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魔法使いと侍女の物語  作者: にしのかなで
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燃え上がる街に

王宮の門番は話を聞いていたのだろうフィフスに乗ったカリンが通れる隙間を空けて通してくれた。後ろから「気をつけて」と声がする。


ーどうしよう、どうしようー


気づくと涙が溢れていた。殿下がフィフスを貸して下さった、厩では兵士が鞍を取り付けるのを手伝ってくれた。そして、そして・・・一番大事なルディが、自分を信用してくれた事に感謝する、いつもなら無茶をすると諌められるのに、カリンのために剣を用意してくれた。


「もうっ、何もかもお見通しだわ。ねえ、フィフス、私はこのまま進んでどうするつもりなのかしら?私が誰か一人でも助けられるの?」


怖い、本当は怖かった。目の前の惨状が、人々の悲鳴が。街中に着くと地元の消火隊が懸命に炎を消そうとしている。すぅっと、息を吸い込みフィフスの上からその場にいる民に叫ぶように言う。


「動ける者は動けない者を助けて城に向かって逃げて!結界の入り口を作っています!」


しかし、喧騒と逃げ惑う人の波に飲まれカリンの声が届かない。ふと、何の確信もなく腰の剣に手をやり鞘から抜くとそれを高く振りかざした。剣は光を放ち周りを一瞬眩しく照らす。その瞬間だけ時間が止まったかに見えた。周りの喧騒は止み、逃げ惑う人々は光の方を見る。


「いま、王宮の敷地内に避難所を作っています。できる限り皆さん助け合ってそちらに避難してください!」


「ありゃ、だれだ?」


「まだ子供だが・・・いや、でもあの馬にあの髪の色・・ハプトマン様?」


あちこちで今度は歓声が湧いた。王太子の馬上にいるのは、髪型こそ違えど婚礼の儀で見たハプトマン嬢だった。それだけで皆、先ほどより落ち着いて周りを見始めた。


「そうだ!俺達が騒いでもなんにもならねぇっ!女子供それに年寄り優先で王宮に逃げ込もう。」


馬上でホッとすると、カリンは空を見る。頭上には翼竜が一頭舞っていた。その背に乗った兵士が弓で火を着けて回っているようだ。カリンは背中にも弓と矢を装備していた。それを頭上目がけて放つ。弓も剣もアルベリヒとエンケルに鍛えれている。一度目は射程を逸れ兵士の頬を掠った。すぐに二度目を構えようとするが今度は反撃にあう。城からは援軍の来る気配がない。その時、以前滞在した時にハーヴェイ神の巫女と会った教会を思い出した。フィフスを走らせ頭上の兵士の気を引く。あそこの屋根に上がれば・・・。幸いにも教会は火の手を免れていた。カリンはフィフスの背に立ち上がり近くの木に飛び移る。そこから器用に周りの屋根を使い協会の屋根に上がる。

目の前には翼竜が迫っていた。哀しそうな瞳で飛んでくる。胴と脚には鎖が繋がれている


「いま、助けるから。痛いけどゴメンね。」


そう呟き矢を構えた狙いは翼竜の脚だ。祈りを込めて矢を放つ。矢は見事に翼竜の脚を掠めた。途端にバランスを崩す。すぐに二矢目を兵士に向けて放つ。今度は右肩に命中した。命を奪うのは嫌だ・・・自分は正規の兵でもないのだ、甘いと言われてもいい。カリンの予測通り兵士は翼竜の背の上で倒れた。そして翼竜もフラフラと地上に舞い降りる。


待ってて、いま助けるから・・・。器用に屋根を飛び移り地上に降りる。兵士は痛みに悶絶している、翼竜は静かな瞳でカリンを見ていた。カリンは懐からグリンデから受け取った短刀を手にゆっくり近づく。


「翼竜さんあなたに痛いことをしてごめんなさい。でも、いま自由にしてあげるから大人しくしてくれる?」


頷く代わりに翼竜は瞬きをした。ホッと息をつきその背に乗る。敵兵が呻きながらカリンを見る。


「殺すなら早くやれ!」


「私はあなたを殺すつもりはありません。ただ、その邪悪な呪いは解かせていただきます。」


短刀を一旦納め腰の剣を抜く。


「ハプトマンの名の下に命じます。この呪いを解き放て!」


カリンの剣は破魔の剣と化し敵兵を貫いた。彼は一滴の血も流さずグッタリとしている。次にもう一度短刀を出す。屈んでよく見れば鎖には細かな呪いがかけられていた。


「グリンデ、力を貸して・・・」


カリンはその短刀で鎖を斬り裂いた。



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