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二十一 幽霊の秘密は見抜かれていた

 メインヒロインはこっちです。

「京ちゃん、あなた今から二度寝してくれない?」


 黒実がそんなことを言いだしたのは、トースターで焼いた食パンをもそもそ食っている時だった。


「は? 二度寝って、黒実ちゃん、どういうことっすか」


 藪から棒な提案に目を白黒させる京之助。

 黒実は食パンの耳だけをちびちびとかじりながら、それに答える。


「あなたに憑いた状態のサンタくんと話がしたいのよ。ちょっと思いついたことがあるの」

「思いついたこと? いや、憑かれるのは構わないっすけど……」

『別に京之助が寝てなくたって、憑りつけるぜ。こいつが抵抗しなきゃいいだけの話だ』


 二人が飯食ってる間することがなくて、サンタボールの姿で食卓の上をウロチョロしていたオレは動きを止めて黒実を見上げる。

 京之助に憑いて喋るのにはもうだいぶ慣れてきた。

 意識があろうがなかろうが、大した違いはない。


「私は人間の姿のサンタくんとだけ、お話したいのよ。京ちゃん抜きで、ね」

『なんだそりゃ。この姿じゃ駄目なのか?』

「駄目なのよ。それじゃ何の意味もない。とにかく京ちゃんは寝て。サンタくんは寝付いた京ちゃんに憑りついてガレージに来ること。お願いね」


 そう言って、黒実が再び食パンを耳から食べていくのに夢中になり、ろくに返事もしなくなったのが、もう一時間くらい前のこと。


 日も高く昇った時間に二度寝をする、というのがなかなかの難題だったようで、京之助は布団の上でかなり長いこと唸っていたのだが、今しがたどうにか寝付きやがった。


 オレはその体を乗っ取って、ガレージの方に向かう。


 やかましい音や、強い衝撃には注意しねえとな。

 京之助が起きたらまた振り出しだ。


 言われた通りガレージにたどり着くと、黒実がパソコンの前に座って、なぜか三枚もある画面と睨めっこしているのが見えた。


 背後から近づいてみるが、よほど集中しているのか黒実は気づく様子がない。


 パソコンの三枚の画面では、正体のわからない数字やら英語やら、メーターみたいなもんが蠢いていた。

 黒実はキーボードで何かカチャカチャやったかと思えば、唸って手を止め、またカチャカチャ手を動かすことを繰り返している。


 いかにも難しいことしてますって雰囲気だな。


 そしてオレは小難しいことに興味がねえ。

 話があるってんなら、手短にすませるに限る。


「おい、黒実。来てやったぞ。これでいいんだろ?」

「うん。京ちゃんの声と、サンタくんの口調。それで来てくれるのを待ってたわ」


 オレが話しかけたことで黒実は手を止め、回転式の椅子をくるりと回して振り返る。


「同じ顔のはずなのに、そうしていると別人みたいね。すごく、不思議だわ」


 座ったまま、俺の顔をしげしげと見つめてくる黒実。


 確かにオレと京之助の中身じゃ真逆もいいところだろうしな。

 表情の違いも相当なもんだろう。

 同じ体でも、兄弟のふりをすることくらいはできそうだ。


 ま、それは置いておくとして。


「お前、何してたんだ?」


 オレは黒実に問いかける。

 全く興味ねえが、話のとっかかりってやつだ。


「私? 暇だったから、このコンピュータとお話してたのよ」


 黒実はパソコンの方をちらりと見て、そう答えた。


「お話だあ? そのパチパチするやつでか」

「パチパチって、もしかしなくてもキーボードのことよね? そうよ。このコたちコンピュータっていうのはね、人間が作ったものだけど、人間の言葉を理解するのが難しいの。だから私がこのコたちの言葉をキーボードで打ち込んであげて、話しかけるのよ」

「よくわからんが、外国人と通訳みたいなもんか?」

「そんなところ。私みたいに人間とコンピュータの言葉の両方を使える人は、今じゃそんなに珍しくないわ」


 コンピュータとお話、ねえ。

 オレがトンネルで暇を持て余してる間に、妙なことができる時代になっちまったもんだ。


 ただまあ、幽霊に憑りつかれた人間と喋ることと比べたら、そっちのほうがよっぽど現実的なのかもしれねえけどな。


 そこでオレは、ふと思いつく。


「そんじゃ、お前が作ったとかいう、あの喋る機械はどうなんだよ? 人間の言葉、使えてるじゃねえか」

「アイビスは……そうね、レベルで言えば人の言葉を勉強し始めたコンピュータくらいのものかしら。それでも、あそこまでたどり着くのには何年もかかったわ」

「あんだけ色々できるってんなら、オレと大差なさそうだけどな、あいつ」


 オレは部屋の隅で微かに唸っている、黒くて四角い箱のような機械を見つめる。

 アイビスとかいう機械は、黒実の言われたことは忠実にこなしてる。

 アホウドリだって動かせる。


 オレがここにいなくても、そのうちあいつが何とかするんじゃねえかと思えて仕方ねえ。


 そんなオレの内心を知ってか知らずか、黒実はとんでもない、と首を横に振った。


「アイビスのように言葉を理解できるということと、あなたのように自分で何か考えて行動するということは、似ているように思えるけれど、まったく違うことよ」

「わかんねえよ。どういうことだ、そりゃ」

「アイビスは、というかコンピュータはね、言われたことしかできないの。裏を返せば、言われなかったら何にもできない」


 ふっと息を吐いて、黒実は目の前のパソコンのディスプレイを指先でつつく。

 その表情にはどことなくつまらなさそうな、それでいて寂しそうな色が浮かんでいた。


「前に進め、と言われたら前に進むことしかしない。荷物を持てと言われたら持つことしかできない。道を歩いている最中に重そうな荷物を持っているおばあさんがいたら、気まぐれに助けてあげられるのが人間よ。コンピュータにはそれができない。言われたことは忠実にこなすけれど、ほどよくとか、適当にとか、何のためにとか、そんな曖昧な判断はできないのよね」


「要するに、頭が固いってことだろ」

「そ。だから当然、コンピュータは人間と口喧嘩なんてこともできない」


 さっきのあなたと、真白みたいにね。

 そう言って、黒実は微笑んだ。


 だから、オレと機械は違うってか。


「けっ、厭味ったらしい言い方すんじゃねえよ。てめえも内心、腹を立ててんだろ?」

「いいえ。さっきは妹がごめんなさいね。あの娘は私と違って熱くなりやすいたちなの」


 答える黒実の表情は、言葉の通りいたって穏やかだった。

 落ち着きすぎてると言ってもいいくらいだ。


「お前さんは随分、冷静じゃねえか。オレがアホウドリを動かせねえと、困るんだろ?」

「心の振れ幅が小さいのよ、きっと。それが私と真白のそれぞれの良さで、欠点でもあるわ」

「そーかい。確かにお前ら、全然似てねえもんな」


 黒実と真白の様子を思いうかべて、オレは肩をすくめてみせた。

 性格だけじゃねえ。髪も肌も、服装も、趣味も得意なことも、全く違う。


 双子だからと言って全部同じってのも気持ち悪いが、同じ親から生まれて、同じように育って、ここまで似てないのも妙な話だ。


「違うところは多いけれど、目指すものは一緒よ。私たちは……」

「アホウドリを動かしたいんだろ? わーってるよ、何度も何度も聞かされて、いい加減耳にタコだぜ。ま、耳なんざねーんだけどよ」

「あら、今はちゃんとあるじゃない。借りものだけどね」

「揚げ足取るんじゃねえ」


 オレは鼻を鳴らして、黒実から目をそらす。

 自分の考えに合わせて自然と体が動く、なんてのは、幽霊の時にはなかった感覚だった。

 そういえば特に意識もせずに息や瞬きなんかもできてるんだな。

 人間だった時のことを、覚えてるってことか?


 誰の、どこにだ?


 ……それはあんまり、深く考えすぎないほうが良さそうだな。


 何か思い出したとして、ろくでもねえ気分になるに決まってる。


 なんか別の話はないもんか。

 そこでオレはふと、思いついた。


「なあ、黒実。トンネルであの尻尾野郎をぶっ飛ばす前、お前らのじいさんを見たぜ」


 言うなら、今かもしれないと思った。

 本当は、黙っておくつもりだったんだがな。

 もしかしたら、もう、オレはあのデカブツを動かせないかもしれねえ。


 それならせめて、まぐれの一度で起きたことくらい話しておこうと思ったんだ。


「おじいちゃんを、見た? サンタくん、それどういうこと?」


 眉根を寄せた怪訝な顔で、黒実が訊き返してくる。

 確かに、そのままじゃ意味わからねえだろうな。


「オレと同じ幽霊を見たってわけじゃねえぜ。多分、アホウドリに染み付いてた執念みてえなもんだったのかもな。とにかく、知らねえじいさんの記憶が流れ込んできたんだよ」

「……おじいちゃんは、何て言ってた?」


 黒実にしては珍しく、おずおずといった様子でオレの顔を覗き込んでくる。


 死人、それも大切な相手の言葉だもんな。

 そりゃいくら落ち着いてるとはいえ、このくらいの歳の女なら構えもするか。


 ただまあ、大したことは言われてねえ。

 オレは自分が覚えていることをそのまま口にする。


「アホウドリには良い心を持って欲しかったんだそうだ。そんで、誰かの役に立てってさ。オレみてえな悪霊に向かって、無茶なこと言いやがるぜ」


 オレが、じいさんの望んでいたようなアホウドリの心じゃなかったのは分かってる。

 孫娘にセクハラかますような奴なんて、想像すらできなかったんじゃなかろうか。

 それは諦めてもらうとして、オレが伝えておくべきことはもう一つある。


「あとな、じいさん、お前らには幸せになって欲しいとさ」


 ガラにもねえことを言った。

 ただ、似たような身の上としちゃあ義理は通しとかねえとな。


 先に逝っちまった側はどれだけ後悔しても、もう話す口がねえんだから。


「そう」


 オレの言葉を聞いた黒実が目を伏せる。

 その表情は変わらず、オレには何を考えているのかが読み取れない。

 数秒だったはずなのに、ひどく長く感じられる沈黙があって、


「……じゃあ、頑張らないとね」


 黒実は短く、それだけ呟いて顔を上げた。


「教えてくれて、ありがとう。心優しい悪霊さん」

「よせ。気色わりいんだよ」


 薄い笑みを浮かべてこっちを見ている黒実に向かって、オレはシッシッと手を振った。

 聞いたことをそのまま伝えただけだ。礼なんざ言われるようなことはしてねえ。


「それじゃあ、本題に入ろうかしら」


 今のやり取りで、黒実の中のスイッチは完全に切り替わったらしい。

 さっきまでとはうって変わった明るい声色で話し始めた。


「本題?」

「ええ。あなたがなぜアホウドリを動かせなかったのか、よ。ここに呼んだのはそれを確かめるため」

「なぜもくそもねえよ。あの鉄の塊、重すぎるんだよ。どうすれば動かせるのか、さっぱりわからねえ」


 オレは空気とか、地面の小石とか、軽いものならわりと広い範囲でも動かせる。

 後はすまほやラジオみたいな電気で動く機械も大丈夫だ。

 アホウドリも機械といえば機械なんだろうが、どこをどうすればいいのか全く勝手がつかめねえ。


「それはおかしいわ。重さは関係ないはずよ。だってあなた、トラックも動かせるんでしょ」

「あ」

「確かにアホウドリは普通の人間の何倍も重いけれど、トラックと比べたら十分の一以下よ。つまり、動かせない原因は別にある」

「んなこと言われてもよお……オレの感覚じゃ重いとしか言いようがねえんだって。よくわかんねえけど、トラックと、人型のロボットじゃ、複雑さが全然違うんじゃねえのか?」

「あら、それも変よ?」

「ああ? 何でだよ」

「あなたが今動かしてるそれは、何?」


 オレが、今動かしてるもの?

 京之助の、体だ。


 当たり前のように息や瞬きをして、歩けるし、話すこともできる、人間の体。

 形だけで言うならトラックよりも、こっちの方がアホウドリに近いのは間違いがない。

 だったら。


「……違いは、なんだ?」


 思わず呟いたオレに対して、黒実は満足げに頷いてみせる。


「私の考えでは、それが答えよサンタくん。あなたはアホウドリを、機械として、動かそうとしているの。自分の、体として、ではなくね。だから、使い方がわからない。わからないものは、動かせない」


 そうだ。

 オレは、トラックの動かし方は知っていた。


 どうやって操作するのか知っていたから重くても、動かすことができたんだ。

 アホウドリもどう扱えば動かせるのか考えてた。

 自分の体だ、なんてことは考えてもいなかった。


 トンネルで初めて動いた、あの時以外は、ずっと。


「あなたがアホウドリを動かすための条件は、一つ。あのコを自分の体だと、捉えることよ。今そうやって、京ちゃんの体に憑りついているみたいにね」


 黒実は一言一言を区切るように、ゆっくりとそう告げてきた。

 なるほど、だから京之助に憑りついたこの状態じゃなきゃ駄目だったわけだ。

 わざわざ京之助を眠らせた理由がわかったぜ。


「アホウドリを、あの鉄の塊を、自分の体だと思えってか。お前、無茶苦茶言うんじゃねえよ」


 はあ、と思わずため息が出た。


 やれと言われてできるようなもんじゃねえ。

 要は感覚の問題だ。あの鉄の塊に憑りついた時、オレは金属の冷たさと重さしか感じることが出来なかったんだから。


「無茶を言っているのは百も承知よ。でも、信じて。あのコはただの機械じゃない。まわりの世界を感じ、意のままに動ける機能は備わってる。私が、与えたの」


 真っ直ぐにオレの目を見て、黒実は言った。

 その言葉に嘘はないんだろうと、信じざるを得ないような力がその視線には込められている。


 それに応える自信がなくて、オレは思わず目を逸らしてしまった。


「お願い。あのコをあなたの一部にしてあげて。大丈夫、きっとできるわ」

「……何で、んなことがわかんだよ」


 アホウドリを、オレを、そうやって信用できる根拠がどこにある?


 そんなオレの疑問に対する黒実の答えは、とても静かで、温かかった。


「あなたの心が、間違いなく人間のものだから。あのトンネルでアホウドリが動いたのは、偶然や、何かの間違いじゃないわ。その証拠に、ほら」

「……っ! おい、黒実」


 言って、黒実は京之助の、今はオレの手を引いた。

 そして、次の瞬間、黒実の腕がオレの首筋に回され抱きしめられる。


 突然のことに、まるで反応できなかった。

 オレは逃げることもできず、されるがままになる。


「今ならちゃんと、感じられるんでしょう? 寂しがりな悪霊さん」


 耳元で囁いてくる黒実の声。

 その言葉の意味が、オレにはわかった。


 オレにしかわからねえと、思ってたのに。


「……お前、気づいてやがったのか」

「確信はなかったわ。だけど、仮説を立てる材料はあった。なぜあなたは真白にばかりちょっかいをかけて、私に何もしてこないのか」


 ……やれやれだ。

 こいつ、ただ僻んでるだけかと思ったら、そこまで頭が回ってやがったのか。


 そうだ。

 オレが黒実ではなく、真白にばかり手を出す本当の理由。


 それは。


「あなた、何かに触れている感覚がないんでしょう?」


 あたりだよ、ちくしょう。


 オレは幽霊だ。

 宙を飛べるし、壁も通り抜けられる。

 普通の人間には見えもしない。当然、触られもしない。


 そして、もう一つ。


 オレには、何かに触られたり、触ったりする、そんな感覚がねえ。


「あなたが人に悪戯をするのは、相手が反応を返してくれるから。相手の反応を見れば、自分が何かに触れているという感覚を得られるから。そんなあなたにとって、派手に騒ぎ立てる真白は格好の獲物よね。私みたいに声も出さない、反応も鈍い女と違って」

「……体形が好みじゃなかったってのも、事実だからな」


 全部見抜かれていた腹いせに精一杯の憎まれ口を叩いたつもりだったのだが、


「へえ? じゃあ、今の感想を聞かせてもらおうかしら」


 ぐいっと、黒実の腕に力がこもり、より強くその体がオレに押し付けられる。

 …………あれ? 黒実、こいつ。

 思ってたより全然、ていうかむしろ。


「でか、く、ないですかね?」

「隠してるのよ。恥ずかしいから」


 生身の体で、くっついている部分に感じる圧倒的な柔らかさと、存在感。

 そりゃ、双子の姉妹だもんな。多少の差はあっても、血は争えねえってことか。

 隠れ巨乳って、いるんだな。本当に。


「わかった。オレの負けだよ……おい、いい加減離せ。京之助が起きたらまずいだろが」

「あら、じゃあ、アホウドリを動かすの頑張ってくれる?」

「やれるだけは、やってやるよ。約束しちまったからな」

「それを聞いて安心したわ。じゃ、はい、おしまい」


 パッと黒実が手を放して、体が軽くなる。

 名残惜しいのは間違いねえが、こんな小娘にされるがままってのも癪に障るからな。


 オレは鼻を鳴らして、腕を組む。


「とにかく、アホウドリを自分の体だと思えばいいんだろ。話が終わったんなら、もう京之助から離れてもいいんだよな?」

「ええ、そうね。でも、最後に一つ、いい?」

「まだなんかあんのかよ?」


 言いながらオレは少し身構える。

 コイツ、スカした顔して何してくるかわかんねーからな。


 だが、オレの警戒は杞憂に終わった。


「私は、その、いわゆる人の気持ちというのを理解するのが苦手な人間なのだけれど……」


 黒実はさっきまでの大胆な行動が嘘のように、俯いて、小さく言う。


「おじいちゃんは、アホウドリが完成すれば喜ぶのかしら」


 それは一体、誰に向けられた問いかけなのか、何を確かめようとしているのか、わからなかった。


 単純にじいさんの声を聞いたオレだから、何か答えらしいものを得られるとでも思ったのだろうか。


 黒実にしては、不自然なくらい、曖昧な質問だった。


「知らねえよ。オレはお前のじいさんじゃねえ」


 頭の良い奴が考えてることなんて、オレみたいな幽霊にわかるわけねえだろ。

 どうしてこう、賢い人間ってのは物事をややこしくしたがるんだろうか。

 もっと単純でいいんだよ、単純で。


「完成して、お前が嬉しいと思うんなら、それで十分だろ」


 誰かのために、とか、そういうもんがややこしくてめんどくさくなったら、とりあえず自分のためにやってみりゃいい。


 オレはずっと一人だったから、そうしてきた。その方が気楽だったからな。


「……難しいこと、言うのね」


 言うだけ言って背を向けて歩き出したオレの耳には、黒実のそんな声が聞こえてきた。


 なんじゃそりゃ。難しいのはお前の頭の中だよ。


 それきり黒実は黙ったまま。

 オレは、聞こえなかったふりをしてガレージを出たのだった。

 昔っから、漫画でもアニメでも、小説でも、ヒロインは「じゃないほう」を好きになりがちな傾向にあります。

 逆張りとなじられることもあるのですが、ほんとにそっちが好きなのだから仕方ないじゃないですか。

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