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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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宅地開発

オブリーの婚礼から少し経ち、ガウス家の近所が何故か賑やかになってきた。その理由を王太子の執務室で聞くことになる。


「開発ですか?あの辺りを⁉︎」


「そうだ。オブリー夫妻が大層気に入ってな、議案書を大分前に実は持ってきていてな。で、その議案が通った。あの辺りはガウス魔法魔術技師長がほとんど買い取っていたが国が買い上げて過去の流行病で亡くなった者達の慰霊の公園やら別荘やらとにかく宅地として開発する。おお、そうだヨハンナ・ベルの運営する孤児院の規模が手狭になってきたのでそれも国費で建てる事になった。ちなみにお前のお隣さんはオブリー夫妻だ。」


「本気だったんですね、あの人達・・・」


せっかく静かに暮らせる環境だったのに、最近工事があちこちでされているとカリンから聞いてはいたが国をあげての宅地開発まで発展するとは・・・。


「でな?カリン一人家に置いておくのは心配じゃないか?屈強な男どもが毎日しばらく家の周辺にいるんだぞ。」


それは実は心配していた。しかし、行き先がないのだ家を守ってもらうしかない。


「あのな、ファンテーヌの侍女としてしばらく臨時で勤めないか?あれも、もしそれが叶えば有難いといっている。」


「いやでも、バイラル子爵令嬢には十分な侍女がいらっしゃるのでは?」


先日のオブリー伯の婚礼で求婚し見事彼女を射止めた殿下は相手が子爵家ということもあり、警備の手厚い王宮内に既に住まわせ王太子妃としての教養なども身につけるようにしている。国中が沸いたプリンセスストーリーだが、中にはまだよからぬことを考える者もいるのだ。


「お前の部屋もカリンの部屋もそれぞれ用意した。二人でしばらく王宮に詰めてくれないか?どうせお前は今忙しくてせいぜい寝に帰るくらいだろう?それもできない日もあると聞いている。俺だったらかわいい侍女にたった一人で留守番をさせるのは偲びないなぁ。」


いやそれ、あなたのせいですからっ!

急に決まった婚約で王太子宮に対する結界の強化や二人が身につける魔具など、今までのモノから一新しなければいけない事が多く、そちらの方担当のルディは確かに最近家に帰れないこともしばしばあって気になってはいた。が、ここでまたカリンを巻き込むのはちょっと・・・。


「魔除けの意味もあるんだよ・・・。急に決まって彼女も気丈に見えるが環境の変化に戸惑っていたりしてな。一応信頼の置ける者を周りに集めてはいるが気軽な話し相手になるようなものがまだいないし、カリンならお前以外の魔法の影響は受けないしまあそのなんだ、少しでも寛げるようにしてやりたいんだ。」


そんな事言われると断れない・・・脱力しながらルディはとりあえずカリンの意向を確認してから返事をすると言い残し執務室を後にした。ちらりと見ると出口近くに主をなくした机がまだ置かれていた。


自分の執務室に入ろうとするとハース事務官から先にオブリーの所に行くよう言われる。なんだろう?と思いつつ彼の部屋を訪ねると夫妻揃って待っていた、アナスタシア様に会うのは婚礼以来だ。


「お呼びたてしてすみません。殿下から話は聞かれましたか?」


「あ〜、はい。最近近所に色々工事が入ってるとカリンから聞いていましたがまさかこんな大掛かりな事業になっているとは・・・」


「ごめんなさいねぇ、どうしてもあそこに住みたくなっちゃって。で、カリンはどうするの?」


「それは・・・本人次第ですね。僕からはなんとも言えません。」


「あのね?ルディ。カリンはずっとうちの離れで育ったでしょう?離れを出てからはすぐ近侍になったりウルリヒに行ったりでとにかく普通じゃない育ち方をしてるわよね?普通の子ならまず学校に通って勉強をしてそれから奉公に出たり上の学校に上がったりするでしょう、あの子親はいないけど幸い離れであなた達に囲まれて育ったおかげで情緒面は愛情が足りてると思うんだけど心配なのが友達がいない事なのよ。」


「恥ずかしながらアナスタシアに指摘されて私も気づいたんですが、あの子は同年代の子どもと触れ合う機会がほぼなかったんですよね。なので、この機会にファンテーヌ嬢の侍女を務めれば同年代の少女と触れ合う機会もあるかと思い、私から殿下に進言させて頂きました。」


友達・・・そういえばいないな。たまにパン屋の娘の話とか聞くけど、友達とまで呼べるんだろうか?あれ、そもそもあの子の昼間の生活を知らないや僕。


「ね、ちょっと大丈夫?」


「あ、いえ僕もあまりにもいつも自然に側にいたので考えが及びませんでした。帰ってその辺のこと話し合ってみます。」


今日ばかりは早目に帰らなきゃ・・・。

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