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先を歩く男

作者: フジタカ

オレは1年ほど前、数分先の自分自身を見ることができるようになった。

この力に気づいたとき、オレは心底嬉しかった。

漫画にでてくるようなヒーローになったのだと思った。

平凡なサラリーマンのオレの、なんの未来もない人生が、これから劇的に変わるんだと思った。


しばらくして、この力がほとんど意味のないものだということに気がついた。

数分先の自分が見えたところでなんの意味があるだろう。

ギャンブルのほとんどは結果が出るまでに数十分かかる。

漫画みたいなバトルなんて普通の人生で起こりえるはずがない。

オレは落胆した。

がっかりした。

この力は一体なんのためにあるのだと、途方に暮れた。


どうしてもこの力を有効活用したかったオレは必死に考え、ひとつの使い道を思いついた。

スピードくじになら使えるんじゃないか。

試しに近くのくじ売り場へ行った。

売り場に着いたとき、未来のオレが喜んでいた。

くじを買ったら、1000円だけ当たった。

正解だった。スピードくじならぎりぎり間に合うようだ。

オレはグーを出したら負け、パーを出したら勝ちというルールを決めた。

その日から、くじ売り場の前を歩いて自分の姿を確認するのが日課になった。


スピードくじなんて滅多に当たらない。

ほとんどのオレはグーを出していた。

1ヶ月で1万円程度の儲け、たかだか小遣いが少し増える程度だった。

それでも、オレは満足して日課を続けていた。


最近、この力に異変が訪れた。

オレの前を歩くオレの拳が、握られていることに気づいたんだ。

自分の手を確認するが、開いている。

いや、それどころか、よく考えたらオレは負けたときの合図なんて出したことがない。

不気味に思いながらも、オレはその男を追って歩くしかなかった。



今日、その男はオレの後ろを歩いている。

オレの拳は、かたく握られていた。

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