成立したもう一組のカップル
「ルディ様、視えましたかアレ。」
「ん?ああ、さっき君が秘書官を驚いたように見ていたね。僕は気づかなかったけど。」
招待客らは既に披露宴会場に入っていた。いつもの様に目立たぬよう壁の花になりながら軽食をつまんでいたカリンの問いかけに答える。
「まぁ、私はお似合いというか言われてみれば秘書官しかいないなぁと納得したのですが。」
「え?何視たの君。」
「秘書官の頭の上に王冠が視えました。」
二人が顔を合わせる。
「まさか・・・」
「でも、あの方ほど相応しい方はいないと思いませんか?」
いやだって、今日この場には彼女がリストアップしたご令嬢や姫君がさり気なく混じってるのに・・・。
「あなた達はいつも壁の花なのね。」
「アナスタシア様、オブリーさん!」
「今日は本当におめでとうございます。」
初々しい二人に祝福を述べる。
「ありがとう。今日は私達にも最良の日だけれど、もう一組幸せなカップルができるはずよ。」
アナスタシア様が振り返った先にはちょうど、王太子殿下がバイラル秘書官と共に庭に出る姿が見えた。
「はぁ、秘書官も今日のために頑張ってきたのに。」
「ふふ、それはそれでいい効果を出しているから大丈夫。ねぇ、カリンあなたのドレスや小物はファンテーヌの見立てでしょう?他のご婦人やご令嬢に褒められたりお店を聞かれたりしなかった?」
「あ、はい。たくさんの方に尋ねられました。それで、秘書官に全てお任せしたと答えたら皆さん凄く納得されてましたけど。」
「でしょう?彼女の有能さは秘書官だけにはとどまらないのよ。昔、あなたに手鏡とハンカチを贈ったわよね覚えてる?」
「はい。今でも大切にしています。」
「あのデザインね、実はファンテーヌなの。」
えええ〜っ‼︎道理でドレスや小物選びもセンスいいわけだ。
「でも、それと花嫁候補がどう繋がるのですか?」
「まず、他国の姫君は3国からいらっしゃってたけど別室でファンテーヌがこれまで手がけた品々を見て輸出ルートが確定したわ。で、国内のご令嬢方には最新の小物や飾りを見せてプレゼントしたの。もう既に身につけているはずよ。何と言っても神の祝福を受けた彼女の作り出した物だもの、他の皆さんに自慢なさるでしょうしこれでファンテーヌの実家が持つ雑貨屋が繁盛するはずよ。元々花嫁候補にはその事を伏せてお招きしているから殿下が他の令嬢を選んでも何とも思わないどころか、あの祝福を受けた女性って事でかえって皆さん二人を祝福するんじゃないかしら?」
「でも、殿下と秘書官はそんな間柄だったんですか?」
「ははっ、まさか!殿下は先日やっとご自分の気持ちにお気付きになったようで、慌てて離宮へ亡き母君の形見の指輪を取りに行かれたんですよ。私がお供したのですが、その時に色々と秘書官について探りを入れられまして。」
「後はファンテーヌの気持ち次第ね。全く、あの鈍い殿下もようやく気付いてくれて私もホッとしたわ〜。」
そうか、そうだったのか。あの殿下が・・・そしてそれから少しして会場の客人達は、もう一組の神に祝福されたカップルの成立を知ることとなる。