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夜空の星々を結ぶ光

作者: ウォーカー
掲載日:2023/07/10

 今からおよそ三千年ほども昔のこと。

働き者で容姿端麗な織姫と、

これまた働き者で眉目秀麗な彦星の、

ふたりの男と女がいた。

ふたりは愛し合い、織姫の父親である神の許しを得て、

結婚し世帯を持つことになった。

しかし、結婚した織姫と彦星は愛に溺れ、一切の役割を放棄し、

やがて神の怒りに触れてしまった。

織姫と彦星は、罰として、

それぞれが選んだ大事なものを一つ奪われ、

遠く遠く別々の星に封印されることになった。


それから遙かな時が過ぎ去って、現在。

地球から遠く離れた星々で、

織姫と彦星の封印が解かれようとしていた。



 ある地方、小さな村に、一人の男子生徒がいた。

その男子生徒は高校三年生で、

両親とともにその小さな村で生活をしている。

その男子生徒は、産まれて間もなく、

すぐに言葉を話すようになったと、

両親がそう伝えるほどに多才で、

高校生の今では眉目秀麗、文武両道。

村の外に通う町の学校でも一番の秀才だった。

しかし、そんな優秀なその男子生徒にも、無いものがある。

それは、友達。


 その男子生徒が暮らす村は、かつて二十年ほど前には、

村で生まれる子供が一人もいなくなったほどに寂れていた。

しかし、その後、外部に出ていった人々が村に戻ってくるなどして、やや改善。

今ではそこそこに賑やかな、しかし依然として小さな村だった。

そんな寂れた村から町の学校に通う生徒など、そういるはずもなく、

その男子生徒は町の学校では異物扱い。

成績が良いことも逆に仇となって、

他の生徒たちからは近寄りがたい存在とみなされていた。

学校から家が遠いこともあって、部活動などにも参加できず、

ますます孤独な学校生活。

もう高校三年生にもなったのに、その男子生徒には友達と呼べる人はいなかった。

だから、その男子生徒は気まぐれに、七夕の日の夜空の星に祈った。

「神さま、お星さま。

 どうか、こんな僕にも友達ができますように。」

その男子生徒は夜空を見上げて、輝く星々に祈っていた。

すると、夜空に輝く星が、その祈りに応えた。

星の一つが傾いて、夜空に一筋の軌跡を残して落ちていく。

軌跡が向かう先には森があって、真っ暗な森にパッと光が上がって星が消えた。

その一部始終をその男子生徒は目の当たりにしていた。

「何だ?今のは。

 もしかして隕石か?いや、流れ星かも。

 あれは近くの森だ。見に行ってみよう。」

そうしてその男子生徒は、落ちた星を探すため、

自宅から近所の森へと出かけていった。


 見慣れた近所の森は、夜の闇で真っ暗で、

そこには木々がなぎ倒された穴、クレーターができていた。

クレーターの中心には鈍く輝く塊が落ちている。

「あれが、落ちてきた流れ星か?

 熱くはなさそうだし、拾っても大丈夫かな。」

その男子生徒は、おっかなびっくり、クレーターを下っていく。

下っていって、鈍く輝く塊を見て仰天。

「あれ、流れ星じゃない、人だ!」

クレーターの中央にいたのは、隕石などではない、人。

玉のような赤ん坊が寝転がって、鈍く輝きを発していたのだった。

その男子生徒が近付くと、赤ん坊の発光が静かに止んだ。

赤ん坊はつぶっていた目を開き、その男子生徒を眺めて口を開いた。

「そこの男子おのこわらわの頼みを聞いてはくれまいか。」


 夜空の星が落ちた森の中には、星ではなく赤ん坊が落ちていた。

赤ん坊は、おぎゃあおぎゃあと元気な鳴き声を上げるでもなく、

その男子生徒の姿を見るなり、流暢な言葉で話しかけた。

至って平然とする赤ん坊とは逆に、その男子生徒は大慌て。

文字通りに泡を吹き出しながら口を開いた。

「あ、あ、赤ちゃんがしゃべった!?

 お前、神さまか何かか!?」

その男子生徒の慌てように、赤ん坊は肩を揺らしながら応えた。

「ふふ、妾は神ではないが、神の娘だ。

 妾の名は織姫。神の娘であり、彦星の妻でもある。」

「おっ、おっ、織姫!?織姫って、あの七夕の?」

「そうだ。

 妾と彦星は、妾の父である神の怒りに触れ、

 遙か遠くの星に別々に封印されていたのだ。

 それから遙かな時が過ぎて、封印の期間を終えて、

 こうしてこの星に戻ってきたというわけだ。」

「そんなまさか。」

自分は織姫だと名乗る赤ん坊。

まともな人間なら、そんなことを信じることができるはずもない。

流れ星が落ちた先に赤ん坊が転がっていたのは事実。

森にクレーターを作り、光る赤ん坊を置いておき、

さらには赤ん坊に言葉をしゃべらせるなど、

なんて手の込んだいたずらだろう。

その男子生徒はそう思ったのだが、

それを見透かしたかのように赤ん坊は言った。

「お主、星に祈っていたな。

 願いは、友達が欲しい、だったか?」

「どっ、どうしてそれを・・・」

「こう見えても、妾は神の娘だぞ。

 遠く離れてはいても、人の念を読むことくらいはできる。

 そこで折り入って相談がある。

 妾は、先にこの星に戻ったはずの彦星の行方を探している。

 それを手伝ってはくれまいか?

 もしも彦星を見つけてくれたら、お主の願いを叶えてやれるかもしれん。」

相手の悩みを言い当てて信頼を得るというやり方は、占いのそれに似ている。

しかし、織姫の力は、まやかしなどではなく純然たる事実。実在する力。

いくらかのやり取りの後に、その男子生徒は、

織姫の手伝いをすることになったのだった。


 織姫の彦星探しを手伝うとは決めたものの、問題はその後すぐに起こった。

その男子生徒が、赤ん坊の姿の織姫を連れて家に帰ると、

両親は腰を抜かすほどに驚いた。

「そっ、その赤ん坊は何!?あなた、まさか!」

「誰の子だ!?母親は誰だ!答えなさい!」

泡を食って喚く両親を落ち着かせてから、その男子生徒は事情を説明した。

「父さんも母さんも落ち着いて!

 僕、まだ高校生だよ?僕の子供じゃないよ。

 ちょっと知り合いから預かったんだ。

 何日かうちにいさせてあげて欲しい。」

もちろん、森で赤ん坊の姿の織姫を拾ったなどとは言えないので、

両親に説明した話の内容は嘘。

しかし両親は、息子であるその男子生徒の話をすっかり信じたのか、

いくらか落ち着きを取り戻して受け入れてくれた。

「なあんだ、そうだったの。」

「まったく、驚いたじゃないか。

 でもそういうことなら、うちにしばらくいさせてあげなさい。」

一人息子に甘い両親の弱みに付け込むことになって、

その男子生徒は密かに罪悪感を感じていた。


 翌日。

その男子生徒は、織姫を両親に預けて学校に登校した。

一日の授業が終わって、放課後。

すぐに家に帰ると、織姫と合流。

早速、織姫を背負って彦星探しに出かけることにした。

再び家を出て間もなく、その男子生徒は、

母親に巻いてもらったおんぶ紐を解くと、

赤ん坊の織姫もろとも鞄に詰め込んでしまった。

「わっぷ、何をする!」

「いくら父さんと母さんは納得してくれても、

 赤ちゃんを背負って外を歩くなんてできないよ。

 しばらくは鞄の中で我慢してくれ。」

「まったく、神の娘に向かって無礼な。

 こういうのを幼児虐待と言うのではないのか?」

「そんな言葉、どこで覚えたんだ。

 お前は空から落ちても平気なくらいなんだから大丈夫だろう。

 とにかく彦星を探しに行こう。

 ところで、彦星も赤ちゃんの姿になってるんだよな?」

「うむ、そのはずだ。

 最後に見た時は、妾と同じ赤子の姿だったからな。

 ただ、妾よりもいくらか先にこの星に落ちるのが見えたから、

 この星にたどり着いたのは今よりも少し前のはずだ。

 だが、到着時間に差はあれど、この村にいるのは確かだ。

 彦星の気配を感じるからな。」

「じゃあ、村役場に行ってみようか。

 この村に住んでる人は、ほとんどが顔見知りだから、

 役場で聞けば教えてくれると思う。

 赤ちゃんがいる家って、この村ではそんなに多くないし、

 男の赤ちゃんがいる家を全部当たっても、きっとすぐ終わるよ。」

そうしてその男子生徒は村役場へ向かった。

村役場は、新しいがこじんまりとした建物で、

その男子生徒が急に尋ねることになっても、

役場の職員である女は、書類も見ること無く気さくに答えてくれた。

「この村で男の赤ちゃんがいる家ね。

 今、0歳の男の赤ちゃんがいるのは、全部で10軒よ。」

「あれ、意外と多いんですね。」

「そうね。

 あなたが生まれた頃は村の子供が少なかったけど、

 今は少し持ち直してるから。

 全部この近所だから、必要なら直接行ってみたら?」

「はい。ありがとうございます。」

そうしてその男子生徒は、織姫を連れて、

メモを片手に0歳の男の赤ん坊がいる家を順に尋ねていった。

家の呼び鈴を鳴らし、出てきた家の人に事情を説明する。

「今、親戚の赤ちゃんを預かっていて、

 人見知りだから、他所の家の赤ちゃんで慣れさせて欲しいんです。」

「あら、そうなの?

 うちの子で良かったら、会わせてあげて。

 もしかしたら友達になってくれるかしら。」

またしても嘘の説明をして、その男子生徒の良心が疼く。

そうして現れた赤ん坊を織姫が調べて、その男子生徒に耳打ちする。

「・・・違うな。この子は妾の好みではない。」

「そういう話じゃないだろう。

 でも、彦星と別人で間違いないんだな?」

「うむ、この子は彦星ではない。」

丁寧にお礼を言って、次の家へ。

赤ん坊を見せてもらって、しかし織姫が首を横に振る。

「違う。この子は妾好みの男子だが、彦星はもっと美男子だ。」

そんなやり取りを繰り返すこと10回。

村役場で教えてもらった10軒全てを回ったが、

しかし彦星を見つけることはできなかった。


 村の0歳の男の赤ん坊を全て調べたが、結果は外れ。

彦星と思しき赤ん坊を見つけることはできなかった。

その男子生徒は休憩がてら、鞄の中の織姫に向かって相談している。

「おっかしいなぁ。

 村の男の赤ちゃんはもう全員調べたよ。

 でも彦星は見つからない。何か間違ってるのかな。

 織姫。もう一度、事情を聞かせてくれるか?」

「うむ、わかった。

 妾と彦星は、神から罰を与えられ、

 遠く別々の星に封印されることになった。

 今から三千年ほど前の事になるか。

 妾と彦星は、罰としてそれぞれ自分の大事なものを一つ奪われ、

 それから赤ん坊の姿にされて、それぞれの星に飛ばされた。」

「大事なものって?」

「失うものは自己申告だった。

 ただの罰なので、内容は問われない。

 妾が差し出したのは、時間感覚だ。

 時間の感覚がなくなれば、長い封印生活の苦も和らぐというもの。

 どうだ?賢いだろう。」

「どっちかと言うと、ずる賢いかな。

 彦星が差し出した大事なものは何だったんだ?」

「それはわからん。教えてもらえなかった。

 ただ、別れ際に、我のことは諦めてと言っていたな。

 もちろん、妾が彦星を諦めるわけがないがな。」

からからと笑う織姫に、その男子生徒は少し思案した。

その僅かな時間だけで、その優秀な頭脳はすぐに手がかりを見つけた。

「織姫と彦星が赤ちゃんの姿にされたのは、この地球でってことだよな。

 地球で神に赤ちゃんの姿にされて、遠くの星に飛ばされた。

 それから三千年も封印されてたのに、年は取らなかったのか?」

「封印中は体が老化しない術をかけられた。

 老化して罰の途中で死んで楽になる、なんてことがないようにな。

 ただ感覚としての時間だけがある。」

「行き帰りはどうしてたんだ?」

「光の姿になって移動するので、時間は流れない。」

「封印はいつから始まるんだ?星に着いてから?」

「それぞれが目的地の星に着けば、即座に始まる。

 神が事前にそう仕掛けておいたらしい。

 罰が終われば、今度は即座に光の姿になってこの星に戻る。

 帰りももちろん、移動中は時間が流れない。」

「わかった、それだよ。」

「・・・何だと?」

「移動中も、罰の最中も、時間は流れない。

 でも、地球にいる時は、織姫と彦星も時間が流れている。

 彦星は織姫よりも先に地球にたどり着いているから、

 今は0歳の赤ちゃんの姿ではないんだ。

 知ってるか?

 織姫と彦星の星って、地球から見ると同じような星だけど、

 実は地球との距離がけっこう違うんだよ。

 織姫の星はベガ、地球までの距離はおよそ25光年。

 彦星の星はアルタイル、地球までの距離はおよそ16光年。

 1光年は、光が1年で進む距離のこと。」

「ということは、彦星は妾よりも9年先に、この星に到着していた?」

「いいや、違う。

 確かに、地球への帰り道は、彦星の方が9年早く着いてる。

 でも、それだと、行きの距離の違いを考慮してないだろう?

 ベガとアルタイルの距離の違いは、もちろん行きにもあるはず。

 地球からそれぞれの星に行くのに9年ずれて、

 それぞれの星から地球に帰るのにも9年ずれる。

 つまり、今の彦星は、0歳でも9歳でもなく、18歳のはずだ。

 まったく、何が少し先、だよ。

 彦星はお前よりも18年も先に地球にたどり着いてるぞ。

 織姫はちょっと時間にいい加減すぎるんじゃないか?」

「それはすまぬ。

 何せ妾は、時間感覚を失っているのでな。

 9年だの18年だのは、些細な時間でしかない。

 ・・・どうした?」

織姫がその男子生徒の様子に気が付いて話を止めた。

どうしたことか、その男子生徒は、顔が真っ青に青ざめていた。

鞄の中の織姫が心配そうに首を傾げながら尋ねる。

「どうかしたのか?」

「い、いや、何でも無いよ。

 とにかく、もう一度、村役場に行ってみよう。」

織姫と彦星がいた星と地球までの距離の差を考慮すると、

彦星は織姫よりも行き帰りで9年ずつ、合計18年早く地球に着いているはず。

その計算から導き出されるさらなる答えを、

その男子生徒は既に予期していたようだった。


 その男子生徒は、織姫を連れて、もう一度村役場にやってきた。

今度は0歳の男の赤ん坊ではなく18歳の男の子を探して。

すると応対した役場の職員の女の答えは、こうだった。

「この村で18歳の男の子?

 嫌ねぇ、そんなの決まってるじゃない。

 あなた1人だけよ。

 18年前って言うと、この村の子供が少なかった時期でね、

 大人も少なくなって大変だったのよ。

 子供どころか、子供を産む大人がいないようなありさまで、

 あなたのご両親が出生届を持ってきた時のことは、

 今でも覚えてるのよ・・・あら、どうしたの?」

とても話を聞いている気分にはなれず、

その男子生徒は話の途中で村役場から出て行ってしまった。

ただならぬ様子を察したのか、鞄の中の織姫は大人しかった。


 18年前、彦星が落ちてきたはずのこの村で、

産まれた男の赤ちゃんはただ1人、その男子生徒だけ。

それが何を意味するのか、

その男子生徒は確認せずにはいられない。

村役場から家に帰って、両親に向かって、その男子生徒は問う。

「父さん、母さん。

 18年前、何があったのか教えて欲しい。

 もうだいたいのことは予想がついてるから。」

すると、両親は顔を見合わせ、真摯に答えてくれた。

「そうか、お前にこの話をする時がやってきたか。」

「いつまでも子供だと思っていたのに、成長したのね。」

「そうだな。・・・よく聞きなさい。

 お前は、私たち夫婦の本当の子供ではない。」

「そう。

 わたしたち夫婦は、結婚してすぐに、

 子供を授かることはできないとわかってしまった。

 でも、どうしても子供が欲しくて、

 18年前の七夕の日の夜に、お星さまに祈ったの。

 どうか、赤ちゃんをくださいって。

 そうしたら、願いが叶ったのよ。」

「近所の森に星が落ちて、そこには玉のような赤ん坊がいた。

 きっと、神さまが私たち夫婦の願いを叶えてくれたに違いない。

 だから、私たちはその赤ん坊を拾って、

 我が子として育てることにしたんだ。

 拾ったのは男の赤ん坊だった。それがお前だよ。」

「賢い子でしたよ。

 生まれて間もないのに、わたしたちの顔を見るなり、

 もう人の言葉を話したんですもの。」

そうしてその男子生徒は、

自分の出生と、彦星の現在とを知ったのだった。


 ちょっと一人で考え事がしたい。

その男子生徒は両親にそう言って家を出た。

今は夜の静かな森の中にいる。

一人で、とは言ったものの、

担いでいる鞄の中には、織姫である赤ん坊が入っていた。

どうしても連れていけと言って聞かなかったからだ。

「どうした?

 お主が彦星だと、まだ信じられないか?」

そう語りかける織姫に、その男子生徒は静かに答えた。

「いいや、思い当たる節があると思って。

 僕は優秀すぎると学校で言われていたけど、それもそのはずだ。

 だって僕は神さまの娘婿だったんだもの。

 18年前、僕は空からここに落ちてきたんだね。君と同じように。

 どうして僕は、自分が彦星であることを忘れていたんだろう。

 でも、その理由が、今ならわかる。

 きっと彦星は、大事なものとして、記憶を奪われることを選んだんだろう。」

「それは、妾のことを忘れたかったからか?

 妾との楽しい記憶を消すなんて、なんと薄情な男子か。」

「いや、違うよ。自分のことだからわかる。

 彦星が記憶を捨てたのは、罪悪感からだ。

 自分のせいで織姫を巻き込んで、

 父親である神の怒りに触れて一緒に罰せられてしまったのだから。

 本当は織姫から自分に関する記憶を消したかったけど、

 大事なものとして選べるのは自分のものだけ。

 織姫きみの中の僕の記憶は選べない。

 だから、自分の記憶を消して、織姫と他人になろうとしたんだ。

 そうすれば、織姫は自分のことを諦めてくれるかもしれないから。」

「なるほど。しかしそれは無駄だった。

 こうして妾は、彦星であるお主を探し当てた。

 もうジタバタせぬだろう?

 妾ともう一度、夫婦めおとになってもらうぞ。」

そう話す今の織姫は、生まれたての赤ん坊の姿。

その男子生徒は苦笑するしかなかった。

「それ本気で言ってるの?僕は君より18歳も年を取ってるんだよ。」

「18年くらい、気にすることはない。

 なにせ、妾とお主は、

 生まれてから3000年以上も経っているのだからな。」

それももっともだ。

その男子生徒はそう思う。

でも今は、ついと顔を背けて、それからこう答えるのだった。

「そうだなぁ。

 君と僕と、もう一度夫婦になれるかはわからないけど、

 まずは、友達から始めよう。」



終わり。


 今年ももう7月、七夕の話を書きました。


織姫と彦星がいるとされる星は、地球からの距離がかなり違うようです。

もしも、光の速さで移動できるとしても、その差はおよそ9年ほど。

光の速さで移動する物体は時間が止まるので、

先に目的地に着いた方が9年分、先に年を取ってしまう。

それでは織姫と彦星は随分と年の差婚になってしまうだろうな。

そんなことを考えていたら、この話が出来上がりました。


織姫と彦星が年の差を作らずに一緒になる方法。

それは、お勤めを終えた織姫と彦星が、バラバラに地球に向かわず、

まずはお互いの中間地点で合流してから一緒に地球に向かう、

というのが正解でした。そんなことが可能ならという話ですが。


お読み頂きありがとうございました。


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