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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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ヴァンヴィヴリアの王子

砂漠の砂が吹き荒れるヴァンヴィヴリアの王都にそびえ立つ王宮の一番高い塔に彼は居た。浅黒い肌に黒い髪閉じた瞳の色は碧色に彩られている。長椅子に横になり金色の髪を結い上げた幼さの残る顔の女性の膝に頭を預けている。


「白い光が広がった・・・?」


「ああ、奴等の結界を破って突入していたところにな。遥か彼方のヴェリーク砦の上空に見覚えのある翼竜に乗った娘が出てきてな、そのしばらく後に暴発したように光が砦から広がったんだ。で、なんだこれはと様子を見ていたがこちらの翼竜が言うことを聞かなくなって・・・で、撤退したと。」


「娘・・・例のハプトマンでしょうか?」


「多分な、流石戦女神の名を持つだけある。あれは、欲しいな。」


「・・・殿下、くれぐれも危ないことは。」


薄っすらと瞳を開けて女性の白い頬を触る。王子と同じくこの国特有の碧い瞳で見つめ返すその女性はヴァンヴィヴリアの伯爵令嬢ルシアンナであった。膝枕をしているのは言わずと知れた現ヴァンヴィヴリア最強の王子シェイナ。産まれた地位は高くない、第7王子として産まれ母親は侍女上がりの側室。例の剣に選ばれるまでは父親からも存在はほぼ無視されていた。現在ではその父親以上の実権を握っている。更に魔力持ちの伯爵令嬢ルシアンナを手に入れてから力は更に増大していった。


「安心しろ、ルシアンナ。あの娘を手に入れてもお前は何も変わらない。お前は俺の正妃になってこの国を二人で統治するんだ、この砂漠から民を救い国土を広げ新しく一からヴァンヴィヴリアを創り治す。協力してくれるな?」


「はい・・・殿下、勿論ですわ。」



一方、ヴェリーク砦では


「えっ!俺前線に出ていいんすかっ⁉︎」


「ああ、これが最後の戦いになる。なんとしてもそうしなければいけない。となると、やはり私一人で前線に出向くだけでは多少なりとも不安がある・・・いけるか?」


「はっ!ヤン・ヴィグリー少尉、ヤルナ将軍の命にしたがいます。」


敬礼をしてヤルナ将軍より少し上から、にっこり笑って見せる。その顔を将軍は何処か切なげに見やると表情を消し、少尉と共に砦に消えて行った。


「カリン、僕らの仕事だけど。」


「あ、はい!」


ウルリヒは今回の一戦で片を付けるつもりだということ、敵軍の王子からどうにかして剣を奪わなければいけない事。そして、ルディとカリンの2人が主になり長をこの場に呼び出すこと。それらを伝えられた。


「あの、あちらの剣はどうやって手に入れるのですか?」


「うん、それは将軍がなんとかするって。なんか穢れが落ちてから調子いいみたい。」


「そうですか・・・でも長をここに呼び出すなんてできますか?」


「うん、今から魔法陣を用意しなくちゃね。で、カリンは陣ができたら歌を歌って欲しいんだ。」


「歌?」


(故郷へ帰る者の歌よ。大丈夫、始まればあなたちゃんと歌えるから。)


スゥレイが説明する。これまでもぶっつけ本番でやってきた、今更何を言われても驚かないが将軍の表情だけが気にかかる。


「あの・・・少尉とお話をしていてあの方が今まで戦に出るのを止められていたと聞きました。その、将軍のお心は大丈夫でしょうか?」


「僕も聞いた。相当無茶したらしいよ少尉。助かったのが奇跡だって。だけど今回はどうしても彼の力が必要なんだって。ウルリヒの命運がかかっているからね。将軍も僕らも甘いこと言ってられないんだよ・・・。」


そういうルディの瞳が憂いを帯びているのがわかった。砦に残っていても危険なのだ。その危険にカリンを晒す事になるのが気に病むのだろう。


「私、ルディ様のお手伝いを精一杯させていただきます!必ずヴァンヴィヴリアを倒しましょう。」


その宣言に微かに笑って頭を撫でられた。


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