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作者: 遊浪人

 それは中学校から下校しているときだった。俺は歩いてきていたのでもちろん下校でも歩いていた。

 頬に何かが当たったのを感じた。頬の上から下にかけて流れ落ちていったことから恐らく水滴か何かだったのだろう。俺が空を見上げてみると、それと同時に水滴がまた、ぽつん、と落ちてきてちょうど俺の眼球にぶつかった。慌てて目を閉じたが、水が入ってそれを認識したのだから痛みから逃げられるはずもなく、目薬を差した時のような痛みが走った。

 雨だ。

 と今更ながらに思った。

 それから雨は少し激しくなり、肩や背中に黒く小さな水玉模様を作り始めた。慌てて手に持っていた傘を開く。頭の上に開いた傘を持ってくると、水滴が傘にぶつかり、タンッ、タンッ、と小気味よいリズムを奏で始める。少し止めていた足をまた動かし始めた。

 俺の周囲には、同じ中学の生徒も何人か居て、それぞれがそれぞれの雨に対する感想を誰にでもなく漏らしていた。ついでに感想とともに走り始める生徒もいた。傘を持ってきていないのだろう。心の中で、ご愁傷様、と、冗談交じりに呟く。ただ、本当に可哀そうにも見えた。

 さらにしばらく歩くと雨も激しくなり、傘の上ではじけていた水滴たちはいつの間にか傘を叩くようになっていた。その音も、どことなく乱暴な雰囲気を感じた。それに、アスファルトにも水がしみ込んで濃い灰色だった路面も黒と呼べるくらいの濃さになっている。この辺りまで来ると中学生以外の通行人もちらほらと見え始める。しかし、そのほとんどが雨をうざったく感じているようで、何となくイラついた雰囲気が見受けられる。

 結局、雨や、雨に影響されて変化していく環境に目を向けて感傷に浸ったりするのは俺ぐらいの歳までで、高校生や社会人になればそんなことに気を使っている余裕はなくなっているということなのだろうか。そんなことを考えると、成長していくのが何となく嫌に思えてくるのは僕だけなのだろうか。それとも、高校生や社会人でもそんな風になった自分に対して感傷に浸ったりするのだろうか。

 結局これらはすべて俺の想像で話しているに過ぎない。つまり、俺が大人になるまでどうなるのかサッパリ、というわけだ。

 成長するのが嫌になったらこれを楽しみに頑張ってみよう。そんな風に思った梅雨明け、初夏だった。


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