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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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開戦前夜⑴

「・・・ハヴェルン国王が。」


ガウス夫妻から第二次援軍が来た詳細を聞いたイニャス王子らウルリヒ側はハヴェルン国王の配慮に感謝した。


「で、翼竜の長を呼び出すったってあっちでがんじがらめになってるんだろう?」


ツェッィーリアの疑問にヤルナ将軍が答える。


「ええ、しかしこの時期の戦には毎年ヴァンヴィヴリアの王子が操り攻めてきます。」


「ふーん、気高い長がえらく簡単に言う事聞くわけないと思うけど。」


「そこなんです。余程の魔法師がいるとしか思えません。ですが、今まで戦場でその様な魔法師には遭遇していない。つまり、その者は安全な場所に置かれて他の翼竜以上に長に対し呪術をかけているのだと思われます。」


「そんな強力な呪術のかかった翼竜をこの広場に呼び出せるのか?ましてや背中には敵国王子が乗っているのだぞ。」


他の首脳陣から疑問が上がる。


「はい、ですからあの娘とガウス魔法魔術技師長のご子息にご協力頂きたいのです。」


「いや〜、そいつは養父親が言うのもなんだが確かに魔力だけは強いが安定感がまだ今一つ不安だな。私達とて神の眷属たる翼竜を呼び出すなど自信がないですぞ。」


「その魔力にあの娘の力が上手く乗れば出来ると思う・・・と、魔法師達とも話し合いを重ねました。何よりこの案は翼竜のスゥレイが持ち掛けてきましたので。」


「養父さん、カリンは今回ウルリヒに来て小鬼族と少なくとも刀鍛冶の妖精、そしてこちら側に保護されている翼竜を味方に付けちゃったんだよ。で、そのスゥレイという翼竜の話だと向こうにはかなりの魔力持ちがいてその人物が翼竜たちに足枷をしている。つまり、闇の魔術師・・・確かではないけれど魔女ブロワトの子孫だと。」


「はぁ、またブロワトか・・・どうしてもハプトマンと対抗する気だね。」


「うん、だからカリンの力が必要なんだけど、どう考えても翼竜を呼び出す魔法陣が完成しない。」


「お前、カリンを危険に晒すつもりか?」


「ガウス技師長、これは砦の責任者を任されている私からの頼みです。あのハプトマン嬢の力はこの目、この身体で感じ取りましたし何より翼竜の長の頼みでもあるらしく本人の了承は得ています。」


「その身で感じたとは・・・また何かやらかしましたか・・・」


チラリとルディの顔を見ながら技師長が言う。


「その件につきましては、私ヤン・ヴィグリー少尉から報告させていただきます。実はうちの将軍、最近様子がおかしかったんです。具合が悪いような、何か見えないものと闘っているような。そこへ、ハプトマン嬢とガウス魔法師がいらして将軍とその剣に穢れがあると、更にウルリヒで敵の呪術を解く時に毒気にやられてハプトマン嬢自身も穢れがついてました。そこにどうやって来たのか、小鬼族と刀鍛冶の妖精が現れてハプトマン嬢が刀鍛冶の妖精と小鬼族から受け取っていた銀の短刀で地下の普段はもう淀んで使えない泉を浄化し尚且つ将軍及びハプトマン嬢も禊をし、将軍の剣は新たに打ち直されております。正直、我々砦の兵士は皆異変に気付きながらも何もできませんでした。将軍と剣を救ってくれたのはハプトマン嬢の勇気です。あ、それ以前にハプトマン嬢の穢れはガウス魔法師の魔具のお陰で大分抑えられていたようですから、お二人を責めるのはどうか御勘弁下さい。我らビェリーク砦の兵士は皆感謝しております。」


スラスラと端的にあったことを説明すると少尉は頭を下げた。


「じゃあ、その長を呼び出す魔法陣を完成させなきゃね。それからルディ、後で話があるから。」


ビクッとしながらも了承した。絶対あの手紙の事だ、もしかしてもう話は進んでるのかもしれない・・・それはそれで何故か望んでいたのに落ち着かないルディだった。そんな息子をよそに、ツェッィーリアが問いかける。


「ねぇ、長が上手く呼び出せたら向こうの王子もついて来ちゃうんじゃないの?」


「ああ、それは多分。どのみち闘う相手ですから一石二鳥ですよ。ただ、長にはかなりの呪術をかけられていると思います。その影響が心配ですが・・・。」


「どういう事?」


次はエンケル将軍が首都フロレンツへの奇襲時に翼竜の足枷になっていた呪術を解いた後のカリンの様子を話した。ガウス夫妻は深刻な表情で何やら考え込んでいる。


「ルディ、お前そんな危険な目に合わせるとわかっていてもカリンの力を使うのか?」


「あの子がウルリヒで異族から授けられた剣でしか呪術は解けません。」


「で、その呪術を解く際に多少なりとも吸い込んで倒れるんでしょう?」


「砦の地下に聖なる泉があり、穢れに対する対策は既に考えています。」


「それで、あの子なんて言ってんの?ま、あんたの頼みなら無条件で引き受けるんだろうけどさ。」


「ルディ様の為だけではありません。」


いつの間にか会議室の入り口にカリンが立っていた。


「ウルリヒに来る前にお告げの夢を見ました。私はウルリヒの為にルディ様とここに来たのです。覚悟は・・・出来てます。」


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