泣き虫強がり弱気と勇気
葛城明菜×米原花代
「はわぁ~~可愛いぃ~」
鏡さんが以前話していた雑貨屋さん、少し遠かったけれど来て正解でした。私の好きなキャラクターグッズが色とりどり、所狭しと陳列されています。
学校にも着けて行きたくなりますが、規律を守る私、米原花代はきちんと校外で楽しむのです。
早速ずっと欲しかったヘアピンを、これが最後の一つの様ですが逃しません。これの為にこのヘアピンよりも高い電車賃を払って来たんです、これを買わずに帰れません。
「「あ」」
手がぶつかりそうになり咄嗟に引く。
その人は私よりも背も胸も……背が大きく、見るからに私よりも大人な人でした。
長い黒髪は綺麗に切り揃えられていて、まさに漆黒、濡羽色と形容するに相応しい髪でした。切れ長の目には小さめの瞳が鋭く輝いていました。
綺麗、綺麗なのですが、少し怖いです。
こんな人がこんなファンシーでふわふわなキャラクターグッズを買うのでしょうか。いやいや、人を見かけで判断してはいけませんし、人の好みをとやかく言うのは正しくありません。
清く正しい私、米原花代は涙を飲んで譲るのです。
「あ……すいません、どうぞ」
先に言われてしまいました。
「いえいえ! そちらこそどうぞ!」
「……どうぞ」
瞳がさらに鋭く輝きを増しました、睨まれています。
これは脅し、脅しなのでしょうか、正直怖いです。ですが脅しには屈しません、私は断固として譲ります。
「私は他のものを探しますので! どうぞあなたが貰ってください! きっと似合いますよ!」
「いえ、良いんです……どうせ私には似合いません、あなたみたいに可愛い人が着けた方がこの子も喜ぶと思います……」
「そんなことありません! きっと可愛くなりますよ! ギ!」
ギャップがあってという言葉は飲み込みました、これを言っては失礼です。
その人は少し黙ってしまいました、それでもじっと私を睨んでいるのが怖いです。
「分かりました、買ってきます、後でお話がありますので待っていてください」
私は、殺されるのでしょうか。
「お待たせしました」
「は、はいぃ!」
その人は綺麗にラッピングされた袋を持って戻ってきました。
誰かにプレゼントするものを探していたということなのでしょう、やはり譲って正解でした。嬉しそうな笑顔が今までとは正反対の印象を与えてくれます。
これをプレゼントしてもらえる誰かさんはとっても幸せ者でしょう。
「誰かにプレゼントされるんですか? 素敵ですね!」
「はい、どうぞ」
「はい?」
「どうぞ、受け取ってください」
「いやいやいやいや! そういう訳にはいきません! これはあなたが貰うべきものなんです!」
「良いんです、元々友達にあげる物を探しに来ただけですから」
「だったらなおさら受け取れません!」
「ですから……その……友達に、私と友達になってくれませんか?」
「そんな……そんなの……断れないじゃないですかぁ……」
その後、二人で別にお揃いのストラップを買ってお茶をすることにしました。
やっぱり、来て良かったです、心から、そう思います。
「でえぇー!? 明菜さん私と同い年だったんですかぁー!?」




