは幼なじみじゃない。

二人と卒業旅行で泊まった旅館の若女将――だったはずが、

この春から、なぜかうちの大学で非常勤講師をしている。


本人曰く、俺を追いかけて大学に来たらしい。

とんでもない行動力の塊だ。

近所の別の家に居候しているはずなのに、

気づくと、なぜかいつもこの家にいる。


控えめに言っても、花音さんはすごい美人。

そして――圧倒的に巨乳。


美少女や美人に囲まれていて羨ましい。

そう言われることは多い。

だが、そうなってしまったのだから仕方ない。


俺、もしかしたら――

ラブコメの主人公なのかもしれない。



十月のある日の夕方

俺は二階にあるリビングで、“一人”まったりしていた。


テレビでは平和な情報番組。

外は快晴。室内は快適。


貴重な静かな午後だ。

自分で淹れたコーヒーを片手に、

俺はのんびりとした時間を満喫していた。


……が。


そんな時間を、あっさりぶち壊す存在が帰ってくる。


幼なじみの千紗は、リビングに入ってくるなり、

いきなりこう言い出した。


「町内会のくじ引きで、動物公園のペアチケット当たっちゃった♪

晴道、行くでしょ? 二人っきりでデート♡

明日、創立記念日で大学休みだし」


ウィンクしながら、

右手の人差し指と中指でチケットをつまみ、胸元でひらひらさせる。


前かがみの姿勢。

左右の腕で、自慢の胸を挟んで強調する仕草。


俺は知らないが、

親世代、もしくはもう少し上の世代なら、

「だっちゅーの」なんて言葉が頭に浮かぶかもしれない。


ただでさえ深い胸の谷間が、さらに強調される。

チケットに目を向けただけで、嫌でもそこが視界に入る。


――計算し尽くされた誘惑。


これが、“あざと可愛い”ってやつだ。


そして、その数秒後。

今度は優香が帰ってくる。


「晴道、明日のお休み、何か予定入ってる?

バイト先で、動物園のペアチケットもらったの。

一緒に行かない?」


クールに決めているつもりなのかもしれないが、

明らかに顔がワクワクしている。

今にも飛び跳ねそうだった。


……あー、うん。

デートのお誘いが――ダブルブッキング。

よくあることだ。


「「えっ?」」


千紗と優香の声が、見事に重なった。

二人の間に、バチバチと火花が散り始める。


そう。

お約束ってやつだ。


そこに、花音さんの声が割り込んできた。


「えっ、なになに? 乱交の相談?」


――えっ、いつの間に?


俺、さっきまでリビングに一人でいたよね?

この人、忍者か何かじゃないかと、常々思っている。


「動物園デートの話です」


千紗が、やけに冷静な声で答える。


「花音さん、どんな耳してるんですか!」


優香が顔を赤くしてツッコミを入れる。


……うん、優香

ここはツッコじゃだめなところだよ


千紗が、冷たい目で優香を見ている。

『このポンコツ美人が』

そんな心の声が、聞こえてきそうだった。


「いやーん、ツッコまないで。

突っ込んでほしいの!」


……お約束だ。


しかしツッコミ待ちには、応えてしまう。

それが人というものだ。


「どこに、なにを!」


すると――


「「「なに今さらツッコミ入れてるの!

昨晩も、散々突っ込んだくせに!」」」


三人の声が、綺麗に揃った。


そう。

昨晩は求められるままに、

三人に代わる代わる、時には同時に……

突っ込んでしまったんだよな。


そのときの三人の艶姿が、頭をよぎる。


「ねぇ、晴道、私が最初」

「ねぇ、晴道、お願い。我慢できない」

「ねえ、晴道、早くしなさい」


……突っ込み待ちには、突っ込むしかないだろ。


――いや、ごめん。下品だった。


そんなわけで、こう見えても、

なかなか大変なのが、今の俺の青春だ。


俺が望んで、こうなったわけじゃないんだけどな。



「ねえ、この動物園、今だけ観覧車に遮光カーテンがつけられてるみたいよ。

しかも通常12分のところが、今なら倍以上の30分。

個室で30分あれば……うふふふふ」


花音さん、切り替え早い。

というか、いつの間に調べたんだ。


「何するつもりですか!」


千紗の声が響く。

それは素の声で、可愛い演技もすっかり忘れていた。


「“なに”に決まってるでしょ。三十分もあるんだから」


……花音さん、“なに”言ってるんですか。


「“なに”って、なあに?」


うん、優香は知らなくていい。


「そんな、破廉恥なことを“ヤッテ”いいと思ってるんですか!」


千紗、“ヤッテ”に妙なアクセントつけないように。


「やだ、千紗ちゃんったら。

破廉恥だなんて、何を想像したの?

私は“なに”って言っただけなんだけど?」


……花音さん、そのニヤニヤ顔だけで有罪です。


「個室で破廉恥な……きゃーー」


……うん、優香、反応遅い。


ダメだ。

俺の日常、騒がしすぎる。



そういえば、明日は水曜だった。


今はもう、取り戻せない。

喧騒から切り離されて、心から息をつける、

静かな――あの場所に行きたい。


ふと、そんなことを思ってしまった。

それはもう、できないのに。



そんな俺の様子に気づいたのか、

千紗がふっと切り替える。


「それじゃ、夕食の買い出しに行くね。

明日の計画は、夕食のあとにしよ♪

ペアチケット、二組あるんだから。

全員で行きましょ♡」


あざと可愛い演技が、見事に復活していた。


「花音さんも、食べていきますよね?」


「うん、ありがとう。

そんな千紗ちゃん、大好きよ」


花音さんはそう言って、千紗をぎゅっと抱きしめる。

それは、明日の予定と夕食、

両方まとめての意味だろう。


なんだかんだ言って、この二人は仲がいい。


「晴道と二人だけでデートしたかったのに……」


優香はまだそんなことを言っているが、

俺に選択権はない。

明日の四人でのデートは、もう決定事項だ。


「ねえ、優香も買い物手伝ってよ」


千紗が優香の腕を引っ張る。


「えー、面倒くさい……」


そう言う優香に、千紗の雷が落ちる。


「あなた、家事は当番制で交代にって話、どうなったのよ!

美沙さんに言いつけるわよ!」


「あーん、ごめんなさい!」


二人はそんなやり取りをしながら、外へ出ていった。



「晴道、大丈夫?」


ふいに、花音さんが俺を抱きしめてきた。

大きな胸に顔が埋まる。


……これは、いいものだ。


沈んでいた心が、少しずつ軽くなっていく。


「うん、ありがとう」


俺も、花音さんを抱きしめ返す。


「おっぱい、吸う?」


突然そんなことを言われて、俺は動揺した。


「なっ、なに言ってるんですか!!」


「ふふ、可愛い」


花音さんはそう言って、俺の頭を優しく撫でてくれた。


その後は、特に何も起こらず。

千紗が作ってくれた夕食をみんなでいただいて、

明日の予定を決めてから、

少し早めに就寝した。



【Scene02:静かな朝の決意 ― 可愛い顔して本気の女たち】


俺は、早朝の駅前で待たされていた。


(朝だって一緒に起きて、一緒に弁当作ってるんだから、

同じ時間に家を出られたはずだろ!?)


……とは思うものの、

女性の言うことには逆らえない。


だから、うまくいくこともあるし、

大切なものを失うこともある。


それが、俺――小泉晴道という男だ。



やがて、彼女たちがやってくる。


「まっ、待ったかしら?」

「遅くなっちゃってごめんね~」

「晴道、お待たせ~っ♪」


振り返った俺は、一瞬で言葉を失った。


三人とも、いつもと違う私服姿だった。

どれも、“狙いすました感”が全開だ。


俺の前に、三人が並ぶ。



氷室 優香


身長は俺より少し低い。

今日はパンプスだが、ヒールを履くと、俺とほぼ目線が同じになる。


黒のリブニットに、深いグリーンのマキシスカート。

スリットから太ももが不意にのぞくたび、

視線が勝手に吸い寄せられてしまう。


(優香……スタイルお化けだな。あの脚線美、反則だろ……!

全国の男子ども、知ってるか?

控えめな胸が、実は三人の中で感度最強なんだぞ!?)



一ノ瀬 花音


身長は優香より少し低い。

だが、その分――いや、それ以上に、

豊かな胸の破壊力がとんでもなく、

バランスの問題で実際よりも背が低く見えるほどだった。


今日の服は、白いブラウスにシンプルなハイウエストパンツ。

……の、はずなのに。

ブラウスのボタンの開き具合と、豊かな胸の主張が激しすぎて、

目のやり場に困る。


カーディガンで隠しているつもりかもしれないが、

むしろ「隠してる感」が、逆にセクシーすぎる。


(花音さん……その胸で前屈みはやめてください。

見ちゃうでしょ!!

全国の男子ども、知ってるか?

そう、豊かな胸の破壊力はとんでもない。

――大事なことなので二度言いました)



如月 千紗


自称155センチ。

だが俺は知っている。

実際には150センチしかないことを。


今日の服装は、白地のフリル付きオフショルワンピに、

薄ピンクのカーディガン。

ひらひら揺れる膝上スカートに、

胸元も軽く開いていて、

もはや「チラ」ではなく「チラせにきている」。


(うちの千紗、あざと可愛い全開……!

肩出し+谷間って、もう……

全国の男子ども、ロリ巨乳は正義ってこういうことだぞ。

花音さんと並ぶと目立たないけど、

実は脱がせばすごい……)



三人が並んだその光景は、

目の保養どころか、目に毒すぎた。


平日朝の駅前だというのに、

周囲のサラリーマンたちが、ちらちらとこちらを見ている。


今日は水曜。

俺はもともと講座を入れていないが、

創立記念日でもなければ、

平日に全員揃うなんて、なかなかない。


――こうして俺は、三人の美女と一緒に、

今日だけは「本当にただの動物園デート」に向かっていた。


(……いや、“三対一”って、どんなハーレムだよ)



動物公園は郊外にあるが、

路線の都合で、一度都心に出る必要がある。


通勤ラッシュで、車内は満員だった。


「あん、晴道♡」


千紗が、わざと俺に胸を押し付けてくる。

あざとい。


……が、これはいいものだ。


背後には、花音さんの胸が――。


……あれ?

優香は?


はぐれてる。

これだから残念美人は――。


……いや、違う。


よく見ると、優香の顔色が悪い。

その背後にいる男――

……痴漢か。


俺は、一瞬躊躇してしまった。


(声を上げたら、優香が恥ずかしい思いをするかも……)


だが、次の瞬間。


花音さんが、その男の腕を後ろ手にねじり上げていた。

瞬間移動したとしか思えなかった。


やっぱりこの人、忍者か超能力者なんじゃないか。


花音さんが痴漢男に向ける目は、

恐ろしく冷たく、怖かった。

俺たちの知っている花音さんじゃない。


各駅停車で、すぐに次の駅に着く。


花音さんは男を押して、ドアへ向かう。

……あれ、痴漢男、宙に浮いてないか?


花音さんは、そのまま男をドアの外へ突き放した。

男は二、三歩よろめき、尻もちをつく。


すぐにドアが閉まる。


気づくと、花音さんは優香を抱きしめていた。

その表情は、さっきとは打って変わって、

とても、とても優しかった。



その後は特に何事もなく、

別路線に乗り換え、

三十分強で動物公園の最寄り駅に到着した。


そこは、昨年の夏、

千紗と二人でプールへ行った、思い出の場所だった。



【Scene03:理性はすでに限界 ― 動物園は男子の目に危険すぎた】


首都圏郊外にある、自然豊かな動物公園。

木陰を抜ける風も心地よく、まだ人の少ない園内には、

鳥のさえずりと子どもたちの笑い声が響いている。


・千紗は、キリンに夢中で写真を撮りまくっていた。

 しゃがみ込んでカメラの角度を変えるたび、

 オフショルの服の肩がずり落ち、谷間がちらり。

 スカートの裾がふわりと揺れ、膝小僧が露わになる。


(うん、絶対わざとだよな。

 分かっていても、目を離せない)


・優香は、ペンギンの泳ぎに釘付けだ。

 柵に軽くもたれて前屈みになった拍子に、

 深めのスリットから、すらりと伸びた太ももが大胆に現れ、

 ニットの胸元も、ぐっと寄せられる形になる。


(よく胸派・尻派って言われるけど、

 優香に限って言えば――太もも派だな)


・花音は、モルモットコーナーで、

「……この子、あなたに似てる」と、なぜか俺を指差した。

 しゃがんだ拍子にカーディガンが少しはだけ、

 インナーのブラウスが持ち上がり、

 豊かな胸の輪郭が、はっきりと浮かび上がる。


(……うん。視線、外すの諦めた)



途中、ベンチで休憩しながら、女子トークが盛り上がっていた。


千紗:「動物ってさ、何考えてるんだろうね~」

優香:「たぶん、腹減ったとか、寝たいとか……」

花音:「恋愛についても、結構シビアよ? 繁殖期になると」

千紗:「ちょっと!

    それを言うなら、人間の男の子は年中繁殖期よね!」

花音:「ふふふ」


けらけらと笑い合う、三人の横顔。


(うん、ごめんなさい。

 毎晩毎晩、繁殖行為やってます。

 いや、ちゃんと着けてるぞ。何をとは言わないが)



お昼は、四人で協力して作ったお弁当を広げる。

定番の玉子焼き、唐揚げ、ウインナー、彩り野菜――

見た目も味も、文句なしだ。


千紗:「唐揚げ、うまく揚がってるでしょ!」

優香:「この玉子焼き、ほんのり甘くて美味しい」

花音:「……このウインナー、ウサギさんの形になってるわ」

晴道:「千紗作」

千紗:「やめて!

    子どもっぽいって言わないでよ~!」


弁当を囲んで、笑い合う俺たち。

どこまでも、温かくて、楽しい時間。


……こうして。


俺たちは一日、

動物と戯れて、笑って、写真を撮って、ふざけて、

歩き疲れて――


みんな、

あの日から、どこか落ち込んでいた俺のことを考えて、

誘ってくれたんだろうな。


ありがとう。



【Scene04:プリクラブースの罠 ― 千紗のあざとさ全開作戦!】


一の矢


朝から平和だった動物園デートは、

午後になって、少しずつ様相が変わり始めていた。


「はるみちーっ、こっちこっちー!」


千紗の声に誘われ、

俺は動物園内のショッピングモール併設エリアへと足を運ぶ。


そこにあったのは――

プリクラコーナーだった。


「な、なんでここに……?」


「せっかくだし、思い出作ろうよ?

ね、二人で♪」


(プリクラなんて何年ぶりだろう)


半ば強引に、千紗に手を引かれてブースの中へ。

思った以上に狭く、密着どころの話じゃない。


千紗は、背後のカーテンをピシャリと閉めた。


狭い。

近い。


しかも、今日の千紗の服装は、

白地のオフショルワンピに、膝上スカート。


肩は丸見え。

胸元には、ふわふわのフリル。

風が吹けば、一撃必殺だ。


「ちっ、千紗……見えちゃうよ……っ!」


思わず、俺は目をそらした。


「大丈夫。

肝心のところが見えてなければ、セーフだよ?」


確かに――

ストラップも見えてるし、谷間もあらわだけど、

ギリギリ“先っちょ”は隠れている。


下も、太ももは完全に露出しているけど、

パンツは……たぶん……見えてない。

たぶん。


「いや、そうじゃなくて……

外から見えちゃうんじゃ……」


「だからカーテン閉めてるんだし、

見えなきゃセーフでしょ?

……って、晴道はなに想像してたのかな〜?」


にやにやと笑いながら、

千紗はわざと前屈みになり、胸元をぐいっと開いた。


「ほらほら。

肝心な“先っちょ”、見えちゃうかもよ?」


(こいつ……本気で誘惑してきてる!?

こんな場所で、どういうつもりだ!)


千紗は、俺の腕に身体を寄せ、

上目遣いで囁く。


「……晴道。

今日の私、ちょっとだけ特別かもよ?」


俺は――

我慢するのを諦めた。


むしろ、

積極的に、その胸元をのぞき込み……。


そのとき、


「ちょっと! 千紗!」


という声が、外から響いた。


振り返ると、

そこには優香と花音が立っていた。


気まずさMAXの俺と、

ドヤ顔の千紗。


(いつも一緒にいたしてる仲なのに……

こういうところを見られると、

なんでこんなに気まずいんだ?)


俺はそんな“真理”を探求し始めていたが


――この日、

仕掛けてきたのは、千紗だけじゃなかった。



【Scene05:迷路に仕掛けた罠 ― 優香の静かな攻防】


二の矢


午後、園内の大きな迷路アトラクションにたどり着いた俺たちは、

「せっかくだし入ってみよう」と軽いノリで迷路へ足を踏み入れた。


……けれど。


「晴道、こっち来て」


気づけば俺は、優香に手を引かれ、

いつの間にか他の二人とはぐれていた。


(……なんか既視感)


迷路の細い通路を進むたび、

草の香りと、わずかな湿気が肌をなでていく。


そして辿り着いたのは――

緊急用のギブアップ通路。

細いベンチが置かれた、小さな待機スペースだった。


「ここなら、誰も来ないわ」


そう言って腰を下ろした優香は、

黒のリブニットに包まれた胸を、ふっと反らすように姿勢を変え、

太ももまで深く入ったスリットのあるスカートの脚を組み替えた。


視線を逸らそうとしても、無理だった。


組まれた脚からスリットがずれて、

すらりとした太ももが大胆に露わになる。

しかも、光の加減でスカートの奥が、うっすらと――。


(俺はおっぱい派……おっぱい派なんだけど……

……改宗しちゃうかもしれない)


つい、見とれてしまう。

目が、離せなかった。


「ねえ、晴道……」


優香が静かに口を開く。


「私、知ってるわ。千紗と花音が、晴道に迫ってること」


(そりゃ毎晩一緒だしな……

って、俺、流されすぎじゃないか?

こんなので、本当にいいのか?)


優香は俺の隣に座り直し、

そのまま、肩をそっと密着させてきた。


「でも……私だって、ずっと我慢してたの」


(いや、一昨日あんなに攻め合っただろ!?

……我慢したの、せいぜい昨晩だけじゃ……)


そんなことを考えながらも、

俺は何も言えなかった。


優香は俺の胸元に、そっと手を置き、

視線を逸らさずに、はっきりと言った。


「……好き。ずっと、好きだったの」


その瞬間、

優香の身体がゆっくりと俺に傾き、

太ももが完全に密着し、

ニット越しの胸が、俺の腕に触れる。


(それを、俺は――“言えない”)


「……お願い、晴道。キスして?」


優香の顔が、ゆっくりと近づいてくる。

その唇が、俺の唇に触れそうになった――

まさに、その瞬間。


「ふたりとも……ずいぶん楽しそうね?」


ひやりとした声が、斜め上から降ってきた。


見上げると、

柵の向こうから、花音さんがこちらを覗き込んでいた。


「……っ。いつから見てたの?」


優香の問いに、花音さんは微笑んで答える。


「最初から。ふふっ」


完全に、バレていた。


優香は顔を真っ赤にして、慌てて身体を離す。

そして俺は――


なぜか、ほんの少しだけ、

寸前で止められた事に、ほっとしてしまっていた。



【Scene06:夜行性展示館の罠 ― 花音の密やかな誘惑】


三の矢


── 小泉 晴道 ──


開園直後に入園し、弁当も早めに済ませた俺たちは、

ほとんどの展示エリアを回り終えても、まだ午後の早い時間だった。


やや奥まった一角へ足を運んでいるうちに、

気づけば俺は花音さんと二人きりになっていた。


たぶん、花音さんの巧みな足運びで、

千紗と優香を自然に巻いたのだろう。

やっぱりこの人は忍者か何かなんじゃないか。

謎が多すぎる。


やがて辿り着いたのは、「夜行性展示館」。


館内は暗く、ひんやりとしていて、

ほのかに動物の匂いが漂っていた。

薄暗さのせいか来場者は少なく、

展示されている動物たちも、闇に溶け込むように静かにしている。


「人、いないね……」


花音さんが、小さくそう呟いた。


展示の前に立つと、そこにはアイアイがいた。

陽気で愛らしい歌で知られるサル――だが、

実物はどこか不気味で、悪魔のような見た目をしている。


「この子、すっごく可愛い」


(……え、マジで?)


やっぱり、花音さんの感性は独特だ。


「少し匂う? でもね、匂いって野生を呼び覚ます効果があるのよ」


野生って、何のだよ――

そうツッコミたくなった瞬間、

花音さんの顔が近づき、ふわりといい香りが鼻先をかすめた。


動物の匂いと混ざることで、

むしろ彼女の香りは、いっそう強く際立つ。


――その瞬間、俺の脳内が弾けた。


「ねえ、晴道くん。ちょっとだけ、こっち向いて」


その囁きに導かれるように顔を向けると、

花音さんはベンチの上に、カーディガンと小さなポシェットを置いていた。


そのベンチの前――

アイアイの檻の前は、まるで意図されたかのようにぽっかりと空いている。


誰もいない、静かな場所。


(……ここでやれってことですよね?)


その時の俺は、

何かに取り憑かれたようになっていた。


花音さんは、ぴたりと身体を寄せてきて、

こちらの顔を見上げるように微笑む。


「ねえ、晴道。どうかしら?」


気づけば、

花音さんのブラウスのボタンは、さらに外されていた。


白いブラウスの下には、

同じく白の、レースとフリルたっぷりのブラジャーが、

完全に露わになっている。


「そんなに見つめられたら……穴が空いて、濡れちゃうわ」


「どこから、なにが濡れるって……!」


完全に、主導権は花音さんに握られていた。


普段は下品な下ネタで俺をかき乱してくる彼女が、

今はまるで、獲物を手玉に取る肉食獣のようだった。


「ツッコミを入れるんじゃなくて……突っ込んで欲しいのよ?」


聞き慣れたはずのフレーズなのに、

俺の身体は異様なほど高ぶってしまう。


「だから、見てばかりじゃなくて……触ってくれる?」


花音さんは、俺の手をそっと取った。

そして――

その手を、ブラウスの中ではなく、

ブラジャーの中へと導いた。


……ッ。


布の内側から、

柔らかさと温かさ、そして微かな鼓動が伝わってくる。


それは確かに「現実」だった。

けれど、あまりにも現実味がなさすぎて、

夢なんじゃないかとすら思えた。


その瞬間――


「……はぁ、はぁ……」


息が漏れたのは、

俺なのか、花音さんなのか、もう分からなかった。



── 如月 千紗 ──


ふと気づくと、晴道と花音さんがいなかった。


優香は?

……いた。猿山に夢中だ。


この幼なじみは、本当に昔からポンコツなんだから。


中学生の頃から物静かで、

高校ではクールビューティを気取っていたけど、

中身は小学生の頃から、何ひとつ変わっていない。


「晴道と花音さんは!?」


「え? あれ? いないの?」


……やっぱり、気づいてなかった。


自分だって人のことは言えないけど、

一応、見張ってたつもりだったのに。


もう、聞き込みしかない。


幸い、花音さんは超美人で巨乳だから、やたら目立つ。

(自分で言ってて、腹立ってきたけど)


聞き込みの成果は、すぐに出た。


「えー、あの超イケメンと超巨乳超美人のカップルでしょ?」

「お似合いだったよね〜」

「超推せた〜」


(お姉さまたち……

ここに何しに来てるのよ……)



── 氷室 優香 ──


千紗に続いて、「夜行性展示館」に飛び込む。


突き当たりの手前で、千紗が立ち尽くしていた。

その視線の先――ベンチに、晴道と花音さんがいる。


……そう。

つい今まで、二人きりだったのだろう。


花音さんは顔を真っ赤に染め、

完全に出来上がっていた。


ブラウスのボタンはすべて外れ、

白いブラジャーが露わになっている。

それどころか、その中身まで、今にもこぼれ落ちそうだった。


ハイウエストパンツのボタンも外れ、

腰のあたりまでずり落ちていて――

その中に、晴道の手がある。


晴道の顔も紅潮し、

唇はべったりと濡れていた。

花音さんの唾液だ。

相当、激しいキスをしていたのだろう。


そして今、

花音さんの手は、晴道のズボンのベルトに――。


……もう、まるっきり、事後。



── 一ノ瀬 花音 ──


……惜しかったわね。


ほんの、ほんの少しの差で、

あの子たちに見つかってしまった。


あと少し。

あと、ほんの数分でもあれば――

私はきっと、彼を“完全に解放”させることができていたかもしれないのに。


私、一ノ瀬 花音は、

小泉 晴道を愛している。


だから、彼を――救いたい。


そして、それが叶うのなら、

その後で、あの子たち――千紗や優香を、

敵に回すつもりはない。


それでも、私は、彼のものになりたい。

愛されたい。


ただ、それだけなのに。

それだけの願いが、どうしても叶わない。



本作には

「大人向け要素を加筆した別バージョン」が存在します。


※感情描写重視で読みたい方は本作を、

より踏み込んだ描写を求める方はノクターン版をおすすめします。


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