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夜のキャンバスに色をからめて  作者: ぬりえ
四月
3/230

三、

 翌日。

 小夜は薬草学の実習に昨日買った刃物をさっそく使おうと用意していた。

 実習は薬草の実から汁を取り出すというごく簡単な個人作業。どう扱えばより多くの汁を取り出せるのか、考える実習だ。

 小夜はそれが、切るのではなく押しつぶすのが正解であることを知っている。わざわざ刃物を用意させてこの実習をするのは、発想の転換が必要で、少し意地悪な実習である。

 正解を知っているが、小夜は手に入れたこれの切れ味を知りたくて、ほんの少し、切ってみることにした。


 まだ刃先を見ていなかった。鞘から抜いてさえいない。なぜか昨夜は疲れが襲って、帰って日課の研究もろくにせずに眠ってしまったのだ。


 どきどきしながら鞘から刃を抜く。当然だが、刃があった。が、しかし。


 カッターみたいじゃない、これ。


 小さく短い刃。取り換えのきく百均のカッターを思い浮かべてしまう。外見はこんなにいいのに、中身が残念だった。思った以上に安く購入できたことにも納得がいくというものだ。


 たしかに刃物であることにまちがいはないわね。


 手にしたときはあんなに高揚していた自分を嘲笑う。

 でも使い心地はなかなかで、小夜はなんなく課題を終えたのだった。



 放課後、いつもどおりに図書室へ向かう。とりあえず授業で使うナイフについてはあれで工面しようと決める。特別なものを新たに買う必要はない。もともとごちゃごちゃしているところは好きではないので、商店街に行かずに済むのは都合がよかった。図書室で課題を済ませ、本を読んでいるほうがよっぽど有効に時間を使えるというものだ。


 しかしなぜか、足が思うように進まない。どうしたことか。昨夜の眠気がまた襲ってきたかのようだ。それはだんだんと強くなって、足元からどんどん力が抜けていく。

 図書室まですぐそこなのに。


 かくん、とそのまま膝が崩れた。頭がふわふわする。


 ――おい、大丈夫か? おい!


 誰かの声が聞こえた気がしたが、そこで小夜の意識は途絶えた。


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