表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で森を切り開き鉄道敷いて魔王を倒したエルフの後日譚 「ファン・ライン」~異世界鉄道物語~  作者: 猫長明
第6号:秘境駅のエルフさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/85

「決断」

この物語は、あなた達の世界ではフィクションに該当します。

☆☆☆主信号、赤! 自動列車停止装置(ATS)起動!☆☆☆



「今になって思い返しても、ひどい話ですねぇ」


 やれやれと首を振るマール。

 だがその表情は笑顔であり、悪い気ではなさそうだ。


「さて。元ネタ解説をしていきましょう。

 が、今回は残念ながら現地の写真はありません。

 流石に北海道までは行きにくいというのもあるんですが、

 今回の元ネタ、いろいろありますが一部はもう廃駅なんですよね」


「劇中に登場する葉萌本線の元ネタにあたる留萌(るもい)本線はかろうじてまだ営業中。

 しかし、2016年からにかけて順次廃線が進んでおり、

 来年2026年には最後の深川―石狩沼田間も廃線。

 ここで全線廃線となります。

 それまでには行きたいですねぇ。

 なお2023年の赤字は2億6700万円で、営業係数は2390。

 劇中では営業係数1万3580となっていますが、流石にそこまで酷くない。

 この数字はJR東日本の営業係数ワースト1位、JR久留里線の久留里―上総亀山間の数字ですね」


「この留萌本線に限らず、基本的に北海道の路線は

 どこもかしこも赤字路線で、廃線ラッシュになっています。

 元々北海道の路線の多くが炭鉱のために作られた路線でしたから、さもありなんですね」


「それで、実は今回のエピソードは留萌本線の廃線ではなく、

 以前少し解説したシラタキ5こと白滝シリーズを内包する石北本線、

 その中でも白滝シリーズの1つだった、旧白滝駅の廃駅が元ネタです。

 劇中では1日の平均乗降客数1人の駅を使っていたカナンただ1人で、

 そのカナンが高校を卒業するまで廃線を待ってくれという話になりましたが、

 これと同じことが旧白滝駅で起きていました。

 旧白滝駅も最後は平均乗降客数が1人で、

 それがたった1人の女学生さん。

 で、この子が高校を卒業するまで待ってくれという話になって、

 最後はこの方のためだけに朝と夕方のみ駅に列車が停車するダイヤに変更。

 そして、この方が卒業する春を待って、旧白滝駅も廃駅となったのです。

 いい話ですよねぇ」


「で、劇中の幻森駅の立地条件は日本一の秘境駅としてお馴染み、小幌駅ですね。

 この駅は汽車を運用する都合でトンネルとトンネルの間に作られた信号場が元。

 最初から旅客・貨物運用を目的にしない形でも駅って作られるんですね。

 青函トンネルの中の竜飛海底駅も同じ。

 こちらはもう廃駅ですが、作られた目的はトンネル工事の作業員の休憩及び

 開通からしばらくのメンテナンス観察のためですね」


「また、クリスマスのアイドルライブにも実は元ネタがあります。

 それが同じ北海道、宗谷本線の糠南駅。

 これ、ヌカナン駅と読みます。

 どっかで聞いた音ですね。何かの元ネタなんでしょうか。

 語源はアイヌ語だそうですが、アイヌ語での正確な語源は不明だそうです。

 うっかりその昔にカナンなるピリカカムイが居たとかでもおかしくないですね」


「それでこの糠南駅、例に漏れず秘境駅で、

 どう見ても物置にしか見えない待合室で有名。

 そしてこの駅、今は毎年12月24日にクリスマスパーティを行うという謎のイベントが続いています。

 これは2015年にとある鉄オタの方がここで突然クリスマスパーティを行い

 『来れるものなら来てみろ』と言い放った件が話題になったのが発端。

 2015年はほんとに来てしまった鉄オタ9名と糠南町役場の2人による12名で開催され、

 翌年からは町役場主催の公式行事として毎年開催されています。

 まさに謎イベントですが、秘境駅を使った街興しとしてはちょっといい話ですね」


挿絵(By みてみん)

https://www.town.horonobe.lg.jp/www4/section/soumu/le009f000001hvb7.html


「それと……はぁ……」


 露骨に不機嫌な顔を作って。


「劇中でお酒を飲んで運転する運転手が出てきますね。

 本当に心の底から自己都合で自主退社してほしいんですが。

 国鉄時代では、わりと運転前の飲酒は常習化していました。

 寒い北海道、暖房もない車両の運転ならまだ理解でき……」


「いやいや! できませんよ!」


「というか実際、運転手が泥酔していたせいでの大事故も起きてるんです!

 それが1984年、山陽本線西明石駅での列車脱線事故。

 死者こそ0人でしたが、32人が負傷する事故でした。

 そしてこの事故の原因が運転手の飲酒運転。

 当時の国鉄は本当にこうした最悪の勤労形態が常習化していましたがこの事故で改めて明るみに。

 これが1987年の国鉄分割民営化の最後の一押しになったという、

 被害の少なさに反して有名な事故になってしまいました」


挿絵(By みてみん)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Amagasaki_derailment_damage_to_the_first_car.jpg


「列車事故としては、2005年のJR福知山線脱線事故が有名。

 死者107名、負傷者562名という戦後最大の鉄道事故で、

 近代鉄道史における安全への取り組みを大きく変えた事故としてひとつの区切り目になっています。

 そしてこの事故の原因が、JR西日本におけるパワハラ級とも言える厳しい教育システム、

 『日勤教育』にあったというのも有名な話。

 規律がゆるくて起きた事故と、規律が厳しすぎて起きた事故……

 やはり人間、『ちょうどいい』が一番難しいように思います」


「さて。当初の目的の廃線は達成できなかったものの、カナンのおかげで葉萌本線は黒字化。

 全国の秘境駅にも観光で訪れる人が増えるという怪我の功名を見せたものの、問題はここから。

 結局赤字路線がなくなったわけではなく、社員の規律も最悪。

 そして、隠し通したかったレアスキル持ちのカナンが有名人になってしまいました。

 まずい、まずいですよ、これは……

 では、次回への不穏な引きをどうぞ」



☆☆☆主信号、青! 運転再開!☆☆☆



「……これは、よろしくないですね」


 エルフのアイドルによる赤字路線の黒字化エピソードは、

 鉄オタの間だけでなく世界的なニュースになってしまう。

 鉄オタだけ、ドルオタだけ、いや、()()()()で話が止まっていたならまだいい。

 しかしこの件の話題はバズりにバズり続けている。

 このままでは……


「もしもこのニュースが魔将軍の誰かの目に留まれば。

 見る者が見れば、必ず気付いてしまいます。

 あの子は……ミスリル冶金スキル持ちエルフの生き残り……

 下手をすると世界最後の1人ですね」


 暗い部屋の中。

 深刻な顔色でパソコンモニターを睨みつける魔王の娘、アナスタシア。


「ミスリルの武具は勇者の剣をはじめ魔物の弱点……

 お父様が加工スキル持ちを根絶やしにしようとしたのも魔王として当然のこと……

 私もその意思は継ぐべきですし、今の魔王軍でもすべての将軍がそう考えるはず……

 しかし、もしもこの件が将軍の耳に届いてしまえば……」


――あのエルフが『卒業』してしまう。

  そしてファン・ラインは、葉萌本線廃線の条件としてのあの子の『卒業』を撤回していない。


 ミスリルの武具は確かに恐ろしい。

 可能ならば加工スキル持ちは処理したい。

 だが、このアナスタシアの場合、それ以上に……!


「葉萌本線を、廃線にするわけにはいかない」


挿絵(By みてみん)


 改めて決意する。

 葉萌本線を廃線にしようとするファン・ライン。

 そして、あのエルフアイドルを『卒業』させようとする魔王軍。

 その両方が『私』の敵だ。

普通 7両 9月7日10時20分 時刻表の隠しイベント「魔王様の正月」

普通 7両 9月7日22時20分 時刻表の隠しイベント「陰謀と野望」


第7号到着 9月10日10時20分

最終話到着 9月26日22時20分


駆け込み乗車は事故につながる恐れがありますのでお控えください。

座席の予約は「ブックマーク」「評価」で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ