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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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開戦前夜(3)

カリンの居場所はすぐわかる。対の魔具で繋がっているから。だけど、余程のことがなければその力は頼らないお互いが大概どんな時にどんな場所にいるかわかるから。だから今も迷わず来た。そして彼女はちゃんとそこにいた。泣きながらスゥレイに愚痴を零している。


ーうーわー、入りにくい・・・。ー


(・・・ん、わかったわ。もう喋らなくていいわよ)


「うぐ・・・い、いまので何がわかったのです?」


(そうねぇ、あなたが生まれた時から今までのこと。でも、ご両親については話してはいけないみたいね。)


ルディが見つけた時、カリンは愚痴を零しながらスゥレイと頭をくっつけていた。


「そうです。私も両親が望むなら知ろうとは思いません。でも、そんなところから視えたんですかー。で、どう思います?私の就職先。」


(ん〜、そうね。あなたなら何でもできるわ、軍に入れば出世するし、官吏になってもやっていける。だけど、いっそ歌唄いになって旅に出るのもいいかもね。)


「旅に・・・そ、それいいですね!あちこち見て回って・・「は、女の子1人じゃ危ないんだよ」⁉︎」


「な・・・⁉︎ぬ、盗み聞きなんて、はしたないですよ!私なら大丈夫です、腕もありますもの!ルディ様は新しい侍女さんの心配でもなさっててくださいっ」


そう言い切ると思いっきり顔を背けた。侍女にしては有り余る行為だと思うが・・・。やれやれと、どうなだめようか思案しながら近づいて行く。


「ごめんカリン、君に黙って話を進めて悪かったよ。ただ君の前の指輪がさ、進化してるっていったろう?」


「?、はい。」


「あのままだと君は僕の下から離れられなくなってたんだ。えーと、侍女を極めるってゆうか、使い魔の様な位置付けが近いかなぁ。」


「ダメですか?」


「だって君まだ成年の儀も来てないのに一生僕に侍女として仕えるなんてさ!僕は君が15になれば身の振り方を選ばせたかったんだ。だけど、なんでだか指輪が勝手に2人を強く結びつけようとしててさ。だから、僕が臣下に下って君には・・・多分地位のある人の子だろうからそれなりの地位をあげて僕は一生君を護るつもりだったんだ。だって君、見てないと危なっかしいし。」


「それは、いつも私の及ばぬところでルディ様に危険が迫っていたりして・・・アルベリヒ殿下や今回もエンケル将軍に担ぎ出されているからです!わ、私は本当は専属侍女らしくお家を守ったり、掃除や草引きや畑仕事やそんな普通の侍女で居たいんです。」


言ってから何となく「あ、しまった」と言った顔をした。


「ふーん。じゃあ、この戦が終わったら取り敢えず宮仕えはなしにしよう。で、僕の提案も取り消すよ。身分がなくても平凡でも自分が選んだ人と結ばれるのが一番だろうからね。」


「・・・私が将来お嫁に行っても行かなくても、ルディ様のお側に置いていただけるのですか?」


恐る恐る上目遣いにおずおずとカリンが遠慮がちに尋ねる。その表情を見て癖毛の金の瞳の魔法師が最上の笑顔で微笑んだ。


「君以上に僕にとって有能な侍女はいないからね。こちらから願ったり叶ったりさ。」


それを聞き弾けるように笑ながらカリンがルディに飛びつく。


「約束ですよ!他所にやるなんて二度と言わないで下さいね‼︎」


飛びついたカリンを造作もなく抱えクルクルと回る。


「はいはい、畏まりましたお姫さ・・・ま?」


「?」


(あら、私と交信したせいかしら?)


「え?な、なんですか?」


ルディが目を見開いてカリンの額を見ている。


(それが神の祝福の印よ)


話には聞いていた、確かオブリーが言っていたはずだ、赤ん坊の頃ははっきりと出ていたと。そういえばさっき、スゥレイと額を合わせていた。白い肌の額にピンク色に近い色で華の模様が浮き出ている。


ーはぁ、ホントにスゴイ子を侍女にしちゃったんだ・・・ー


「あれ?ルディ様の耳飾りにも・・・」


魔法石の一つに同じ模様が浮き出ていた。

そしてカリンの指輪はポォ・・っと光を放っている。


(どうやら、そろそろ開戦ね。カリン、向こうにはルシアンナという伯爵令嬢が闇の魔術を使っているわあなたはその人に気をつけて。)


「ルシアンナ・・・」


「よし、僕も魔法陣の用意をしてくる。カリンは・・・うん、スゥレイの側で休んでて。ここは良い気が満ちている。」


「はい。ルディ様もなるべくお休みください。」


ありがとうと片手を挙げて癖毛の魔法師は去って行った。

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