浄化の儀式
渋々とヤルナ将軍は腰の剣を外しルディの前に差し出した。それと同時に身体が僅かに軽く感じるとともに将軍の身体を痛みが襲い始めた。チクチクと針で刺すような痛み、それはカリンが指に感じているのと同じものだった。カリンはルディの腕の中から離れ懐の短刀を取り出すと傍らに置き一礼をして将軍の剣を鞘から抜いた。
「刃こぼれと、血の匂い。魔法石は純度が高いですが濁りがでています。これは、打ち直して新しい魔法石をいれるか、または磨きをかけるか・・・」
そう言うと剣を置き、短刀を抜く。カリンの銀の髪をどう使ったのかは分からないが少なくとも目の前の剣よりも純度の高い魔力を持つものに仕上がっている。
「グリンデ、聞こえる?この場所に来られるかしら?あと、刀鍛冶の妖精さんも。」
短刀に願いを込めて囁く。
「は、はぷとまん。きた、ぐりんできた。」
カリンが振り返ると小さな小鬼がギョロリとした目でカリンを見つめている。
「グリンデ!ありがとう来てくれて。まだ明るいけど大丈夫?」
「はぷ、とまんのま、まほうしがまほうじんをつ、つくってくれ、くれたら。」
「ああ、お安いご用ですよグリンデ殿。ちょっと待ってて・・・」
他の者は呆気に取られて見ていた。小鬼族が陽のあるうちに外に来ている。それも遥か離れたビェリーク砦に。その間、カリンはヴィグリー少尉を呼び何かを確認して頷いていた。
「さて、出来た。この中なら大丈夫かな?」
フッと一瞬消えた後魔法陣の中にグリンデが現れた。
「おぉ!完璧です、さすがハプトマンの魔法師。では、刀鍛冶の妖精を呼びます。」
人間のそれとは違う歪な指を鳴らすとグリンデの側に端正な顔立ちの中性的な妖精が現れた。
「やっぱりおかしくなってたか・・・おい!娘、その剣を此方へ。」
カリンが慌てて剣を差し出す。鞘から抜き出し剣をジッと見つめる。
「魔法師、翼竜はいるか?」
「ええ、外に。」
「こいつの現在の持ち主は?」
「私だ、ビェリーク砦を任されているヤルナ将軍だ。」
カツカツと近づく将軍を妖精が手で制す。
「あ〜わかったから、あんたはそれ以上来ないでくれ。穢れが酷い。まずこの剣は俺が打ち直す。濁った魔法石はグリンデに任せる、で娘!」
「ハプトマン様です」
グリンデが小声で注意する。
「じゃあ、ハプトマン。その持ち主の穢れを落としてくれ、そんな身体じゃ打ち直した剣に触ることも出来ん。」
顔は中性的なのに話すと男らしい妖精は肩までの金髪を後ろで括りながら緑色の瞳で将軍を見据えた。
ーわーなんか残念な美形・・・ー
と、思いながらルディがふと気づく。
「え・・・将軍の穢れをカリンが?」
「なんだ、同性の方がいいだろう。お前やりたいのか?」
一瞬ウルリヒ兵士全員の殺気を感じた。
「同性って・・・将軍て女性⁉︎」