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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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開戦前夜⑵

会議室での話はとにかく翼竜の長を呼び出す事、そして戦場はビェリーク砦だけになるよう最小限にと結論が出た。そのためには早く魔法陣を完成させなければならず、ルディは養父とウルリヒの魔法師達とその構造について話し合っていた。カリンは炊事班の手伝いを果たし、身の回りの武具の手入れをしている。そこへ。ツェツィーリアが近づいてきた。


「魔法陣はできそうでしょうか?」


「ああ、あれだけの頭脳が集まってるんだ大丈夫だろう。それよりさ、ちょっと聞きたいんだけどあんたルディに魔法師の最高礼をされたって?」


「あ、はい。でもお断りしました、私がルディ様に仕えて頂くなんて滅相もないです。あれ?でもおばさまよくご存じですね?」


「んー、あの馬鹿息子がさ手紙を送って来たから。それも、私ら夫婦と公爵夫妻、王太子殿下に国王陛下・・・ふ〜、何考えてんだが。」


手紙が送られた先々のあまりの身分の高さに一瞬目を丸くして固まったカリンは恐る恐る尋ねた。


「あ・・・の?手紙の内容をお聞きしてもよろしいですか?」


「まずね、王太子殿下の近衛魔法技師を辞したいと、それから自分の爵位の権利をカリンに譲りそれ相応の屋敷の用意を頼みたい。更に公爵夫人にはカリンに相応しい相手を見つけて欲しいと。で、自分はカリンに仕える魔法技師になると書いてたね。あのさ〜、あんた達何があったらそうなるわけ?」


「・・・やっぱり、怒ってらっしゃるんだわ。それで私を遠くへと・・・」


涙目でブツブツと呟くカリンを宥めすかし小鬼族から魔法石を手に入れる際のカリンの行動と指輪が進化しているという話を聞いてツェツィーリアも頭を抱えた。ルディを唯一の主とするカリンの突飛な行動は確かに自分でも叱るだろう。特に魔力持ちは髪の長さで力を保っている場合がある。カリンは魔力持ちではないがもし、その未知の力に影響したら・・・。そして、指輪。進化していたというが、これがルディがカリンの下に仕える理由だろう。二人は近づきすぎているとルディなりに判断したのだ、あの馬鹿息子が忌々しい。


「お、おばさま。私はお嫁になど行きません。いつかいらっしゃるルディ様の奥様とお子様をお側でお世話するのが私の幸せです。しゃ、爵位なんかもいりません。私は捨て子です、身の丈にあった生活ができれば・・・う、うわぁ〜ん」


とうとう泣き出したカリンを抱き締め大丈夫、大丈夫と繰り返すしかない。そこへ、異変を感じたルディが来る。


「泣かせたのはあたしじゃないよ、お前の浅はかな考えだよ。何でカリンに一言も無しに話を進めるんだい馬鹿っ!」


「いや、でも僕なりにカリンの幸せを考えて・・・」


「あ、そ。じゃあ、この子が見知らぬ誰かと結婚の話を進められて決まってもいいんだね?せっかく自由を手に入れたのにまた鳥籠の鳥みたいな生活になってもいいんだね!」


「も、もういいです・・・。私がお邪魔ならハヴェルンに帰ったらルディ様の所は出て行きます。この話はこれで終わりにしてください。大事な時に皆さん集中力が削がれてしまっては大変です・・・あの、私用事を思い出したので失礼します。」


フラリと立ち上がり頼りなげに歩いて行く。


「なんで、こんな時に話したんです‼︎」


「お前さ、ちょっとカリンに頼りすぎてないかい?」


「・・・はい。それは、反省してます。」


「お前が考えた精一杯のことは、普通の娘にとっちゃ凄い申し出だよ?でも、カリンの幸せがそこにあるのかい?」


「だけど!あの子は僕といる限り危険な目に合うでしょう⁉︎あの時はあれしか思いつかなくて・・・」


「はぁ〜あ、大陸一番の魔力持ちとか言われる魔法師も侍女一人に形無しだねぇ。ところで、陣は出来たのかい?」


「出来ました。地下水を引っ張ってきて禊をする準備をいましています。」


「じゃ、時間ある?」


「え?多少なら。」


「はい、じゃカリンの機嫌を直しておいで。」


「う、わかりました・・・」

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