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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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慣れっこの魔法使い

岸辺に泳ぎ着いた時、そこになかったはずの衝立が用意されていた。その向こうから声がする。


「すみません、うちの侍女がお世話をおかけしました。その子は寝かせて将軍は着替えをどうぞ済ませて下さい。」


「は⁉︎侍女・・・お前は戦場に侍女を連れてきたのか⁉︎」


手早く着替えを済ませながら将軍は自分でもわからないがなぜかイライラしながら問い詰める。着替え終わり衝立を退かすとそこには困ったような顔をした癖毛の魔法師が立っていた。


「失礼します、髪の毛を乾かさせて下さい。お風邪を召されてはいけませんので。」


ルディが杖を振り将軍の髪を乾かす、そして一礼をし脇をすり抜けると寝かされているカリンにも杖を振り身体全体を乾かす。その傍らに屈み込み呼吸を確認する。小さいが規則正しい呼吸が確認できた。ホッと一息つき将軍に向き直って苦笑する。


「この子は確かに本来は僕の侍女なんですが今回はエンケル将軍直々に名指しされて隊に加わっています。まぁ、なぜかこの手のゴタゴタに巻き込まれ・・・いや、自ら飛び込んでは無茶苦茶やるんですが戦力にはなりますよ。」


「ハヴェルンのエンケル将軍が認めているのか。」


「はぁ・・・あんまり嬉しくないですけどね。ヴェランドさん!剣の方はどうですか?」


脇目も振らず剣を打ち直しているヴェランドに声をかける。


「予想以上に仕上がりそうだ。ヤルナとやら、その小娘に後で礼を言っておけここまで浄化された水のお陰だ。」


「浄化・・・何者なんだこの娘は。」


ルディは泉からカリンの短刀を取り出した。それすらも輝きを増しているかに見える。それを自分の懐に入れるとカリンの脱いだ上着を持つ、ジャラリと微かな音がしてルディは頭を掻きながら溜息をつくとカリンを抱えた。


「将軍、剣は以前にも増して強度が上がって仕上がるでしょう。僕はちょっとこの子を寝かせてきます、かなり体力を消耗していますのでなるだけ早く起こすよう努力はしますが。」


「どういう意味だ?」


「僕らどちらかが力を使いすぎるとお互いの力を交流させないといけないんです。あ〜、例の指輪ありましたよね。あれと僕の耳飾りが対の魔具になりリンクしてるんです。」


そういうと上階へと移動し始めた、代わりにヴィグリー少尉が降りてくる。


「将軍!ご無事ですか⁉︎」


「ああ。・・・そういえばやけに身体が軽いな・・・」


「はぁ〜、さっすがハプトマンの愛し子ですね。」


「全くだ、ただハプトマンの名を持つだけの娘かと思っていたが・・・」


「やだなぁ、将軍は彼女の奇跡を目の前で見てるんでしょう?」


確かに王太子婚礼の儀で遠目からだが姿は見ている。あの時は髪も長かったし、しおらしくみえた・・・今のあの娘はまるで別人だ。確かブロワト家を巡る問題解決にも一役買いハヴェルンとウルリヒ両国王太子を叱り飛ばしヴィルヘルミナ王太子妃からの信頼も厚いとか・・・って、いうのがあの娘⁉︎そりゃー無茶苦茶やったらしいな。将軍は口元に手をやり思わず吹き出した。


「ちょ、大丈夫ですか?」


「大丈夫だ、ただあの魔法師も苦労するなと思ってな。」


「ああ〜、じゃじゃ馬のお世話はそりゃ苦労しますよ、うんうん。」


ジロリと睨まれてもへラリと笑ってかわす、


「で、肝心の剣はどうなんですか?」


「ふむ。あの妖精に任せておけば間違いなかろう。私は上へ行く、何かあれば連絡をくれ。」


「はっ!って俺置き去りっすか⁉︎」


「後で代わりのものを寄こす、それまでだ。」


”無茶苦茶やるんですが、戦力にはなりますよ。”


すでにこの手の行動には慣れている、つまりそれなりの場数は踏んでいるのか。

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