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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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帰宅は仕事を済ませてから。

家の中に突然現れたルディの姿にカリンは驚いていた。掃除をしていたらしく手には箒を持っていた。


「ルディ様、何かありましたか?お顔の色がすぐれませんけど・・・ん?この気配・・・アルべリヒ殿下がまた何かやらかしましたね。」


今度はルディが驚いた、なんで王太子の気配がわかるんだ?あ・・・指輪か。カリンの指に嵌っているであろうそれを思い出しホッとする。しかし、つい移動魔法で帰ってきてしまったがどうしようか、と思案していると掃除道具を片付けテキパキとお茶の用意をし軽食までつけて出してくれた、そういやもうすぐお昼だななどと考えながらも、もう立ち尽くすしかないルディをカリンは椅子を引いて食卓に座らせると翠の瞳でまっすぐ見つめ、今ここにいる理由を話すよう要求した。


「は?私がどちらかの殿下の妃候補ですか、なんでそうなるんでしょう。」


「ん~、ウルリヒでの事が伝わってるんだろうなぁ。カリンの活躍は凄かったしね、それに魔力持ちじゃないから後継者問題もクリアできる。」


「・・・私、嫌ですよ。あんな王太子様のお嫁さんになるのなんて、オーランド殿下にしてもお菓子を下さるいいお兄様的ポジションですし、第一庶民で出自もわからない私なんか相手にもならないでしょう?何かの聞き間違いゃないですか。」


「いや、間違いじゃないよカリン。君を政治に巻き込もうとしている奴らがいる、聞き違いなら第一ここまで帰ってこないよ。」


「・・・そういえば、なんで帰ってきたんですか?」


「え?えーとまず、殿下にというかあの辺全体に攻撃魔法をかけそうになったんだ。でもそれはマズいと気がついたら・・・ここにいた。」


「なんでここに移動したんでしょう?」


「そりゃ、君が・・・し、心配だったからだよ。知らない間に連れてかれたりしてるかもしれないとか、最近はほとんど会話をする暇もなかったとか、公爵家と違って僕がいない間は一人だから・・・」


「ふふ、私嬉しいです。そんなに気にかけていただいてるなんて。」


「笑い事じゃないよ!」


「ごめんなさい、でも自分を気にかけてくださる人がいるって嬉しいんですよ。」


そう言ってカリンが微笑んだ直後、家のドアが壊れるかというくらいの勢いで開くと同時に3人の男性が転がり込んできた。


「ルディ様!大丈夫ですか!?」


「ちょ、痛い兄上!足踏んでますよっ!ああ、カリン。大丈夫?ショック受けただろう可哀想に。」


「お前、兄を差し置いて媚びる気か。カリンもしかして話聞いちゃった・・・?」


「いらっしゃいませ皆様。オブリー伯爵お久しぶりでございます、ルディ様はショックを受けておりますが大丈夫です。オーランド殿下、私も大丈夫です。アルベリヒ王太子殿下、お話はお聞かせいただきました。このようなところでございますが、お茶でも召し上がられますか?」


カリンの微笑みに最初の二人は安堵し最後の一人は青ざめていた。


「お、怒ってる?その笑顔は怒ってるよな、すまんカリン!まさかお前を使ってくるとは思わなかったんだ。」


「ええ、仕方ございませんわ。私がウルリヒで暴れたり婚礼の儀に司祭様の代わりに出たりしなければこんなことにはなりませんでしたでしょう。全て私が悪いのでございます。」


「いやっ!それは違う!!本当に申し訳ないと思っているだから許してくれないか?」


「え?兄上、カリン怒ってますか?」


「お前も早く謝った方がいいぞ、オーランド。怒りが頂点に達する前にな、しかも側にはルディがいる。何が起きるかわからんぞ。」


「嫌ですわ、王太子殿下。こんな侍女風情に頭をお下げにならないでくださいまし。あ、そうそう伯爵、先ほどアナスタシア様から手紙が届いたのですが。」


食堂にある棚の上から封書を3通持ってくる。今度はオブリーが顔色を変える。手紙を受け取りその顔色さえ一瞬なくなったがすぐにカリンに向き直り


「カリン、今後のことは私に任せておくように。悪いようにはしないから、ではアルベリヒ殿下オーランド殿下、私火急の用件ができました故お先に失礼いたします。」


「おい待て、お前がいないと俺たちが帰れんじゃないか!」


「あのぅ、おふた方にもウルリヒのヴィルヘルミナ王太子妃からそれぞれお手紙が届いていますが。」


それを聞いた途端アルベリヒが慌てて


「あ!いかん、あの案件を片付けねば。な、オーランド。手紙は王宮で読もうオブリー俺たちも帰るっ帰るから連れてって!!」


まだ状況が理解できていないオーランドを引っ張ってオブリーに縋るようにしがみつく。


「そうだ、ルディ。今日は疲れただろう?また明日話をしよう。お疲れ様!」


そう言い残し3人は移動魔法でどうやら王宮に帰ったようだ。


「カリン?」


「はい。」


「手紙って・・・」


「ああ、はい。ちゃんとルディ様の分もありますよ。ちょうどルディ様がお帰りになる少し前に届いたのです。これです、どうぞ。」


僕の分は食堂の棚の引き出しから封書を取り出す。


「・・・・・」


「大丈夫ですよ、私の手紙に書かれていましたがルディ様には決して諌めるようなことは書いていないそうです。それよりも迷惑をかけて申し訳ないって。読んだときはなんのことかわかりませんでしたがこのことについてだったのですね。」


これは本当にうかうかしているとウルリヒからヴィルヘルミナ率いる軍勢が攻めてくるかもしれない・・・。



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