二十九 人々が集う場所は
「サンタくん、あなたが行きたい外の定義に沿っているかはわからないけれど」
『あん?』
外に出かける約束を取り付けた翌日、京之助が運転するトラックの助手席で黒実が思いついたように話し始めた。
真白とアホウドリは荷台、京之助はあんまり自分から話すことがないからな。
もしかしたら黒実なりの退屈しのぎだったのかもしれねえ。
「私たちが今向かっているアクアタウン鳥崎は、この辺りでは一番大きな複合型の商業施設よ。生活雑貨はもちろん、カジュアルからフォーマルまで幅広い衣服店のテナントが入っていたり、映画館やゲームセンターみたいな娯楽施設が併設されていたり、若者から家族連れ、高齢者まで様々なニーズに応えられるスポットだと言えるわね」
『つまり、でかいデパートなのか?』
「デパート、とは、少し違うでしょうね。大きな建物の中に、いくつもの店舗が入っているわけではないの。拓けた海岸沿いに小洒落た町並みを設けて、買い物とレジャーの両方が楽しめるようなコンセプトで建設された場所よ」
レジャー、とか、コンセプト、とか、よくわかんねえ横文字は無視するとして。
要するに。
「商店街みたいなもんってわけだ」
「近場の飲食店が充実しているという点も重要ね。定食屋やファミリーレストランのような大衆食堂はもちろん、居酒屋や良い雰囲気のバー、高級レストラン、屋台のようなB級グルメ、フレンチ、イタリアン、インド料理などなど多種多様な食を楽しむこともできる」
『繁華街もあるってことな。わかったわかった』
「それだけじゃないわ。最寄りの鳥埼駅は地下鉄、特急列車、新幹線、高速バスと主要な交通機関の拠点になっていて、付近の住民はもちろんのこと、他県からのアクセスも比較的容易なの。そのせいか、休日になるとアクアタウン鳥崎の周辺はたくさんの人で賑わうことになる」
『はあ。交通の便が良くて、栄えてるんだな』
なんでこいつはこんな回りくどい言い方しかできねえんだ?
一周まわってわかりにくいったらありゃしねえ。
わざとやってんじゃねえのかとすら思う。
『それで? 黒実、お前何が言いてえんだよ』
サンタボールに憑りついて、飲み物用のホルダーの中に収まっていたオレの質問に対し、黒実は深いため息を吐きながら答えた。
「私、人混みって嫌いなのよね」
『……褒めてるわけじゃなかったのかよ』
「そうね。私はうろついても楽しめそうにないから、トラックの荷台で寝てるわ。どうせアホウドリの傍に誰かついてなくちゃいけないんだから。適材適所でいきましょう」
『お前、そんなんで生きてて楽しいのか?』
呆れ半分に言ったオレの言葉に対して、黒実は軽く眉を上げて笑い、
「それなりにね。とにかく何かあったらすぐ連絡しましょ。お互いに」
そんなやり取りをしたのが、今から大体二時間くらい前のこと。
黒実の説明のとおり、遠目に海が見える海岸線沿いの専用駐車場にトラックを停め、オレたちはアクアタウン鳥崎なる場所に繰り出した。
オレはサンタボールに憑りついたまま京之助の上着のポケットに潜り込んでの出発。
黒実は車の中での宣言通り、荷台でアイマスクを着けて早々に眠り出し、ついてくる素振りすら見せなかった。
結果として、京之助と真白が二人並んで街を歩く形となり、オレの目論見は見事達成された。
――はずだったんだがなあ。
私は田舎の出身なので、都会の街並みを歩いているだけでもわくわくした気持ちになります。




