彼の彼女と彼女の彼と
”やあ、カリン。”
片手を上げた人影が光の中にボンヤリ見える。
”また、無茶したね。”
”でも、ハーヴェイ様。指輪がチリチリと痛くてルディ様もまだ診てくださらないし、何か悪い気配がしたので浄化するしかないと思って・・・。”
”あのね、君と魔法師はリンクしてるの。だからそういう時は一人でやっちゃいけないよ。どちらかに負担がかかる。そもそも君はあの魔法師の調整役だよ?それ以上なぜ頑張るのさ?”
”ん〜?ご主人様を守るためです。”
”じゃあさ、ちょっと足下見てごらん。”
”あれ?私がいる・・・なんですかあの凄い光の柱・・・それに、ルディ様必死です。”
”君が一人で指輪を浄化しようとしたから指輪の魔力と君がハプトマンから受けてる神力に妖精や小鬼の力が混じって浄化が上手くいかなかったんだよ。で、より強い魔法師の魔力とハプトマンの神力が暴走してるね。今君は意識が飛んでたんで捕まえたんだけどね。”
カリンはハーヴェイの言葉を聞きながらジッと下界を見つめていた。ルディが必死に意識を呼び戻そうとしているようだ。
”あんなに必死になるなら、あの時診てくれたらよかったのに。”
我ながらいつになく不満を言っている事に気付く。
ーあら?私なんてことを言ってるのかしら、迷惑かけてるのに。ー
”いいんだよ、それで。あの魔法師にはいい薬だ。”
いい薬?よくわからずに問いかけようとするとルディの声が耳に届いた。
”あちゃ〜、頑張ってるね君の魔法使いさんは。必死なのわかるだろう?”
”わかります。でも、ルディ様は誰にでも等しく優しいですし・・・最近、私は避けられてるみたいだし。目の前で誰かが大変な目にあってたら必死になるのは当たり前です・・・私じゃなくても。”
”なんだい、やけに拗ねてるね。”
”拗ねてません!なんだか、必要ないのかなとか不安なだけです・・・”
ハーヴェイが愉快そうに笑う。
”帰らなきゃ。”
”ああ、そう。君の居場所はここじゃない。早く彼を安心させておやり。”
珍しく優しい言葉をかけられた。
”でも、帰り方がわかりません。”
”声が聞こえるんだろう?意識を集中して帰りたいと願うんだ。”
”・・・お暇だされるかな・・・”
”はぁ〜、ホント面倒臭いな君達は。わからない?お互い必要な存在なんだよ。”
”そうですかぁ?じゃ、なんで避けるんです?”
クスクス笑いながらハーヴェイが何か言った
”え?”
”いいから、早く帰んなよ。それから彼に避ける理由を聞けばいい。”
成る程。
” じゃあ、帰ります。ありがとうございました。”
カリンは瞳を閉じて強く念じた。
ー帰りたい、ルディ様の元へ・・・ー
スゥっと吸い込まれる感覚に包まれる。
身体に帰るカリンを見届けやれやれと思う。人間は面倒臭くてだから面白い。
「お世話をお掛けしました、ハーヴェイ様」
現れたのはふわふわの銀の髪に銀の瞳の美女。
「全くだよ、ハプトマン。まあ、彼の慌てっぷりが見れて面白くもあったけど。」
ハプトマン神はただ微笑む。
2人はしばらく下界を覗いていた。