第七話「悲しみの果て」
逃げ惑う人間…その訳は‥
「あの、ありがとうございます。アイリス!さっきの逃げてた奴を追うぞ!」
「は、はい!」
そう言って先程のおばあちゃんとの話を後に怒鳴っていた二人組の方に走っていった…
ラモンズさんが早すぎて置いてかれそうになりながら…
「ここまでだ。」
「なんで追いかけてくるんですか?」
「最近全然お前が役に立たないからだよ。」
「ちゃんと銀貨を渡し…」
「ちゃんとだぁ?銀貨たった5枚で何を偉そうに??」
少年?が何者かに狙われていた。
「俺が盗られたのは7枚…まあいい…」
ラモンズさんが1人で呟いていた。
「舐めやがって!!」
その少年が殴られそうになった。
「そこまでだ。」
振り上げた拳を片手で押さえ込み、ラモンズさんはそう言った。
「誰だお前?」
「俺の事はどうでも良い…その人は俺の客だ。」
「何言ってんだ?」
「そいつが昨日持ってきたっていう銀貨は俺のだ…そう、つまり俺の財布がこいつに盗られたんだ。」
「お、お前かっこよく言ってるけど…こいつにただ盗られただけだよなぁ?」
数秒の沈黙、ラモンズさんは少し恥ずかしそうだった。
「う、うるさい!悪いけどお前らは用がない。俺はこいつにって…待て!」
話している間にその少年は逃げていった。
「アイリス!拘束魔法を!」
「はい!ザ・チェーン!」
二人組を拘束し、追いかける事にした。
「待て!!」
「銀貨はもう無いから追いかけても無駄ですよ!」
「俺は君と話がしたいだけだ!」
「そんな事言ってウチを狙う人なんて沢山会ってきたんで」
流石は盗賊…逃げるスピードもピカイチだ。
「クソッ!!アイリスもう一度…ってあれ?」
あまりのスピードに着いていけなくなったアイリスが居なくなっていた。
「仕方ないか、シャドウグラブッッッ」
「お前まさか禁術‥」
晴れてたからこそ使えた術、シャドウグラブ
相手の影に触れる事が出来る。
「捕まえた。」
「チッ」
そう舌打ちをした。
「俺は君に聞きたい事がある。」
「なんですか?」
「君が狙われてたのってスティール・リフトだろう?」
「何故分かった?」
「首の裏の紋章さ。」
そう、スティール・リフトには皆首の裏に鎖と蛇と鍵の紋章が彫られる。
「ハァハァ…ちょっと2人とも…は、早すぎますよ…」
少し遅れてアイリスがやってきた。
「アイリス、この人はスティール・リフトの一員かもしれない。」
「え!!」
「仮にスティール・リフトだとしてウチに何をしたいんだ?銀貨を返して欲しいのか?それともさっき助けたお礼が欲しいのか?」
「その前に握手してくれないか?」
「な、なんですか!いきなり!」
まぁそうなるよな。
「強引で悪いけど!!」
そう言って手を握った。
「ま、まさか!!」
「どうしたんですか、ラモンズさん!」
「君…女の子なのか?」
「え?」
私が勝手に少年だと思っていた人は女の子だった。
「だからなにって話ですけど…」
「やっぱり俺の目に‥いや、俺のスキルに狂いは無かった。君は盗賊のステータスが異常に高い。」
「え!そうなんですか?」
「さっきから2人で話を進めないでください!」
「ご、ごめん。俺は冒険者のラモンズ、それでそこの子は魔導士のアイリスって言うんだ、俺は握手して相手のステータスを大体見れるんだけど彼女は詠唱を出来るぐらいの魔導士なんだ。」
「それで見つけたってことですか?」
「俺は元々1人だったんだけどとあるダンジョンに行く為に仲間を探してて、剣士、魔導士、盗賊、賢者を仲間にした方が良いって占い師に言われてちょうど探し中なんだ!だから君みたいな盗賊スキルも高くてスピードのある子と是非一緒に旅に…」
「旅?無理ですよ、ウチはね。所詮この街から、このスティール・リフトからは逃げられないんですよ。」
「そんな事ないよ、スティール・リフトの奴らには俺から話を…」
「てか、そもそもウチは旅になんて興味ないしどこに行っても盗賊は盗賊、腫れ物なんですよ、話は以上ですか?だったらウチはもう行きますね。あんたらもこの街を出た方がいいよ、すぐに見つかって団長に何されるか…」
「わ、わ、私だって変わったんです!」
「アイリス…」
珍しく自分から話す事のないアイリスが口を開いた。
「私も昔から人と話すのが苦手で…」
「昔から愛されてたあなたには分からないですよ。」
そう言って少女は去っていった。
「まあ気にするなアイリス。」
「はい…」
とは言いつつもほっぺたを膨らましてぷんぷん怒ってるように見えた。
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__その日の夜
「アイリス、ちょっといい?」
「はい!」
「色々考えたんだけど、明日の朝この街を出ようと思う。」
「え?」
「まあ彼女の事も気になるんだがアイリスのように上手くいかない気がするんだ。」
「上手くいかないと言うのは?」
「アイリスはたまたま自分から進みたいって気持ちから俺に着いてきてくれたけどいくらスキルが良くて俺が助けたいと思ってもどうしても他人と他人、埋められない溝はあると思うんだよね。」
「本当にそうでしょうか?私、彼女の目を見た時になんだか寂しそうというか助けて欲しいというか‥なんだか昔の私に似てました。」
「昔のアイリス?」
ー続くー