十四、
「ど、どうしたんですか。らしくないですよ」
絨毯に押し付けられ、さすがに動揺してしまう。
「俺も男だよ?」
「そんなことは知っています! でもこういうことは他の女性のほうが喜ばれ」
「だめ。君じゃなきゃ」
「なんで」
声が、震えそうになる。
「君は俺の大切なものを奪ったんだ。けれど俺は君からなにもとることができない。なら、奪ってしまえばいいって」
「私は先輩からなにかを奪った覚えなんて」
!
口を塞がれる。押し返したいのに、できない。
「んっ……わ」
「これで一つ」
舌をなめてにやりと笑う目の前の男はもはや聖騎士ではない。正気でない。
そう思ったとき、“あれ”が先輩の背後に見えた。あの、黒いどろどろのモノ。
「せ、せんぱい、それ……!」
「黙って」
二度目の口封じ。数秒してやっと解放された口で、なんとか叫ぶ。
「やめてくださいっ」
「声が震えてるよ?」
この人、楽しんでる。
「君もそんな顔するんだね。怯えてる顔。やっと見せてくれた、新しい面だね。これで二つ目かな」
「先輩、もとに戻ってっ」
あのナイフはカバンに入っている。届かない。どっちにしろ、先輩を押し返すのに手いっぱいで、カバンにさわる余裕もない。
「そんなに暴れたら、ほら、スカートあがってるよ?」
「!」
足をばたつかせ、体をよじっていたからか、制服のスカートが大きく持ち上がり、太ももが露わになっていた。
「奪えばいい。――そうだよね?」
誰に対して聞いているの?
しかしそれは口にできなかった。
しゅるり、と首のリボンがほどけ……いや、外されたのだ。
「な、なに、を」
ぷち、ぷち
ブラウスのボタンが外されていく。先輩の湿気のある息が首元にかかる。
助けを呼びたい。でも声が出ない。体に力が入らない。
耳たぶを吸収される。びくっと体が震えてしまう。だめ、我慢して、私。
怖い。
先輩が背負う黒いモノではなく。
首筋につつぅ、とまた粘り気のあるものがつたう。きゅっと反射的に首をすくめてしまう。
くすりと声がした気がした。
「怖い?」
こわい。
目の前の男が。
鎖骨に吸い付かれる。この人の手は、いま、どこにあるの……
コワイ。
小夜の思考は停止しかける。
誰か……っ
「何してるんですかっ?!」
ばしん、と部屋に大声が轟いた。聖騎士サマが小夜を絨毯に押し付けたまま身体を起こす。
「今、取組み中なんだ。ノックもしないなんて、マナーがなってないね。大佛聖君」
ドアの前に、聖が立っていた。




