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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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銀の天使

砦の広場で第二次援軍隊と共に荷を降ろしていた魔法技師長にツェッィーリアが話しかける。


「援軍は助かるってさ。で、今から会議室であたし達が来た詳細なんかと作戦も話したいみたいだけど。」


「なんだ?」


「うん、ちょこっとカリン見てきていい?」


悪戯っ子の様に肩をすくめ上目遣いで聞いてくる愛妻に反論はなかった。カリンの様子見も目的の一つだ。


「行ってもいいが、早く合流してくれよ。」


「はいはーい。」


初めて来る砦だがカリンの気配を探ればどこに行けばいいかすぐ解る。そこは、巨大な温室のような建物で何頭かの翼竜の姿が見える。入り口から微かに聴こえる歌声は息子と同じく可愛いカリンの声だった。が、翼竜があまりに大きく小さなカリンの姿が見えない。と、思っていると歌声が止んだ。


「おばさま?」


翼竜達の間をすり抜け見慣れた顔がこちらに来る。


「やっぱり!さっきから翼竜の様子もおかしいし、外から気配を感じたんですけどまさか本当に⁈お久しぶりです、どうなさったんですか?」


ツェッィーリアがあまりに微動だにせず自分を凝視するのでカリンは小首を傾げながら近づく。目の前まで来たところでガシッと、両腕を掴まれた。


「あ、あの?痛いです・・・けど」


「カーテローゼ、その髪はどういう事なの⁉︎誰にやられたの!今日まで何があったのっ」


「え、あ〜えっとですね。小鬼族と取引に使ったんです。」


「あの子なにしてたの?」


「は?あ!ルディ様ですか?止める間も無く私がザックリと・・・ひゃっ!お、おばさま、私この後炊事班の仕事が・・・」


「お黙りっ!主なら男ならっ!女の命の髪を守り切らないなんて、あ〜っ!ただじゃおかないわあの馬鹿息子‼︎」


片手を半ば引き摺られるように広場に連れて行かれる。そこにはまだ魔法技師長がいた、憐れみの顔をして・・・


「カリン‼︎その髪一体何があったっ!」


第二次ハヴェルン兵も集まってきて皆口々に酷い、誰にやられたんだと憤るものや、あの天使のような姿がと涙を浮かべる者もいる。


「待てよ、こりゃあルディが絡んでるな⁈」


魔法技師長の言葉に一瞬皆黙ったが次の瞬間から「酷ぇ」「何やってたんすかあの人」「守ってやらなきゃいけない存在なのに」と、今度はルディに対する怒りを口にし始めた。


「え⁈や、ちよっと待って、違う‼︎違います、これは私の意思で・・・」


しかし悲しいことにカリンの主張など誰も聞いていなかった。


「可哀想にカリン。この仇は必ず打つからね」


「「そーだそーだあの若造をやっちまえ」」


「だから、違ーーーうっ‼︎もうっ!聞いて、おばさまもおじさまも。これにはちゃんと理由があるんですっ!お叱りも受けてますっ!兵士の皆さんもいいですか、私のご主人様に指一本触れたら只じゃおきませんよッッ‼︎」


なかなか入ってこない二人の様子を見に来たエンケル将軍が頼もしげにカリンを見て笑っている。将軍直々に短期とはいえ仕込んだカリンの腕は兵士の間でも噂になっている。一緒に来たルディは頭を抱えているし、面白そうだからと見に来たヴィグリー少尉までニヤついてルディを覗き込んでる。ワイワイと賑わいながら結局皆カリンの姿を見てホッとしていた、久々に嗅ぐハヴェルンの香りをカリンも喜び満面の笑顔だ。


「わーかった、わかった。お仕置きはやめとくよ。無事がわかったんだ、それでいいさ。」


「ん。そうだな、戦の後にゆっくり聞こう。では、行くかエンケル将軍案内をお願いする」


「ええぇっ⁈息子無視ですかっ」


そのやり取りに少尉がまず挨拶をし笑いを堪えながらハヴェルン最強の夫婦を会議室まで案内した。


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