2ミリ
おつかい たのまれて いってきます。
きゃべつ かいに。
あたしの住んでるところは 町のはしっこにある。
家のすぐよこに くるまが一台とおれる道があって それをわたったら もうとなり町。
通ってるがっこうでは 「こう区外きんし」てゆう なぞの おきて があって
それは こどもだけで 町のそとへ出たらあかんこと で。
あたしにとったら すぐよこのことですが
道を ひそかに 結界 とよんで これまで おきてを守ってきました。
でも いま きゃべつ かいに。
どうしても 結界 こえなあかんのです。
あたまが もくもくと おもいだす。
まえ ぼーる追いかけて 結界こえそうになったとき
たまたま 近じょの いぢわるせーじに みられてて いちゃもん つけられたこと。
あたしは いのります。
どうかいま せーじが しゅくだいしてますように。 そうでなければ ドラえもん みてますように。 そうでなければ 。
おもいつくかぎり いのって
家とびだしました。
びゅうびゅう かぜが かみのけ ひっぱる。 結界が 家が 町が わきをとんで すぎる。
どきどき どきどき。 はしってゆく。 みなさん さようなら。 あたし ゆきます。
どきどき が だんだん わくわく に かわる。
あー ゆかい。 なんて たのしいんやろう。
マーク・トウェインが ゆってた。
” アダムはりんごをたべたかったのではない。 禁じられていたからこそたべたのだ。 ”
そのいみ すこしわかって
あたしは アダムを ゆるしながら どんどん どんどん はしる。
八百屋のおじさんとは かお見知り。
いらっしゃい!と いせいよく むかえられる。
きゃべつ ひとつください。
おじさんは にこにこ きゃべつの山から いちばんいいのえらんで わたしてくれた。
そして レジのところで おつかいえらいねとゆって
いちごのあめちゃん くれた。
あたしは えらいひとのような きもちになって
あめちゃん たべながら かえる。
きたときよりは ちょっとゆっくりめに かえる。
せかいが ぜんぶ いちごあじする。
かえったら マムに 身長はかってもらおう。
たぶん あたし 2ミリは のびてるとおもう。




