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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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魔法使いの大切なひと

ふ・・・と、目を開くと目の前には長い睫毛に縁取られたおそらく金の瞳を持つであろう人がカリンの額に自分の額をくっつけて寝息を立てていた。本来ならアワアワと慌てる状況だが、ああまたこの人が助けてくれたのだと安心と嬉しさに恥ずかしさも入り混じりその人の目の下の隈を見てしばらくおとなしくしていることにした。


自分が意識を失ってからどれくらい経ったのだろう・・・。この人はこんな顔になるまで疲れている。今回大人しくしているのには理由があった。がっちりと腕に抱きかかえられていて動こうにも動けないのだ。それでもなんとか動く範囲で手を伸ばしその人の顔にかかる黒髪をそっと撫でつける。そして、疲れ果てているであろうこの人のためだけに小声で歌を歌う。癒しの歌を・・・。


同じ時、翼竜達の保護舎にいた兵士が彼等の変化に気付く。全ての翼竜が首を伸ばし天を仰ぎ見る。

「あれ?どうかしたのかニース。」


(静かに・・・あの子が目覚めたようだ)


「あの子・・・カリンさんが⁈」


(は〜、だから静かに!あの魔法師のために歌を歌っている)


「歌?」


その頃、離れ近くの温室の中では植物がやはりどれも空を仰ぎ見る様に茎を伸ばしていた。管理人の老人はそれを見てホッと胸を撫で下ろした。


「・・・ん・・・」


身じろぐルディの腕からすり抜けようとしたが失敗した。やはり、この距離で顔を合わすのは恥ずかしいのでなんとかならないかと考えるが反対にぎゅうっと抱き締められるだけだった。


「おはよう・・・お寝坊さん。」


「!お、おおおはようございます?ル、ルディ様。」


ーいつから起きてたの〜っ///ー


恥ずかしさで真っ赤になりながらなんとか返事をした。彼は薄っすらと金の瞳を開けてカリンを見つめている。


「・・・よか・・た。目が、覚めて。」


ああ、またこんなに心配をかけてしまった。泣きそうな顔になったカリンの顔を自分の胸に抱え込み


「ごめん・・・まだ歌ってて・・・」


そう言うとカリンの頭の上からは先ほどとは違う安心した寝息が聞こえ始めた。


「はい、ご主人様。」


カリンは続けて歌を口ずさんだそしてそのうちにまた彼女も眠ってしまった。翼竜保護舎の兵士からと温室管理人からカリンの目覚めの報告を受けた上層部だが、その無事を確認しようにも部屋の扉がどうやっても開かない。ウルリヒの魔法師らによるとどうやらルディが強固な魔法をかけていて開けるのは並大抵ではないらしい。報告を聞いたヴィルヘルミナがクスクスと笑いながらまるで小さな子どもだと言う。


「余程、大切なのねカリンのことが。でもよかったわ・・・とにかく無事だとわかったもの・・・」


瞳に薄っすらと涙を浮かべ無事の知らせを喜んだ。第三王子イニャスに至っては、前回の経験があるのでルディの執着に動じていない。王太子とユベールも仕方ないといった顔をしてビェリーク砦に向かう指示を各方面に出している。エンケル将軍らハヴェルン兵はそうか、そうだったのかと半ば肩を落とし砦に向かう準備にかかる。今回城に残ることになったハース事務官が改めてポツリと呟いた。


「帰ったら、子鹿会は解散しよう。うん、それが良さそうだ。ははは。」


銀の髪の少女は髪の勇ましい少女は神の祝福を受けている。そして、おそらく大陸一の魔法使いの大切なひとなのだ。




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