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只今、神楽面を創作中  作者: 「」
貴船・滝夜叉姫編
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第二話 弟子を辞めさせていただきます

 本当にすみません。予約投稿してあると思いすっかりと忘れていました。

 一週間前、琢磨は中々完成出来ないことから焦りが生まれていた。それは周りの事を見えなくする化け物であることを知らない高校生である。

 ただ一つに集中することは悪くない。ただ弟子がいることを忘れているのは悪い。そんな弟子は、師匠を支えるために毎日、ご飯を作ってくれていた。初日は寝坊助さんだと思っていたのだが、ここまでするとは、余程神楽面を習いたいのだろうと琢磨も思っていた。

 だが、結構急ぎな仕事によってそれすらも忘れて、神楽面に没頭していたある日の事。今日も今日とて琢磨は作業部屋に籠り、神楽面の製作に熱を注いでいた。昨日が金曜日だったことから徹夜していて、寝ていなかった。

 そんな時だった。撫子が、


「あの、そろそろ休憩を入れた方がいんじゃないですか?」


 と訊いてきた。琢磨は、


「でも、急ぎの仕事だから無理」


 と答えた。


「でも、身体は大事にしないとですよ」


 琢磨はイラっとしてしまった。そして、ちょっときつめな口調で、


「お前に神楽面の、職人の何が分かんだよ」

「何って……」

「何が分かんだって訊いてんだよ!」


 撫子はビクリとした。少し涙目になっていた。琢磨は続けて、


「自分だけのオリジナル、個性的でどの神楽団、社中にもない神楽面をつくる大変さをお前は知ってんのかよ!?それにだ、だいたいの仕事は有名な工房に取られて、俺のとこみたいな新人でただ名前だけは聞くよってとこはそこまでこないんだよ、だからもっと、もっと頑張りたいのにそれを弟子が邪魔してどうすんだよ。あぁ、イライラする。弟子なんて取らなきゃよかった……あっ」


 気付いた時には遅かった。涙を流しながら撫子は何処かへ行ってしまった。

 追いかけるのが筋なのだろうが、それより仕事と、琢磨は撫子を追わなかった。

 琢磨は作業部屋に籠った。

・・・

 次の日の日曜日。この日も徹夜をした。

 ピンポンとチャイムがなり、琢磨は重い腰を上げながら玄関に向かった。そこには、鳴子さんがいた。

 鳴子さんは静かだったが怒っていたのがひしひしと伝わってきた。

 とりあえず、琢磨は鳴子さんを家に上げることにした。

・・・

 食卓に入れ、缶コーヒーを取り出し、渡した。

 鳴子さんは口を開いた。


「なぜ私がここに来たか分かるね?」

「だいたいは想像できますが、自分も自分の都合があります」

「都合?何言ってんの、君が自分で弟子をとるって言ったよね」

「いや、それでも今は、何を教えればいいのか、それ以上に忙しいし」

「君は神楽面を逃げに使うのかい?」

「逃げに使っているわけじゃ」

「使っているじゃないか、今。この時に。自分は神楽面の製作があって弟子なんてとてもじゃないけど見れませんと。バカじゃないのか?」

「ば、バカって、あんたに俺の何が分かんだよ!急に仕事が入って断ることもできない。受けたからには絶対やらないといけないこと、どれだけ新しいを創るのが難しいのか」


 琢磨は睡眠不足で常にイライラして思わず、


「いいですよね、鳴子さんは、毎日同じものを作ればいいんですから」


 鳴子さんは琢磨の胸倉を掴んだ。


「毎日同じものを作っていればいい?本当のバカだな。蛇胴ってのはな、大蛇の面に対する色を作り、どれだけリアルに作れるか毎日、新しいことをしてんだよ、工夫をしてんだよ。逆に言うが神楽面も同じだろ、姫の面が鬼の面があって、神の面があって、どちらかというとお前らの方が楽だろ、分かってんだからよ!」

「同じなわけがないだろうが!俺も毎日どれだけの神楽面をつくてると思ってんだよ!命がけで新しいものを開拓してんだよ!」

「俺もだよ!はぁ、睡眠不足で判断能力がつくった神楽面はどうせゴミだろ」

「何だと!」


 琢磨は鳴子さんの腕を払い、殴りかかった。琢磨の右拳が鳴子さんの左頬に当たる。鳴子さんは倒れる。そして、ゆっくりと立ち上がり、左頬を抑えながら、


「君は職人失格だよ」

「なに言ってんだよ、意味わかんねえよ」

「自分の体調管理も出来ず、仕事を理由に弟子を放置、おまけに人に簡単に暴力を振る人間。お前はドラマやアニメとか悪役だな。主人公になれない、つまり、ゴミだよ」


 琢磨は力なく倒れる。今まで優しかった鳴子さんに言われたのがきつかった。大人の信用を無くしたことがとてつもなく怖かった。

 琢磨は、「黙れ、黙れ」と小さい声で言うしか出来なかった。

 それから、鳴子さんが琢磨に近づいて、


「やり直しってのは人生一回までなら出来るってことを知らないのかゴミ」


 そう言って、鳴子さんは、琢磨の左頬を殴った。


「お返しだよ」


 鳴子さんはそう言って帰っていた。

 琢磨はそのまま深い眠りに落ちるのだった。


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