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イベント・春 (2025)

季節はもうすぐ新学期




「しーちゃんどうだった?」

「なんかズレてた。あーちゃんは?」

「こっちも」

「もう別れちゃおっか?」

「え、あうん。来月のクラス替えでいい人探そう」

 ホワイトデーの翌日、私たちはひそひそと話す。

 

「恋愛は高校からって漫画やアニメでよく見るし」

「中学男子に求めるのは(こく)かなあ」

「高校生になったときの予行演習って思っとこ」

 そう話を切り上げると金平糖が頭の上に置かれた。


「おはよ。仲良いね。バレンタインのお返しだよ」

 人気者の委員長がお菓子を渡すと走り去っていく。

「……どう思う?」

「照れ隠しかなあ。これは」

「会話のやり取りは大切よね――あ!そういえば」

 私たちは廊下を歩きながら金平糖を(かはん)に入れる。

 

「聞いたことがある。男の子の愛は量だって」

「えーどれだけ愛してくれてるかでしょ?」

「愛の質と量が考え方がズレる原因かも」

 しーちゃんがそう答えたところで教室に着く。

 クラスメイトにあいさつを交わし席に座った。

 

     ☆     ☆     ☆

 

「――このall correctはすべて正しいが訳になる」

 英語の授業で担任の先生が話している。

「ちなみにこれはOKの語源でもある」


「先生、それだとACでは?」

「oll korrectと書いたアメリカ式のジョークかな」

「その冗談が今も続いてるんですか?」

「それも含めて欧米なりのジョークってやつさ」

 先生は肩をすくめる動作をして切り返す。

「ならALL OKはどうなりますか?」

「そのままの意味で」

「allとallの重複は文章としておかしいのでは?」

「そうだね、白黒思考で考えるとそうなるね」

「白黒思考?」

 おうむ返しにクラスメイトは聞き返した。

 

「重ね言葉に関しては次の国語の先生に聞こうか」

「今知りたーい」

 先生の言葉に生徒から要望が出る。

「マルチタスクができていて先生はうれしいです」


「今は英語の時間。これはわかりますね?」

「はい」

「なら簡単です。物事には優先順位があります」

「優先順位?」

「一度にやれることはひとつだけです」

 先生はそう言って口を閉じた。

(今は英語の時間だから英語に集中、ってことかな)

 私はそう考えこれまでの会話のメモを取り終えた。

(先生の雑談用メモノート、いつか役に立つかな?)

 

     ★     ☆     ★

 

 授業が終わり、部活が終わり下校へと時間は流れる。

 

「家に着いたら連絡入れるねー」

「私も。それじゃまた明日」

 しーちゃんと別れどっと疲れがくる中岐路につく。

 帰り道で人影がまばらとなり私ひとりになる。


 再度周囲を確認して私は(くつ)のスイッチを押す。

(ローラーシューズ装着完了っと)

 スイッチを入れてローラーを出し道を滑る。

(時間が惜しいから早く帰ってゆっくり休もう)

 人が来たのでシューズを通学用の靴に戻す。


(学校指定のローラーシューズかあ)

 タイパと騒ぐほど時間に追われた結果なのだろう。

(時は金なり。ひとりの時間は大切だし)

 医者の父も言っていた。

 

『がんばりすぎると脳が炎症を起こすこともあるよ』

『どうするの?部活とかがんばるときがあるよ?』

『だから変えてみよう。がんばるをがんばれるにね』

『がんばれる……うんそれならできる範囲でやれそう』

『自分が自分に言うのががんばれるだからね』


     ★     ★     ★

 

 だから私はがんばれる。

(恋に友達づきあいに勉強、自分のペースで行こう)

 またローラーを出し滑り始める。

 吹っ切ろうという気持ちと共に風景が流れていく。

 

(帰ったらお気に入りの曲を聴きて(いや)されよう)

 今日はなにを聞こうか考えることも楽しくなれた。

(ノイズキャンセリングヘッドホンどこ置いたっけ)

 置き場を思い出しながら私は家路を急ぐ。

 

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