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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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銀の近侍

翌日、カリンはルディに伴われ王宮に参内した。家を出る時から既に服装は動きやすく少年のような格好をし、髪は後ろで一つの三つ編みにしてある。前夜魔法魔術技師長より宰相から発行された任命書が使い魔により届けられており、先導するルディについて警備兵にも挨拶をし二人で真っ直ぐ王太子の執務室を目指す。途中、何人かの侍女がカリンを目に止め振りかえって見ていたがどこからどう見ても少年の姿のカリンは彼女らにとって美少年として目に付くのだろう。執務室の前で警備兵に挨拶をし、任命書と今日から近侍として自分に付くカリンを紹介する。カリンは笑顔で警備兵に挨拶をし、二人は中へと通される。書類の山に埋れた王太子が恐る恐る顔を上げる。


「あー、話は昨夜宰相と技師長から聞いている。でもな、お前ら本っ当にいいんだな⁉︎ミンナじゃないが、ここは伏魔殿だぞ。ルディ、お前はそこにカリンを放り込んで平気なのか⁈」


「平気じゃありません。ですが殿下、私はこの国の次期国王はアルベリヒ王太子殿下をおいて他にはいないと思います。それはこの国の王位継承権からも間違いないですし、幼い頃から養母に連れられ訪れた離宮で殿下のご努力されているお姿を見聞きしております。今回の件は国家に仇なす行為とも受け取りました故に、こちらの近侍ハプトマンと話し合いの末行動に出ることにしました。」


「・・・はぁ〜、あのちびっ子だったお前がそこまで考えていてくれたとはね。いや、ありがたい。気持ちはわかったが、カリンお前はどうなんだ?」


「私も主と同じ気持ちです。王太子殿下のお話は初めてお会いする前から、主より聞かされておりました。ヴィルヘルミナ様からも王太子殿下をオーランド殿下が支え私利私欲に目の眩んだ者は排除するよう依頼されております。そのために私はこちらに参りました。」


二人揃って自分へのそして国を思う忠誠心があることにアルベリヒは正直に感心した。


「わかった、私もお前らの釣りに付き合おう。ガウス国家魔法魔術技師には私の近衛を頼む。とはいっても、大体魔術関係の方を任せる。実戦ではやはりオブリーには敵わんだろうし、往年の名将がいるからな。カリンはそのままルディの近侍として仕えるがいい。バイラル!二人に近衛と近侍の制服を頼む。後で部屋に届けさせる、それまで部屋で待機だ。」


「かしこまりました。」


執務室を後にする前にざっと身丈をバイラル女史に測られる。


「ハプトマンさん、私は王太子殿下の秘書官ファンテーヌ・フォン・バイラル、実家は子爵です。わからないことがあればいつでもお聞き下さい。では、後ほど。」


優雅な礼に見送られながらルディの執務室に向かう。王太子付きの事務室に入り例の扉の前に立つ、そういえば自分で使ったことがないなと思いながら名を名乗り扉を開けると確かに昨日紹介された自分の部屋だ。中に入り扉を閉めその仕組みをカリンに教えると大層面白がった。

するとすぐにノックと共に事務官が名を名乗り許可を出すと、書類を何通か持ってきた。内容は王太子付き近衛魔法魔術師任命書とカリンを近侍として側に置く許可証だった。礼を言いついでにカリンを紹介する。事務官は名をエメリヒ・ハースと名乗った。


「ガウス国家魔法魔術師殿と働けて光栄です。」


と、焦茶のルディよりも癖のある髪を短く切った青年は人懐こい笑顔で言った。


「近侍がいらっしゃるんじゃ机があった方がいいですね。必要なものを用意してまたお伺いします。」


「ありがとう、お願いします。」


そう言って扉が閉まると何ともガランとした部屋がより際立つ。


「ルディ様、続き部屋がありますよ。今のうちに見てもいいですか?」


「ああ、そうだね。僕もまだゆっくり見てないし。」


続き部屋は小さなキッチンがあった。これでお茶をどこで用意するか困らないとカリンが喜ぶ。おまけにトイレに風呂まで付いてちょっとした家・・・いや、宿だな。あとは衣装箪笥だの来客用とは別の多分泊りの時に仮眠に使うソファだのがあり見物しているうちにバイラル秘書官が二人の制服を届けに来てくれて少し世間話をしたが、なかなか重要な内容だった。どうやら、今までのお妃候補やその座を狙う令嬢やその縁の者が訪ねてくるはずだからと、要注意人物から下っ端までをザックリと書き記した用紙を渡してくれた。殿下はなかなか有能な秘書官をお持ちのようだ。


「協力できることはできる限りいたしますので、ご遠慮なさらずお申し付け下さい。」


彼女は昨夜王太子殿下らと共に話を聞いてカリンの行動に共感したのだそうだ。そして現れた本人を見てこれは何としても守らねばという思いを抱いているらしい。


「ふふ、もうそこらで噂ですよ。あの銀髪の少年はどなたかって。」


「え〜、少年ですかぁ。」


着替えを済ませたカリンが膨れる。しかしやはりどう見ても少年だ。


「事情を知らない方からは多分男性としてみられますね。まあ、そのほうがいいと思いますが。」


そう話している頃すでに部屋の外ではあの銀の近侍は何者かと噂されていたのだった。


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