友達の友達
真田光×藤井律子
藤井は、大きく手を振って呼びかける。
元々長身な彼女が大声で手を振るので遠くからでも場所がよくわかる。
「あーっ! 光さーん、こっちですよー!」
「大声出さなくても分かるって」
中学の頃からの友人である風間と、風間が高校で知り合った藤井、そして博衛と私、四人で遊ぶ機会も多くなった。今日はなんとなく、博衛を置いて早めに待ち合わせ場所に着いてみることにした。
「光さん今日は早いですねー、博衛さんはどうしたんですか?」
「置いてきた」
「えーっ!? 良いんですか?」
たまにはこういうのも良いだろう、なんて言って笑い飛ばした。心配そうにオロオロする藤井の様子は、いつ見ても飽きない。風間はイライラすると言っていたが、妙な可愛らしさがある。
トロくて鈍臭くて、すぐ落ち込んで、声が低くて背が高い。風間の嫌いな要素が詰まった彼女だが、何故か学校でもいつも一緒にいるそうだ。
「しかし、藤井はいつも早く来るんだな」
「満さんに、遅れるならもっと早く出るようにしろと言われまして……」
例えそう言われたとしても二時間も早く来るのはどうなのだろうか。
「それに、こんな風に満さんを待っているのも、結構幸せなんです」
「今日はどんな服で来てくれるのかなとか、会った時にどんな言葉をかけてくれるかとか、満さんのことを考えて、待っているこの時間が、好きなんです」
「これって……変ですか?」
藤井は眉尻を下げながら笑った。
「……いや、変じゃないさ」
それは、私にも覚えがあること。あえて早く出てきたのは、もう一度「待つ」と言う気持ちを味わいたいから。
アイツは今日、どんな服で来るだろうか。
アイツは今日、会った時にどんな言葉をかけてくれるだろうか。
アイツは今日、私とどんな思い出を作ってくれるだろうか。
この幸せな時間を、もう少しだけ、もう少しだけ。




