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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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和やかなお茶会

あまりに遅いので、侍女が迎えに来てしまった。話によると将軍はもうファンテーヌの所にいるらしい。後はルディら二人だけと聞き急いで歩く。


「失礼します、遅れて申し訳ありません。」


「遅いぞ、ルディ迷子にでもなったか?」


もうすっかりファンテーヌ様にべったりな殿下が婚約者の隣からからかう。


「いえ、ちょっと・・・。」


カリンがお茶を二人分用意してくれる。

空いた席に座るとファンテーヌから声がかかった。


「ガウス様、今回はカリンさんの事でまた無理を言ってすみません。でも、とても心強いです。ありがとうございます。」


「あ、いいえ。それより、殿下の婚約者になられたのですからガウス様なんて呼んだらいけませんよ。僕らもなかなか切り替えができませんでしたがファンテーヌ様とお呼びしていますから。」


「はぁ〜、そうなのよね。急な事で色々混乱してしまって。あらいけない、ヴィグリー少尉お越し頂いてありがとうございます。先程噂していましたのよ。」


片頬に手を当ててため息をつきながら以前よりも随分と柔らかい物腰で未来の王太子妃が話す。


「え?私の噂ですか?」


「はい、カリンさ・・カリンがとてもお世話になって、気の利く腕の立つ方だって。将軍も褒めていらしたわ。でもまた昇進を断ったそうで二人が納得いかないと憤慨して、ねぇ将軍。」


「全くです。今度こそ上に上がって来ると思っていたのに。」


あらら、不機嫌だよ将軍。そう言えば確認しなかったけど否定もされなかったからずっと少尉って呼んでたけどあれだけ活躍してまだ昇進断ってるんだ。


「いや、だって昇進したらどこに飛ばされるかわからないだろ?それにお前だって俺がいなくなったら色々と困るだろうし。」


「例えば?」


素っ気なく将軍が問う。


「そりゃ、見境なく剣を振るうのを止める役とか、大将が前線にいきなり出るのを止める役とか。な?俺はお前のストッパーなの。」


「ふふ、初めてお会いした時もいきなり襲われましたからね。」


カリンが思い出して笑う。


「な!あれは、ハプトマンとやらの実力を試しておこうと・・・」


「はいはい、13歳の女の子にそんな理由でいきなり襲いかかっちゃいけません。女の子には優しくしないと、ですよね?殿下。」


「ちょっと耳が痛いな・・・その13歳を戦場に放り込んだのは私だからな。あの時もファンテーヌにどれだけ説教されたか・・・。」


あ、いまファンテーヌの空気が下がった。それに気づかず少尉が問いかける。


「ハヴェルンは女性が強いんですかね?うちの王太子殿下も尻に敷かれてるって・・あ、失礼妹君に不敬な発言でした。」


少尉がちょっと真面目な顔をして反省する。そこへ将軍が続ける。


「ジル殿下にはヴィルヘルミナ様のような方がちょうどいい。なかなか気丈な姫君ですね。王都に奇襲が来ても民を置いて逃げる訳にはいかないと最後まで安全な場所への避難を断られたとか。すっかりウルリヒでは人気の王太子妃殿下です。ファンテーヌ様は侍女をされていて歳も同じで仲が良かったとお聞きしています。まさか、お会いしてすぐ殿下の婚約者になられるとは驚きましたが元気にしているかとても気にされていましたよ。」


「まあ、ミンナ様が・・・。いまの私を知ればますます気にされるでしょうね。」


「ああ、うちの妻も心配していましたよ。今度面会をお願いしたいそうです。随分仲が良かったんですね。彼女はなかなか気も強いので友人と呼べる存在があることに驚きました。」


「ええ。友人だなんておこがましいのですが、親しくしていただいていました。カリン?あなたもここにいる間に仲良しができるといいわね。今いる侍女達は少し年上が多いかもしれないけれど、宿舎に帰ってから女同士で話すのもとても楽しいものよ。」


「はい、ありがとうございます。」


「あ、将軍あれ渡したましたか?」


「いや、お前が来てからにしようと思ってこれからだ。ファンテーヌ様、あちらのソファをお借りしてもよろしいですか?」


「ええ、どうぞ。」


「よし、カリンちゃんおいで〜。お土産の時間だよ。」


少尉に手を引かれてカリンは将軍が何やら広げているソファに連れて行かれる。この隙だ!と、僕はそっと口の前で指一本立てファンテーヌ様にあの魔法石を見せる。


「これを指輪に加工するよう頼まれたのですがファンテーヌ様デザインをしていただけませんか?」


なるだけ小さな声で話す。ファンテーヌも心得てだか、カリンに?と聞いてくる。イヤイヤそれなら悩まない。


「実は、少尉からの頼みで将軍に渡したいそうなんです。女性の眼から見て渡されて嬉しいようなデザインてどんなのでしょう?」


「あら、まぁ。そうなのね、責任重大だわ。」


そしてソファの周りではしゃぐ三人の中の将軍を見つめる。


「ガウス魔法魔術師、後でデザイン画を執務室にお届けします。」


「ありがとうございます。」


カリンに呼ばれて三人のそばに行く。そこにはたくさんのお土産が広げられている。色とりどりのお菓子に普段着に使える洋服まである。ファンテーヌも寄ってきてワイワイと品々を見る。


「ウルリヒではこのようなデザインが流行りですか?」


目ざとくファンテーヌが洋服や小物を見て問いかける。それに答えて少尉が、


「イヤイヤ、この人これで結構少女趣味なんすよ。砦で会ったカリンちゃんは男の子か⁉︎って格好だったんで飾り付けたくてあれこれ買ってきちゃったんです。」


確かにすごい量の洋服に小物だ。なんでも功労者だからこれでもまだ足りないと将軍は思っているらしい。


「あら、じゃあお着替えをして将軍にお見せしなくてはね。」


にっこりと微笑んでいるがその笑みには有無を言わさぬ迫力がある。そこから男性陣は放り出されてカリンの着せ替えタイムが始まった。


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