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002、生き残るために

 というのが数日前の出来事。

 少し大人っぽくまとめてみた。

 いや、ほら、なんか普通だと味気ないからね?

 だからちょっと大人っぽくしようかな〜って。

 ほら、人生のスパイスみたいな?

 ………。

 なんでもないです。


 ごほん。

 それでね、なんとか無事にスライム生活?を送ってるよ。

 今日も最初にいた寝床から這い出て、ご飯を求めて歩きまわるのだ!

 どうもこの体はとてつもなく動くのが遅くて、人の赤ちゃんのハイハイの方が早いくらいなんだよねー。

 だから、もっと遠くに行こうとしてもめっちゃ時間かかるから近くの草を食べてるの。

 人間みたいに口でもぐもぐして食べるんじゃなくて、体のなかに取り込んで溶かすから消化っていうのが正しいのかな?

 あ、でも人間も胃で消化してるんだった。

 んで、この草は猫じゃらしの葉みたいにツーンって尖ってて、双子葉類みたいに二枚の葉が生えてるんだ。

 食べると体によく分からない充足感が流れ込んでくるの。

 それが体中に広がって、これがとても心地いいんだよね。

 なんかやみつきになるレベル。

 そして少しずつ体も大きくなってるみたいなんだよねー。

 今は直径約11センチくらいかな〜。

 あー!今適当だろって思った人いるでしょ!

 ちっちっちっ、甘いなぁ。

 僕だってちゃんと考えるんだよ!

 ほら、周りにたくさん太くてずっしりしてる木があるでしょ〜。

 それを元にしたの。

 木の切り株って座れるでしょ?

 そう考えると、木の直径って30センチくらいかなって思ったの。

 いい考えだと思わない?

 そんなに間違ってないと思うし。


 お、あそこに葉っぱ発見!

 葉っぱだと他にも葉っぱがあってややこしくなるから、うむ。雑草と名付けよう。

 では改めて、雑草発見!

 いただきます。

 はぁ〜、うまい。

 いや、味はないんだけどね。


 おー、あれは僕と同じスライムではないか!

 近くにも雑草あるし、挨拶?してこようっと。

 まぁ、声出ないんだけど。





 そんな自我を持つスライムが普通のスライムに近づいていると、『やつ』が現れた。

『やつ』は8本の鋭利の脚があり、いくつもの目もあり、下半身の先端から糸を出し、牙から毒を分泌して獲物を仕留める。

 そう、蜘蛛である。

 自我を持つスライムの目の前でそれは起きた。

 木の上から垂直に素早く降下し、その鋭利な脚を以ってスライムのビー玉みたいな形状のもの、変なスライムが核と名付けたそれを貫き、そのまま核を木の上に持ち去ったのだ。

 この間約三秒。

 核を失ったスライムはドーム状の体が溶け、地面に染み込んで消えていった。

 まるで何もなかったかのように。





 うぇーー!?!?

 ス、スライムが死んだ!?

 何今の!?一瞬だったよ!?

 蜘蛛怖っ!

 いつのまにいたの?全然気づかなかった。

 あのスライムが自分だと思うとゾッとする。

 よかった、自分じゃなくて。

 でも普通に考えて、ここ自然界だから当たり前なんだよね。僕は雑草しか食べないから実感してなかったんだけど、弱肉強食の世界なんだよね。

 うぐ、まだまだ日本の平和ボケしてた・・・。

 そんな調子だと生きていけないのに。

 今まで生きてこれたのは偶然、たまたま、運が良かっただけなんだ。

 早いうちに気づけてよかった。

 このまま行ってたら多分そう遠くない内に、なんで死んだかも分かんないまま死んでたと思うから。

 あの名も無きスライム君ありがとう!

 君のことを忘れないよ!

 君の死を無駄にしないよ!


 さて、100人中100人分かっていると思うけど。

 てか、そんなこと考えてないでさぁ。って思ってると思うけど。

 危ない!ここ危ない!

 あっという間に殺される!

 いつもの寝床に撤退だ!

 速やかに撤退だ!

 ほかの生物に見つかる前に撤退だ!

 撤退ったら撤退だー!


 こうして僕はびくびくしながら寝床に帰ったのだった。





 ーーーーーーーーーーー





 はぁー、戻ってこれた。

 疲れた〜。

 主に精神的に。

 いつもはルンルン気分とまではいかないけど、そんなに警戒しないで外に出ていたから、警戒しながら帰ってくるの大変だった。

 近くでガサって音がするたびに、びくっ!

 生物の遠吠えが聞こえるたびに、びくっ!

 急に音を立てずにスライム出て、びくっ!


 た、い、へ、ん、だった!


 もう嫌だなー。

 面倒くさいなー。

 びくっ!ってなりたくないなー。

 って思っても自分の命に関わるので、やらなければならない。

 うむ、生きるって難しくて大変だ。

 でも、スライムでよかったかも。

 肉食系の生物だと、他の生物を襲って食生活を保たないといけないだよね?

 狩れる自信がこれっぽっちも湧かない。

 今頃餓死で死んでる気がする。

 草食系の生物だと、肉食系の生物から身を隠して逃れないといけないんだよね?

 死なない自信がこれっぽっちも湧かない。

 生まれた日に死んでる気がする。


 そう考えると、スライムは雑食系だからご飯は問題なし!

 スライムボディは食べられない!

 食べられるとこは核しかない!

 核はスライムボディに比べて小さい!

 その核も酸性のスライムボディで守られてる!

 つまり、外敵なし!

 ダメじゃん!蜘蛛いるじゃん!スライム足遅いから襲われたら終わりじゃん!

 てか、外敵いないならスライム大繁殖してるはずだよね。

 だって雑草系スライムだし。

 ということは、蜘蛛以外にも外敵がいる………?


  うむ、作戦ターイム!





 ーーーーーーーーー





 目の前でスライムが襲われた日から数日後、僕は夜にご飯を求めて出かけている。

 どうも夜行性の動物がいないらしく昼よりも安全に行動できるみたいなんだよね。

 やったね!

 そういえば、みんなも気づいた?

 なんと、あの蜘蛛も夜は徘徊してないの!

 ふっふっふっ、見つけてしまった。

 蜘蛛に襲われない方法をな!

 いや実はね、僕も外に行かないで寝床でぬくぬくしたかったんだよ?

 でも、そうもいかない現実が待っていたのだよ。

 悲しいことに。

 あれから数日間篭っていたんだけど、体がどんどん小さくなって生まれた日?の大きさまで戻ってしまったの。

 それからお腹があるかどうか分からないけど人間でいうお腹減ったって感じがしてさ、あと2、3日ならギリ耐えられるけどそれ以上無理って感じだったんだ。

 だから、嫌だけど、本当に嫌だけど仕方なく外に出かけないといけなくなってしまったのだよ。

 誠に遺憾である。


 それにしてもやることなくて暇だったから、篭ってから1時間後くらい後に日寝床からじ〜と、じ〜〜と、1日中外を観察すると、夜の方が見かけるスライムが多く、他の生き物を見かけなかったの。なぜか知らないけどスライムの睡眠時間は短かくて、夜も楽勝で起きてられたからこそできた芸当だよね!

 そして、多分夜行性の生き物が少ないのかな?それでスライムの量が多いのかな?そうだよね?そうに決まってる!そうに違いない!って思って夜に行動するようにしたんだ〜。

 それが見事的中して、今までよりも遠くに行くことさえもできるようになったのだー!

 まぁ、怖くて寝床からあまり遠くに行けないけど。迷子になりそうってのもあるけど。

 それでね、雑草の他にご飯無いかなー?って雑草以外もいろんなの食べてみたんだ〜。

 てなわけで、各種ご飯の充足感まとめ!

 土は、充足感無し。

 木は、雑草と同じ量で2割くらい。でも量が桁違いだから時間があればお得なんだけど、木がなくなると他の生物に見つかりやすくなりそうで結局ほとんど食べてない。

 偶然落ちてた骨は、雑草の10倍くらいで今までに感じたことのない充足感が体を満たして、喋れたら絶対「うにゃー!」とか「ふひゃー!」みたいなへんな声を上げてたと思うほど凄かった。

 そして骨を食べる前と食べた後の体の大きさを比べると明らかに食べた後の方が1回りくらい体が大きくなってたから、おそらくあの充足感が体を成長させてると思うんだよねー。

 栄養みたいな感じなのかな?

 栄養………骨………カルシウム?

 いや、雑草や木からも取れるから違うよね?

 んーー。

 まぁいいや。

 それで体が大きくなるのは、ご飯との触れる面積が増えるから木とか大きいご飯を食べ易くなるからいいんだけど、困ることが一つ。

 他の生物から狙われやすくなるということ。

 体が大きくなると目立つから当たり前っちゃ当たり前だよねー。

 これは生死に関わる重大な案件なんだよ?

 いやいや、数日間何も食べなければいいじゃんと思うかもしれない。

 たしかにそうなんだけど、どうにもあの充足感は僕を強くするって僕のスライムとしての本能がそう囁いてるんだよね。

 だから何も食べないと、どんどん栄養?が減ってって弱くなっちゃうみたい。

 なんとかしなければ。

 スライムができること・・・。

 触手?んー、なんか違う。

 消化?関係ないし。

 形態変化?それだ!


 大きくて困るなら、小さくなれば良いのだ!

 形態変化で体を小さくする………。

 小さくする………。

 小さく………。


 分裂かなぁ。

 でもそれって結局栄養を分けるってことだから弱体化しそうだよね?

 分裂自体は他のスライムがしてたからできるって知ってるんだけどね。最初見た時はびっくりしたんだよ?

 分裂にも2つの方法があるみたいで。

 直径20センチくらいのスライムがプルプル震えると小さなコブが出来て、それが少しずつ大きくなりながら核が出来始め、スライムとコブの大きさが同じくらいになるとプツンって2つに切れて10センチの二匹のスライムが生まれる?分かれる?方法。

 だいたい20分くらいかかってたかな?

 最初見た時、『なんでプルプル震えてんの?』『おぉ、なんかコブが出てきた。』『なんかすごく大きくなっていってるんだけど、大丈夫?』『ス、スライムが増えた!?』ってなっちゃった。そうやって驚くのもしょうがないよね?


 もう1つの方法は、15センチの2匹のスライムがくっついてプルプルし始め、真ん中辺りに小さな核が出来てからしばらく経つと1回りくらい小さくなった、10センチのスライム3匹になってたの!

 こっちは30分くらいかなー。

 いや、体内時計で計っているから本当に合っているかどうか分かんないんだけどね。

 ほら、もしかしたら1時間掛かかっているかもしれないしー。


 え?なに?スライムへの挨拶?

 もちろんしたよ、夜だけど。

 まぁ、さっき話してた増えてる途中のスライムにはなんとなく恥ずかしくてできなかったけど、1匹でのろのろと進んでるスライムには話しかけたんだよ。

「ねぇねぇ、何してるの?」とか「あ、この雑草美味しいよね〜。」とか「待ってよ〜」とかいっぱい話したんだよ。

 でも、話しかけても何の反応もしてくれなかったの!

 まぁ、声出てないし心の中で喋ってるだけだから反応しないの知ってたけどさぁー、寂しかった。

 だからアプローチの仕方を変えたのだ!

 ぷに〜って僕の体を押し付けたり、頑張って乗っかってみたりしてみたの!

 そしたらね!

 すぐには反応してくれなくて僕にされるがままだったんだけど少し経つと、押し返してきたの!

 めっちゃ楽しかった!

 互いにぷに〜って押し合ったり、どっちが先に相手の上に乗れるか競争したり、何回も揉みくちゃになって遊んだの!

 いやー、控えめに言って最高だね!

 本当にもう、楽しかったんだよ!

 ふぁー、また今度しよう。

 ふへへへ、今度は何しよっかな〜。

 楽しみ〜。


 あれ?何の話から脱線したんだっけ?

 あ、思い出した、分裂の話だ!

 えっと、うん、やっぱり分裂は却下の方向かなー。

 スライムの個数が増えるかわりに体がちっちゃくなって弱くなってるし。

 今は量よりも質が欲しいからね。

 あ、それと。

 スライムの分裂は他の生物で言うところの繁殖だよね?

 そんな感じだよね?

 2体のスライムから1体のスライムが生まれてくるんだよ?

 1体のスライムから1体のスライムが生まれるのはちょっとよく分かんないけど………。

 これは繁殖しかないよね!

 やっぱり、うん、繁殖中のスライムには話しかけ辛いよ。

 それにしても不思議。

 こうやってスライムって増えるんだねー。

 そして食べられると。

 僕の種族が弱すぎるよー!

 悲しい。

 強くなるために他の方法見つけてやる!


  (考え中)(思考中)(案出中)


 ………圧縮。

 ん?

 んー!

 見つけたー!

 良い方法を見つけたぞー!

 分裂みたいに栄養を分ける必要性がない!

 弱体化もしないよ!

 やった!

 見つけたぞー!

 でも、どうやるんだろ〜?

 他のスライムやってるところ見たことないしなぁー、見つけてないだけかもしれないけど。成功したら見た目の変化がないから。

 まぁどちらにしても、やるしかないんだけどね。

 というわけで実践だ!


 んー!

 むー!

 んにゃー!

 とりゃー!

 むむむむっ!

 んりゃー!

 んぐぐく!

 うぬー!

 ぐぬぬぬ!

 うりゃー!

 うらー!

 まだまだー!

 ・・・・・etc





 ーーーーーーーーーーーー





 うむ、全然できない。

 これっぽっちもできない。

 笑っちゃうくらいできない。

 んにゃー!

 なんでできないのー!

 かれこれ数時間やってるはずなのに!

 くそ〜、人間に圧縮機能があればとっくの前にお茶の子さいさいなのに!

 急に圧縮なんて言われてもできる訳ないでしょ!

 スライムに何を求めてるんだよ!

 ばかー!


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

 できなさ過ぎていらいらしちゃった。

 うむ、これ以上はいけない。

 自暴自棄になってしまった。

 くそ〜。

 覚えてろよ!

 絶対出来るようになってやるからな!

 首を洗って待ってろ!


 練習するぞー!

 おー!





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