同好会の概要を聞く
「僕は坊坂猛。同好会の会長ってことになっているので何かあったら気軽に言ってね。」
メガネイケメン―猛はそう前置きして時計回りにメンバーの紹介を始めた。
道垣井灯
2年。
ボードゲーム歴2カ月未満で、同じクラスの芸北先輩に誘われたとのこと。
<静チェック>:ショートカット。大きな眼。モデル体型。
芸北仄
2年。
ボードゲーム歴2年で、TVで取り上げられたボードゲームカフェが気になり言ってみたところ、偶然坊坂先輩と出くわし、そこから同好会を立ち上げることになったらしい。
<静チェック>:ロングヘア。背が低い。胸が大きめ。
坊坂猛
2年。
ボードゲーム歴5年で、ネットゲーム関連を調べていてこのジャンルに行き着き、興味を持ったとのこと。
<静チェック>:クセ毛。メガネ。長身。イケメン。
土井継夫
ボードゲーム歴25年で地理担当教師。
坊坂先輩が準備室Ⅰを使いたい旨を、社会科の先生方に相談したところ、”ボードゲーム”を知っていた土井先生が顧問ということでOKになったそうだ。
棚を埋め尽くすボードゲームは先生の私物とのこと。
<静チェック>:オールバック。メガネ。丸顔。フツメン。小太り。
「え、25年て何ですか? コレって先生の私物なんです!?」
静が先生の紹介に圧倒されていると、にこにこしながら先生は答えてくれた。
「今メディアに取り上げられているのは『第二次ボードゲームブーム』でね、1990年代に『第一次ボードゲームブーム』があったんだよね。ただこの時期の日本は家庭用ゲーム機が大ヒットしていたので、今回ほど日の目を見ずにブームが去っていったんだよ。ボクはその第一時期にボードゲームを知っただけだね。 それとボードゲームはそまぁまぁいい値段がする。安いものは1000円からあるけれど、1万円以上のゲームもそこそこあるから学生の君たちが色々買うにはちょっと厳しい面があるよね。でもせっかくやるからには色んなゲームをプレイしてほしいから、ボクのゲームを同好会用品として貸与しているんだよ。」
相場が数千円くらいと思っていた静はギョッとする。
「万ですか…。」
「駒にフィギュアなんかが使われているゲームは高額であることが多いね。」
「大切に扱わないとですね…。」
すると土井先生は静に指を突きつける。
「そう! なのでこれから言うルールを守ってほしいんだ。」
①どんなに熱中しても19:00に下校。居室は必ず施錠して帰ること。鍵は準備室Ⅱにあるよ。
②大声は控えること。隣の準備室Ⅱにはボク以外の先生もいるから。
③ゲームの持ち出しは禁止。各自の教室で遊ぶことで他の先生に迷惑がかかる場合もあるから。
④ゲームの多くは勝敗があるけれど恨みっこ無し。ゲームは楽しんだモン勝ちだよ。
⑤飲み物はサイドキャビネットに置くこと。ゲームの殆どは紙製なので水物は離して置くのが原則。
キャップやフタ付きが望ましい。
⑥既に製造されていないゲームもあるので手荒には扱わないこと。
「…うん、まぁこんなもんかな? とりあえず皆で仲良く楽しんでよ。」
静の肩をポンポンと叩きながら土井先生は席を立って扉へ向かって歩き出す。
「じゃ、ボクはテスト作りに戻りまーす。」
「はい。土井先生ありがとうございました。」
猛は居室を出て行く土井先生に礼を返す。
そして静に向き直った。
「次、夢川君ね。自己紹介。」
「えっ? あ、はい。」
思わず立ち上がってしまう。
立ち上がってから恥ずかしくなったが、座り直すのも何なので、このまま自分について軽く話すことにした。
「夢川静…俺だけ1年です。ボードゲームはやったことないけど坊坂先輩に体験会に誘われて、興味あったんで来ました。」
「夢川さんは~、”ボードゲーム”って単語は知ってましたの~?」
のんびりした口調で仄が訊ねた。
「TVでタレントが遊んでいるのは何度か観ましたね。」
「じゃあ大体雰囲気は掴めているんだね。机にボードやカードやコマを展開してプレイするのが主なボードゲーム。もっとも、遊び方が幅広くて、それに伴って使うツールも変わってくるんだけど。」
そう言いながら猛は小さ目の箱を皆の中央に置いた。
「まずは一度プレイしてみようか。これは『冷たい料理の熱い戦い』というゲームだよ。』