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Splendor~宝石の煌めき

『宝石の煌めき~Splendor』





作者:マーク・アンドレ


発売: Space Cowboys/2014


目的:ルネッサンス期の資産家となり名声を得よう。


手順:1.宝石を得てそれを元手に、土地や施設の購入、職人を雇用する(以下発展カード)。


    2.購入した発展カードの特典の組み合わせによってお近づきになれる貴族が出てくるよ。


    3.それによって名声を獲得出来るよ。





 「自分の手番が来たら、4通りある選択肢から1つ選べばよい ってことですよね?」


説明書に目を通した静は、翌日準備室Ⅰで待ち構えている土井先生に確認した。


「そう、4択。”威信・名声”という名の得点を競うゲームだね。」


「説明書だけ読んでいるとコレでどう進むのかイメージが沸かないんですけど…。」


土井先生は明るく笑って


「そこがボードゲームの弱点だよね。手順を読むだけじゃゲームの面白さや戦略の機微が掴みにくい…複雑なゲームになればなるほどその弊害は大きいね。」


と、カードを並べ始める。





 「わっ宝石キレーイ!…けっこう重いですね。」


灯が宝石チップを手に取りはしゃぐ。


灯もこのゲームは初めてのようだ。


「ポーカーチップの応用かな? プラスチックより高級感あるね。」


猛もちょっと触れてみる。


 ちなみに本日は用事があるからとかで、仄は帰宅済みだ。





「じゃあ夢川君からどうぞ!」


突然土井先生から振られて静は慌てる。


「へっ? 俺からですか?」


「”最も若いプレイヤーから”って説明書に書いてあったでしょ? 昔のボードゲームは”一番ヒゲの長いプレイヤーから”だったんだけどねぇ。」


「何ですかヒゲって…。」


何かの比喩か?


「ドイツ基準だったしね。ドイツ人はヒゲを蓄えているのがステータスだったんじゃない?」


比喩じゃなかったのか。


要するに年長者から始めるのが主流だったとのこと。





 手順は大きく分けて


 Ⓐ宝石チップを取るか


 Ⓑ発展カードを入手するか


の2つで、そこから更に


 Ⓐ-1.5種類ある宝石の中から3種を1つずつ取るか


 Ⓐ-2.5種類ある宝石の中から同種2個取るか


 Ⓑ-1.発展カードをひとまず確保しておくか


 Ⓑ-2.宝石を代金にあてて発展カードを購入するか


の2択ずつになっている。





 「…やってみると案外難しくないんですね。」


「でしょう?」


静の感想に土井先生が相槌を打つ。





 「”発展カードの確保”って手番を挟むと、他のプレイヤーより後手に回っちゃいますよね。」


猛が口を挟む。


そこは静も感じていたことだ。


「宝石とは別の”金”を得るための行為だね。金はその宝石の代わりにもなる、オールマイティなアイテムだからね。あとは…”他貴族から特典得るために条件上取っておきたいカードだけど、今は購入出来ない”という場合かな。損はない行動だけどどのタイミングで使うか、注視しないかは皆次第だよ。」


金は便利そうだけど、普通に宝石貰って施設や職人を手に入れた方が早そうだと踏んだ静は、その時購入出来る発展カードを買っていく作戦を実行することにした。





 「ぐぅ…っ。サファイアが1個足りない…!」


「あまり適当に発展カード買っていると、本当に欲しいカードが買えなくなるからねぇ。」


静が悶えている姿に、土井先生がポンと軽く肩を叩いて慰める。





 手持ちの発展カードが増えてくると、得られる宝石も増え、また更に多くの発展カードを買えてどんどん潤っていく…。


「何かどんどんお金持ちになって気持ちいいですね、このゲーム。」


「こういうゲームを『拡大再生産』と呼んでいて、中級者以上のプレイヤーにはとても人気があるんだよ。『宝石の煌めき』は軽めな作りだけど、複雑なゲームになると資源を増やすことで出来る選択肢が大幅に増えて、自分なりの得点の増やし方が何通りも楽しめるようになるんだ。」


「へぇぇ…。」





 双六とはだいぶ遊び方が違う。こういうゲームもあるんだな と静は改めて思った。





 施設が増えて、それによって宝石も集まっていくのは楽しいのだが


「これが”経験差”ってヤツですか…。」


土井先生は多くの資源を回し発展カードを得て、貴族との交遊も見事果たしていた。


「そうだね。差がつきだすともうその差を埋めるのが難しかったでしょ?」


その流れを遮ろうにも、静の資産力ではどうにもならないのだ。


同じようにプレイしていると思ったのに、何故こんなに差が出るのだろう?


「プレイを重ねるとどんどん上手く出来るようになるのも、拡大再生産の醍醐味だよ。」


夢川君ならいくらでも強くなれるから、と言われれば静も悪い気はしない。





 「サイコロを使わないゲームも面白いなぁ。」


投資をして元手を増やすというFXのような感覚にすっかりハマった静だった。





「双六タイプのゲームは日本ではボードゲームの代表格だけど、ドイツゲームの全体から見るとあまり無いかな。」


「え、そうなんですか?」


ボードゲームはサイコロを使う印象が強かった静は驚いて声を上げる。


「サイコロは運に偏るから子供向けゲームに多いかな。出目が運に影響しないサイコロの使い方をしたゲームもあるけれど。」


「え…意味が良く分からないんですけど?」





 土井先生はニコニコしたまま、課題のチェックのため資料準備室Ⅱへと戻っていった。


「フフ、まだ夢川君には早いって事じゃない?」


「そういうことでしょうけれど…道垣井先輩、もう少しオブラートに包んでくれません?」


ハッキリと物言う灯に悪気が無いことは分かっているが、静でも少々傷つく。


「まぁ夢川君もお気に入りのボードゲームが出来たわけだし、繰り返し遊べば上手くなるって話だし、良かったんじゃない? 今度芸北さんを交えてやってみようよ。」


「はい!」





 また一つ、新しい楽しみを開拓出来た静だった。

イメージが掴みやすいよう紹介ページへのリンクを用意しました。

ページ中間付近に動画もあります。


宝石の煌めき

https://boardgamegeek.com/boardgame/148228/splendor

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