神々の降臨と眷属の長
(おお・・・力が満ちてくる。人の子よ!大丈夫か⁉︎)
既にルディが駆け寄っていた、
「カリン!目を開けて、すぐ良くなるから!カリン?カリンッ‼︎」
(すまない、我のせいだ。娘は必ず返す)
「彼女は僕の責任だ、貴方は戦に参戦してください!」
”ほう〜、よく言ったな魔法師よ。褒美に娘を回復させるとするか。”
「ハーヴェイ様⁉︎」
”なに、気にするなお前達の頑張りに対する褒美だ。それ、受け取れ”
空から現れたハーヴェイ神がふっと掌に息を吹きかけるとフワリとしたものがカリンを包んだ、それと同時に身動ぎをする。安堵したルディは主神に礼を尽くす、と主神は何故か挙動不審にしている。そう言えば今日は主巫女がいない。
「う、すみませんルディ様・・・成功しましたでしょうか?」
頭を押さえながらカリンが意識を取り戻した。
「ああ、成功だ。長は呪縛から解き放たれたよ。で、え〜と何故だかわかんないんだけど・・・」
”やあカリン、気分はどうだい?”
「ハーヴェイ様⁉︎」
”我が眷属の長を永き束縛から解き放ってくれたからお礼にね。今回はちょっと派手に懲らしめてやらなきゃいけないから・・・で、もうそろそろ来るか・・な?”
”な?”・・・って、何が?二人揃って首を傾げているとツェツィーリアから声がかかる。
「ルディ!こっちはもう限界だよ!!禊はもう終わったのかい!?カリンは無事なんだろうねっ?」
「あ、はい!皆さん結界を解いて大丈夫です。禊は無事終わりました、カリンも無事です!!」
「なら、あたしたちも参戦するから。ルディ、カリンから目を離さないで、頼んだよ!!」
霧雨のように降り注いでいた地下から引いてきた泉の水が段々と収まっていく。そして視界がはっきりとして見えてきたのはヤルナ将軍とシェイナ王子の攻防戦だった。穢れを落とし打ち直された分だけ将軍の剣の方が軽く動いている。その二人を見つめるカリンとルディの目にはシェイナ王子の剣がそして王子自身がいかに穢れに侵されているかがはっきりと見て取れた。
「・・・少尉がいない・・・」
てっきり将軍と一緒に王子に挑んでいると思った少尉の姿がない。カリンが不安げにルディを見上げる、ルディも周囲の動きを見ているようだった。そして、カリンはルディを通り越し空にその姿を見つけた。
「ルディ様、少尉は空中戦です・・・」
「え?ああ、本当だ。良かった無事で・・・で、君まさかあそこに行くつもりかい?」
「・・・今回は残念ですが無理です、翼竜がいませんもの。それにさすがのエンケル将軍も空中戦までは仕込んで下さいませんでした、邪魔になるより慣れた地上戦の方が多少のお役には立てると思います。」
そう言いながら背中にある弓と矢をもう構えている。
「とりあえず、ヴァンヴィヴリア軍の翼竜を私が落とします。乗っている敵軍の兵はお任せしてよろしいですか?」
「わかった。」
時には翼竜の足を、そして手綱を取る兵士をなるだけ致命傷にならないよう気を付けながら狙いを定め次々と撃ち落していく。そして矢が尽きると同時に背中の矢筒と弓をかなぐり捨て、落とした翼竜達へと今度は懐から銀の短刀を取り出しながら駆け出して行った。