第五話「俺たちの明日」
おじいちゃんお久しぶりです。
「アイリス!そっちだ!!」
「はい!フレイム!!」
ドン!
「ぐ…ぐおおおおお!」
アイリスです、おじいちゃんは元気にしてますでしょうか?
「こいつ…なかなかやるな…」
「タイムーさん!!バフかけて!」
「はい!」
「タイムーさん!!そこで攻撃を!」
「おりゃああああ!」
私達はバイトをしている。
単発で人数の足らないパーティに入れる”タイムー”というサービスを利用していたのだ。
タイムーで紹介されたクエストに手伝いに行きお金をもらう…
あんな感動的な別れから数ヶ月…
毎度色々な人数の足らないパーティーに参加しお金を貰い、その日暮らしをしている状況だった…
そうしてその単発で来る人達を一括りでタイムーさんと呼ぶ。
「トドメだゴブリン!!スター・スパイラル!!」
「ぐおおおお…」
「やりましたね!!」
「あ、ありがとうございました。こちら報酬です。」
タイムーさんとは孤独である。
現地集合、現地解散は当たり前…なんなら人として扱ってもらえない時だってある…
「あの、2人とも良かったら私たちと同じパーティに…」
「す、すいません…今の所俺たちは…では、また何かありましたら…」
「いや〜あの”カップルタイムーさん”に当たった時は強すぎて助かるねぇ。」
「そうですね、私たちもいつかあんな2人になりたいです。」
私達はいつからかカップルタイムーと呼ばれあまりの強さに都市伝説的な存在になっていた。
もちろん、先程のようにパーティのお誘い来たりするのだが、私たちの目的は旅の中で占い師に言われたラモンズさんの仲間を見つける事なのでお断りするしかないのだが…
「相変わらずタイムーさん呼びなんですね…私達…」
「き、気にするな!!俺はこのタイムーって呼ばれる事気に入ってたりもするぞ?」
旅をしていく中で私達の仲も少しは深まった。
ずっと敬語だったラモンズさんが18歳と言う事が分かり名前もさん付けをやめ、最初は少し戸惑っていたが、フレンドリーな話し方になってくれて居たのが少し嬉しい。
「いや、でもアイリスもだいぶ人と話せるようになったな!」
「そ、そうですかね…」
村を出てタイムーで働く内に昔よりは少し人と話せるようになったり魔法を唱える事が出来るようになったが、未だに詠唱魔法が恥ずかしくて言えない…
「そういえばなんでアイリスは詠唱をそんなに嫌がるんだ?」
「なんでってそりゃ…詠唱って基本神の力を借りるものが多いんですよ、それで…その…」
「その?」
「あ、あ…」
「あ?」
「アイラブゴッドって言うのが何よりもダサいと言うか、恥ずかしいと言うか…だから私は神の力を借りる権利もないのかもしれないです…」
「確かに…それってダサいかもね…でも詠唱を言える人ってかっこいいよね、俺も昔見た事があるんだ!」
「ラモンズさんってご出身はどこなんですか?」
「うーん‥名前も知らない田舎町だよ〜」
「そうなんですね。」
訳ありなのかラモンズさんはあまり自分の事を話したがらない。
私も少しは仲良くなったと思ったんだけどな‥
「まあどんどん強くなるアイリスに遅れを取るわけにもいかないから俺も頑張らなきゃな‥」
「そ、そんな事ないですよ!!」
冒険者のラモンズさんはとても器用で基本はどのスキルも使いこなせる天才なのですが、これと言った強みがない自分があまり好きじゃないらしいですね…
私は勇気を貰って外の世界に出る力をくれたラモンズさんは素晴らしいと思っているんですけど…
「今日は夜ご飯食べながら次の目的地について話したいんだけど…」
「はい!ついにタイムーさん卒業ですね!」
「そんなに嫌だったのか‥」
次はどんなところに連れて行ってくれるんでしょうか、楽しみです。
おじいちゃんも健康で居てください。
.
.
.
その日の夜…
「じゃあ次の目的地を発表します!」
「はい‥」
ワクワク…
ドキドキ…
「俺が行きたいのはメリルガだ!」
「はい!行きましょう!」
「え?」
「ゑ?」
「いや、俺は数日悩んだんだよ?もしかしてメリルガがどんな街か知らない?」
「はい!」
この時の私はまだ知らなかった…
この先待ち受ける地獄に…
.
.
.
数日後…
「もう近いぞ」
「ほ、ほ、本当に行くんでしょうか?」
「お客さん、俺も悪いことは言わねぇ…やめとけこんな所…デートでくる所じゃないぞ…」
「お気遣いありがとうございます、でも俺達行くって決めたんで。」
馬車に乗ってメリルガまで向かって居た。もう近いらしい、いや近い。直感で分かるぐらい重々しい雰囲気が漂っていた。
「アイリス、俺1人でも良いんだぞ?」
「いや、5秒に一度帰りたい気持ちになりますが、私頑張ります…」
「到着だよ…俺はもうすぐ帰るから…生きて帰ってくるんだぞ…」
「着いたな。」
「は、はい…」
そう…次の目的地であったメリルガは
ジロジロ…
「見ない顔だな…」
ジロジロ…
「あの女…美味そうだなぁ…」
「か、金を寄越せ〜」
王都近くで一番のスラム街と呼ばれており、最強の盗賊団スティール・リフトの巣窟でもある、最低最悪の街だった。
「やっぱ!帰りましょ〜よ〜」
おじいちゃんごめんなさい…私もここまでかもしれないです。
ー続くー