「Why you...」
この物語は、あなた達の世界ではフィクションに該当します。
――何故そのエルフは一度も戦場に出ず魔王を倒した英雄となったのか?
「魔王領に線路を伸ばしたとて、赤字路線が増えるだけだぞ。
それとも、無人の在来線に爆弾を詰め込んで魔王へ突撃させようとでも言うのかい?」
「数人の勇者パーティで魔王を討つ。
そんな舐めたこと考えてたからずっと魔王を倒せてなかったんだよ。
5~6人で数万の魔物の軍勢に突っ込むとかバカなの?」
――何故その天才魔法使いは人間の老騎士に勝てないのか?
「なんでうちの方が遅いの?」
「まぁ、そういうところは持ちつ持たれつさ!
当然受け入れるのが騎士の流儀ってもんだろう!」
「あぁ。ダメだこりゃ」
――何故その英雄は、魔王撃破後に故郷に帰って10年間行方不明になったのか?
「最後にもう一度言おう!
アールヴヘイムにひかりを、止めろ!」
「止めません!
絶対にひかりは、アールヴヘイムを通過します!」
――何故その冒険者は白紙の方眼紙を手に駅へ向かったのか?
「冒険者の死因No1、知ってるか?」
「え? どんな魔物に襲われるかってことっすか?
ダンジョン内のヤバイ魔物っていうと、えーと……」
「迷子だよ」
――何故鉄道を愛する魔王の娘は、理解者とも言える同志を粛清したのか?
「やっぱりなんだな。
お姫様は、おでと同じ……
魔王の娘なのに鉄道が大好きなんだな!」
「黙れ」
――何故そのレアスキル持ちは親友を呪い秘境駅に隠れ潜んだのか?
「だから、脱げません」
「え、いや、その、おしっ」
「汗は自動で浄水化してくれますし、排泄物と老廃物の除去機能もついてます。
体温調整機能もありますから普通に上から服を着ていただいて問題ありません」
――何故その2人は許されざる恋に落ちてしまったのか?
「ほんとに大丈夫? これ何本に見える?」
「16.5」
「まだちょっとダメそう。
幅聞いたんじゃなくてね?。
もう大丈夫? これ何本に見える?」
「12」
「この人、私と同じだ……!
3mmの違いで泣いた経験がある人だ……!」
――何故その英雄は愛する彼女の背を追えなかったのか?
「……さようなら」
「そんなこと、言わないでよ!
もう魔王でもいい!
アナスタシアさんが魔王でもいい!
だから私に『さよなら』なんて言わないでよ!
約束したよね!? すべてを終わらせたら、って!
何百年、何千年かかっても、絶対に!
だから……だからまた!
『また会いましょう』って言ってよっ!!」
――何故その英雄は……線路に飛び込んでしまったのか?
「君は天才なんかじゃ、なかった。
いや……天才だったからなのかい?
私には、まだわからないよ。
凡人だからね」
「ずっと魔物は駆除の対象だと思ってた……
その思いは、今も同じ。
でも、人類種が魔物種に比べて勝っているとは思わない」
「魔王と共に、死んでください。鉄道女王」
――そして……いかにして彼女はその絶望的状況を覆し、今もなお「鉄道女王」であり続けているのか。
「はい。では、今日も安全第一で。
よろしくお願いします」
――そもそも、何故この剣と魔法の世界に鉄道が走ることになったのか……
物語は西暦2025年現代、東京からはじまる。
駆け込み乗車は事故につながる恐れがありますのでお控えください。
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