二十、
「お世話になりました」
みんなでメイドさんたちに頭を下げ、別荘をあとにする。
青くキラキラした海が次第に離れていく。
「夏満喫したーってかんじ」
「すごく楽しかったね」
「気持ちよかったわ。海なんて久々で」
まだ興奮の余韻が収まらない大介は、わーっと両手を高く上げている。それでも手が車の天井にぶつからないのがすごい。
「気が向いたらまた招待するよ」
「えー。気が向かなくてもお願い!」
「次は聖のほうに行ってみてーな」
「え、俺?」
「おまえんちもあるんだろ? どうせ」
「どうせって……」
聖は嫌そうな顔をしながらも、ぽつりと、「ある」と答えた。
「そんなら冬は聖んちな!」
わいわい、とまだ先の冬休みの話が始まる。
そんななか、小夜は車窓から外を眺めていた。
もう海は見えない。会話に混ざらず、山中の道から人家がぽつぽつと流れていく。そんな景色の向こうに、小夜は昨日とそれよりも前――睦美と仲なおりしたときのことを見ていた。
無意識に微笑んでいる。たしかに、いい思い出になったのかも。
「そうだ、あとで写真アルバムにして送るね」
送る、というのはスマートフォンのメッセージアプリ内でのことだ。
「昨日の夜の?」
「それも含めるけど、別荘の全部」
「写真なんて、撮ってたっけ?」
「撮らせておいたに決まってるでしょ」
しれっと答える綾乃。そういう力を持つ執事さんがいたのだろう。
「思い出は共有しないとね」
ぱっちん、とウインクする綾乃はとてもかわいく決まっている。
しかし小夜にはちょっと意地悪く見えた。
「セクシーショットもあるよん。女子も男子も」
やっぱり。
「こ、この六人だけの共有にしようねっ」
睦美の提案に、綾乃以外の全員がかくかくとうなずいたのだった。
思い出は、記録として形に残るものはもちろんいいけれど、小夜はそれよりも心のなかで記憶として残しておきたい。そう願うのは、小夜だけだろうか。
スマートフォンを持っていない小夜は、そのアルバムを見ることができない。どっちにしろ、見なくていいのかもしれない。いろんな意味で。
とにかく楽しんだ夏休みの海。
太陽の陽射しを反射する海、夕日の輝き、夜空の星々の煌めき。
どれよりもずっと、その思い出はキラキラと輝いている。
来週からは学校が始まる。何事もなく、普通に、学校生活を送れることを祈った。




