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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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花が咲くように微笑って

教会の司祭の側でルディは花嫁の到着を緊張しながら待っていた。参列席を見ればオブリーさんが手配してくれたのだろう、カリンの友人のマリーやルイーズの顔もある。立会人の少尉とイェンナは参列者の顔ぶれを見ながら密かに、誰が花嫁を連れて来るのか内心ヤキモキしていた。てっきりオブリーかと思いきや彼はもう参列席に座っている、そのうち外が騒がしくなってきた。花嫁が近づいて来ているのだ、参道の両側には子どもたちが花弁を撒くよう並んでいて祝福の「おめでとう!」という声が近づきそしてベールを被り昨日とは意味の違う白いドレスでカリンが入って来たその隣にいるのは・・・


「で・・・殿下⁉︎」


これには少尉もルディも驚いた。道理でこの辺り一帯の結界が強くなっているわけだ。王太子はカリンをルディに渡す際「おめでとう、幸せにな。」と、囁き参列席に平然と座った。よく見れば隣には妃殿下とその王子までいる。親子三人は平民を装い自然に溶け込んでいるのでまだ、誰にも正体は見破られていなかった。気を取り直しカリンと共に司祭に向き直す。誓いの言葉が述べられ婚姻証にサインをし立会人がそれを認めサインをする。そして普通ならここで指輪を交換するのだがカリンは何も聞いていなかったので、司祭が差し出したその指輪を驚いて見つめていた。忙しい合間に自分のためにルディが作ってくれたのであろうその指輪は今までの指輪を外し新しくカリンの指に収まった。それと共にルディは耳飾りを外しカリンから指輪をはめてもらった。


「では、ここに新たな夫婦が誕生したことを祝福する。新郎は新婦に誓いの口付けを。」


ベールを上げると潤んだ瞳でカリンが見上げている。ルディは微笑んで軽く頬に唇を落とした。


参列者の間を二人が腕を組み教会の外に向かう、宙からは様々な色の花弁が舞い降りてきた。もう彼らの身に起こる奇跡に皆慣れたのかそれともやはり起きた神の祝福に驚いたのか、ただただ花弁の降りしきる中二人を祝福していた。カリンは宙を見上げ花が咲いたように微笑う、それは見るもの誰をも魅了する美しさだった。


教会の外には未婚の女性が集まり花嫁のブーケトスを待つ、彼女らを背にカリンはブーケを思い切り後ろに向けて投げた。呆気なくストンとブーケを受け取ったのはカリンの一番の友人マリーだったが彼女は相手の見当もなく喜びと共に戸惑っていた、それでもルイーズに昨日誰かに見初められたのかもよと冷やかされながら笑顔になった。参列者達は先にガウス家に移動するがまさか王太子夫妻まで行くわけにはならず、今日の主役は残って親子三人にお礼を述べた。


「おめでとう二人共、今日はどうしても私が行きたいとお願いしたのよ。ね、カリンこの子を抱いてあげて。」


「いいのですか?うわぁ、しっかりしてますねお母様の栄養がいいのかしら?初めましてアレクサンデル・フィリックス殿下、カリンでございますよ〜、ふふ可愛らしゅうございますね。」


そっと大事に王太子妃に返す。


「そうなの、どうしても母乳で育てたくて。あの時は「幸い」をありがとう。なかなか会えなくなったから今日はどうしても会ってお礼とお祝いをしたくて、魔法技師長夫妻にはご迷惑をかけたけど。」


「参列いただき驚きましたが嬉しいです。ドレスもありがとうございました。」


「ピッタリで良かったわ。では、私達はここで失礼するわね。」


「はい、アレクサンデル殿下のお健やかな成長をお祈りします。」


「ありがとう.あなた達もお幸せにね。」


「じゃあルディ、私達も帰るから。」


突然の養母の言葉に


「え!祝宴には?」


「技師長が予定外に長い時間留守にはできんのだ、また日を改めて祝おう。」


そう養父が答え、そして5人は移動魔法で帰って行った。二人は振り返りハーヴェイ神像に深く頭を下げると腕を組み教会を後にした。


その二人を紺碧の瞳をした黒髪の子どもと銀髪のふわふわの髪を風になびかせた少女が見送っていたことを二人は知らない。子どもの姿の神二人は顔を見合わせにっこりと笑うと反対方向に駆け出して行った。

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