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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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ウルリヒ王宮

ビェリーク砦から飛ばされた使い魔がウルリヒ王宮に開戦間近を伝えてきた。王宮内は緊迫した空気が流れていた。連日のように国王、宰相始め王太子らが首都への攻撃に備え話し合いを繰り返している。そんな中だった、数日前にハヴェルンから予想外の後方支援部隊が来たのだ。


「えぇっ⁉︎お兄様が来たですって!」


ヴィルヘルミナ王太子妃はあまりの予想外の出来事に驚いていた。宰相と王太子に案内されヴィルヘルミナを訪ねてきたのは懐かしい兄ハヴェルン王太子アルベリヒ・・・と、その後ろに控えているのは確か近々婚礼の儀を挙げるため忙しいはずの親友であるシュヴァリエ公爵令嬢アナスタシアとその婚約者エイナル・フォン・オブリー伯爵だった。


「やあ!愛しい妹よ、元気だったか?体の調子はどうだ、ウルリヒは雪に閉ざされて暇をしているだろうから訪ねてきたよ。」


スコーン!と、小気味良い音をさせてヴィルヘルミナの持っていた扇が兄の頭に当たる。


「痛ああ・・・ちょ、オブリーお前は防御魔法とかで俺を守らんのか⁉︎」


「恐れながら、ヴィルヘルミナ王太子妃殿下のお気持ちを考えればここは邪魔をしてはならないと思いまして。」


そのやり取りを横目にアナスタシアが華麗に型通りの挨拶をしヴィルヘルミナに駆け寄り二人はひしと抱き合った。


「どうしてあなた達はこの危険な状況にわざわざ飛び込んでくるの⁉︎」


涙に濡れた瞳で親友そして兄とオブリーを見ると最後に夫であるジルベールに向け段々と目つきが険しくなる。それを察したアナスタシアがヴィルヘルミナに言い聞かせる様に話す。


「ごめんなさいね。大変な時に、だけど大変だからどうしても私達お手伝いに来たかったの。最初は来る予定ではなかったのよ、だけど向こうの情報を探るうちにやはり手助けに行くべきだと思って・・・。」


「うむ、すまぬヴィルヘルミナ。先日このフロレンツまで奇襲が来たと聞きつけ、お前の身も心配は勿論、友好国の一大事だ駆け付けぬ訳にはいかなんだ。それに、あのガウス夫妻がどうしても行かねばならぬと言い出してな。」


「ガウス魔法魔術技師が?」


「今回はなかなか手強いらしい。彼等は先に一個小隊率いて砦に向かった。アナスタシアはお前の側に置く。オブリーは更に外から城を護る。で、私はまぁ国の代表だ残りの小隊を束ねて戦に備える。」


「そんな・・・砦には冬将軍はおろか精鋭部隊に今回はウルリヒ・ハヴェルン合同部隊がおりますのよ。何よりルディとカリンが・・・嫌だわ私、今まで戦なんて縁がなかったからそんな危険な場所にあの二人を送り出したの?ねぇ!アナスタシア、あの子たちを引き返させて・・・」


「興奮するとお腹のお子様に障りますわ。ねぇ、ミンナ様落ち着いて。いつもあの二人は大丈夫だったでしょう?そりゃ、今回はガウス夫妻が出て行ったけどそれって最強じゃない?聞けば冬将軍も剣も具合がいいらしいし、何よりカリンがね小鬼族と妖精を味方につけてるらしいのよ。魔力もない人間の娘がよ?この戦は勝たなきゃいけないの。終わらさなきゃ、ヴァンヴィヴリアの為にも。だから私達来たの。」


「でも・・・あなた、婚礼の儀があるのに」


それを聞いてアナスタシアは、はぁ〜と深いため息をついた。


「私ね、あなたの参列が無理なのは残念だけどあの二人にはにはどうしても出席して欲しいの。あなたの時みたいな奇跡を望んでるわけじゃないけど、あの子たち私の家族同然だもの。それにね、アレ!あそこに控えている私の未来の旦那様が毎日毎日落ち着かないのよ!そりゃそうよね、あの二人を育てたようなものですもの。だから、早く終わらせてミンナ様も安心して出産に備えられるようにしてサッサと帰るために来たのよ!」


親友の殺気立った態度にそれよりも位の高いはずのこの国の王太子妃は思わず怯んだ。


「あ・・・う、はい。わかりました・・・」


「そ?じゃあ少し興奮したから休みましょうか。では、両殿下に伯爵あとはお願いしますね。」


にっこりと笑ってアナスタシアはヴィルヘルミナを寝室へと連れて行く。



「いや・・・相変わらず活発なご令嬢だな。」


「許嫁が失礼を申し上げまして誠にすみません。」


「お前はホントーに、アレでいいのか⁉︎というか、久々の再会で扇を投げつけるとは。おい、ジルベールお前絶対尻に敷かれてるだろう!甘やかすのも大概にしとけよっ!」


いつの間にやら来たオーランドがそれを見て腹を抱えて笑っている。それに気づきまたムッとしながらも久々の兄弟の再会を喜び、作戦会議のため王太子妃の部屋を後にした。


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