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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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スゥレイ

身支度を整えてカリンがパタパタとスゥレイの側に駆け寄って来た。


「スゥレイ!ルディ様と私がスゥレイの乗り手に決まったの、よろしくね‼︎」


(・・・あなた、穢れが落ちてるわね中で何をしてたの?)


「あら、なんでそんなことまでわかるの?」


スゥレイが呆れたようにため息をつく。


(あなたに付いてた穢れは私のせいでもあったからよ。あなたね、いくらハプトマン様の愛し子とかいっても魔力も神力もない普通の人間でしょう?あの指輪が随分護ってくれてたようだけどあんまりあの魔法師に心配かけちゃ駄目よ。)


「でも、私の穢れは将軍様の穢れを察知して痛みがあったんじゃないの?」


(は〜、呑気ねぇ。あなた、ウルリヒ王都で倒れたでしょう?私の鎖の呪いを吸って。アレが完全に取れて無かったのよ。多分あの魔法師はここの泉の話を聞いていたんでしょうね。それまでなるだけ指輪で抑えていたのよ。だから、あの人あなたにあまり近付かなかったでしょう?)


「・・・」


(対の魔具だから片方が穢れていれば反発してしまうのよ。だから、近付かなかったの。)


「え〜、知ってたら早く教えてくれたらよかったのに。」


(あら?だって私は球体の中に小さく押し込められてたもの。ふふ、理由がわかって安心した?)


ぽふっと、スゥレイの首に顔を埋めて頷いた。


「・・・教えてくれてありがと・・・」


スゥレイがくすりと笑う。


(ねぇ、お嬢さん。私の乗り手だけど、ヤルナ将軍にしてくれないかしら?)


「え!でも将軍が・・・」


(ええ、乗り馴れてる竜がいいのでしょうけど私はあの人がいいわ。特に禊をしたばかりの身体に打ち直した剣。私たち翼竜にとってもこの戦、負けるわけにはいかないのよ。)


「わかりました、そう伝えます。」


(で、あなたとあの魔法師はここにいてもらわなきゃいけないわ。それも伝えて。)


「ん〜、私達何かしなきゃいけないことがありますか?」


(ええ、長をここに呼び込んで欲しいの。)


「えっ・・・と、じゃあ将軍とルディ様を呼んできますね。私に話すよりその方が早いでしょ?」


(賢明だわ。)


カリンは砦の中にまた走って行った。交代にヤルナ将軍とルディが出てきてスゥレイと長い間話し込んでいる。


他の軍上層部や兵士達はじきに来る戦に備え忙しなくしている。グリンデとヴェランドも姿を消してしまった。


「つまんない?」


「ひゃっ!」


突然後ろから顔を覗き込まれて思わず声が出た。


「ははっ、ごめんごめん。いや〜なんでだか俺もカリンちゃんと一緒で今は蚊帳の外なんだよね〜。」


「でも、ヴィグリー少尉は戦場に行くんでしょう?」


「ん〜、どうかなぁ。また留守番じゃないかな。」


「また?って事はこれまでにもそういうことが?」


「最初はさぁ、将軍が砦を護って俺らが先陣斬って行ってたわけよ。したらある時大失敗して怪我しちゃってねぇ・・・そっから俺、ほぼ留守番。まぁ、将軍の代わりの指揮官は必要っちゃ必要なんだけどさ。寂しいなぁ〜」


カリンは何となくそれ以上深く聞けなかった。同じ事が自分達にも起きるかもしれない。自分が周囲を顧みず敵陣に入り怪我を負ったら・・・あの人は哀しむだろう。そんな思いを今までもさせてきたのかもしれない・・・優しさに甘えてばかりではいけないのだ。


「あれ?大丈夫カリンちゃん。なんか俺の話でブルーにさせちゃった?」


「あ、いいえ!勉強になりました。私も反省することがたくさんあるなぁと思って。」


「あ〜、なんかわかるわ。カリンちゃん将軍の小さい時に似てるもの、ガウス魔法師は相当心配してると思うよ。」


「へ⁈お二人はそんなに長いお付き合いなんですか?」


「うん。幼馴染の腐れ縁?ほっとくと心配だから俺くっ付いて見張ってるの。」


「ヘェ〜、幼馴染ですかぁ。」


「あれ、いないの?そんな友達。」


思えば5歳でシュヴァリエ公爵家に引き取られてから一番歳が近いのは公爵子息のウィレムと主であるルディだけだ。


「あの、ずっとルディ様にお仕えしてきたので友達とかいないんですけど、でもハヴェルンの王宮にルディ様の近侍として勤めてからは沢山の方に出会いました。友達・・・とは違うけれど仲間?」


プッとヴィグリーが吹き出す。それを見て頬を膨らますカリンがまた可愛くてますます笑う。


「だね、仲間も友達さ」


「本当ですか?」


うんうんと頷きながらまだ笑っているとルディが声をかけてきた。


「少尉、カリン。話があるんだけど。」


二人は顔を見合わせそれぞれの主の元に走って行った。



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